【特集2】地球沸騰化で普及が加速 創意工夫で利用を拡大

2024年1月3日

再生可能エネルギーが温暖化防止の主力とされる中、企業の取り組みへの期待が増している。
各社はハード・ソフトの両面で取り組みを強化し、普及を加速させようとしている。

地球は〝沸騰化〟の時代に入った。国連のグテーレス事務総長は2023年夏の世界規模の異常な猛暑をこう評した。温暖化はもはや人類の将来に影響を与えかねない。政府は解決策として、再生可能エネルギーを主力電源と位置付け、50年のカーボンニュートラル(CN)を目指して再エネの普及をより加速させる。

日本経済を支える民間企業の取り組みはどうか。温暖化対策への企業の対応を見る一般市民の目が厳しくなる中、行政にまさる勢いで再エネの拡大に乗り出している会社が多くある。

飲料メーカー大手のキリンホールディングス。40年にグループ全体の使用電力を100%再エネ電力にすることを目指す同社の選択は、PPA(電力購入契約)による太陽光電力の調達だ。傘下企業の工場へのメガソーラー設置を急ピッチで進めている。

流通大手イオンも、イオンモールでの使用電力「40年100%再エネ」を目標に掲げる。その達成に向けて考えたのが、自己託送方式のオフサイトコーポレートPPA。「イオンモールまちの発電所」として日本の各地に1390カ所の発電所を持ち、全国約50カ所のイオンモールに電力を供給。再エネの「自給率」は23年に10%に達している。

また、イオンはⅤ2H(ビークル・トウ・ホーム)を進化させた「V2AEON MALL」サービスも始めた。家庭で発電した余剰電力をEV(電気自動車)からイオンモールに放電すると、ポイントを提供するというものだ。既に全国で1000基程度のEV充電器を設置している。

排出CO2を算定 再エネ100%で好業績

普及に力を入れているのは大企業ばかりではない。横浜市の印刷業、大川印刷。この会社のキャッチコピーは「環境印刷で刷ろうぜ」。印刷業で年間に使用する電気・ガスと車両燃料で排出されるCO2を算定し、スコープ1(自社での燃料使用や工業プロセスによる直接的な排出)はJ―クレジットの活用でオフセットする。

スコープ2(購入したエネルギーの使用に伴う間接的な排出)はPPAモデルで自家発電20%、残り80%は青森県横浜町の風力発電の電力を購入。これらにより19年に「再エネ100%印刷工場」を実現している。

環境フレンドリーな企業理念は、業績の向上をもたらした。大川印刷の19年度の売上は前年度比で8%アップ。増額分のほとんどがSDGs(持続可能な開発目標)に関心のある顧客だったという。

再エネの運転・管理で既に実績やノウハウがあるエネルギー企業には、普及拡大に以前に増してプレッシャーがかかっている。各社はIoTの活用や他組織とのコラボなど、さまざまな取り組みを加速させている。

東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は、東京センチュリー、京セラコミュニケーションシステムと共に、AIを活用した再エネの発電効率向上を行っている。

AI活用などで効率向上を図る

太陽光発電では、同じサイトにあるパネルでも発電量がわずかに異なることがある。AIは運用状況のデータを基に、微妙な差を検知。調べてみると、雑草の生え具合によって影の生じ方が異なり、発電効率に影響を与えていた。早速、除草シートなどで対応。発電ロスの低減につなげている。

テス・エンジニアリングは、三菱地所とバーチャルPPA契約を締結した。三菱地所の関連施設の屋根上に太陽光発電システム(1400kW)を設置。エネルギーサービスで培った需給管理機能を活用し、発電した電気を市場価格連動買い取り(FIP) 制度を用いて卸電力市場などに売電する。

同時に、売電した電気に紐づく環境価値を「非固定価格買い取り(FIT) 非化石証書」として三菱地所に提供。ウィンウィンの関係を築いている。

また、消費者サイドとのコラボを図る企業もある。伊藤忠エネクスは北海道の生活協同組合、コープさっぽろと電力小売会社のトドック電力を設立した。環境意識が高いといわれる生協の組合員に対して、再エネ100%の電気を販売している。

電源は道内の木材チップを燃料にする江別市のバイオマス専焼火力。さらに非化石証書を購入することで、再エネ100%の提供を実現した。

各企業の普及策は、まだまだ「深化」を続けるだろう。その取り組みがCN実現に大きく貢献することは間違いなさそうだ。