福島第一事故の教訓を踏まえて 東海第二発電所で進む安全対策工事

2024年2月8日

【原子力発電所の安全対策】

日本原子力発電の東海第二発電所で安全対策工事が進んでいる。

安全・安心を得るための現場の取り組みをジャーナリストの石井孝明氏が紹介する。

日本原子力発電の東海第二発電所(茨城県東海村)を訪問した。安全性向上のための工事によって、発電所が生まれ変わっていた。この原発の再稼働では事故の際の避難計画の作成と住民の同意が解決すべき課題になっている。工事の努力が知られれば、関係者に安心をもたらすのではないか。

東海第二発電所の外観
提供:日本原電

3分野で徹底的な対策 城塞のような巨大防潮堤

福島第一原発事故を教訓に、「自然災害から発電所を守り、電源を絶やさない」「原子炉を冷やし続ける」「放射性物質を外部に漏らさずに地域環境を守る」との3分野の対策が行われていた。

第一の対策として、発電所を自然災害から守る取り組みが強化されていた。東海第二は鹿島灘に隣接する。そこからの津波対策のために原子炉を「コの字」に囲む防潮堤が建設されていた。海側の防潮堤は海面からの高さが20ⅿに達する。高さ17.1ⅿの津波が押し寄せても大丈夫なように、この壁を建設した。直径2.5ⅿの鋼管杭を約600本並べて岩盤に届くまで打ち込み、鉄筋コンクリートで固めて厚さ3.5ⅿの壁にしていた。大変堅牢だ。壁の全長は約1.7㎞。まるで城塞のようだ。

建設が進む巨大な防潮堤
提供:日本原電

また、電源確保の取り組みも行っている。外部からの電力が喪失した場合に備え、既存の非常用電源とは別に高圧電源車を頑丈なコンクリート構造物内に設置するほか、移動式の電源車を高台に置く。さらに自然災害への備えとして主要設備には竜巻、突風による破損を避けるために、鋼鉄の覆いが付けられ、敷地内の施設は地震、火事などの災害に備え補強や難燃性のケーブルへの取り替えなど、さまざまな取り組みを行っていた。

第二の対策として、原子炉を冷やし続ける設備を建設している。冷却機能の多様化として既存の設備に加えて新たな冷却設備を建設。5000㎥の淡水をためる地下タンクが原子炉の隣に設けられた。さらにそれが機能しない場合に備えて、別の場所にも同様の水源を設置するほか、熱交換器へ冷却水を供給するための海水ポンプピット(貯留槽)もつくっていた。

第三の対策として、仮に重大事故が発生しても放射能を外部に漏らさず、地域の環境を守る取り組みが強化されていた。原子炉の格納容器内にたまった放射能を帯びたガスを放出しなければならない事態になった際に、そのガスから粒子状の放射性物質を取り除く「フィルター付きベント装置」が建設中だった。

さらに事故対策で司令塔になる緊急時対策所も敷地内の標高21ⅿの高台につくり、そこにがれき撤去などに使うホイールローダーなど、災害対応車両を配備していた。テロ行為などがあった場合に、所員が集まり原子炉を操作できる特定重大事故等対処施設(特重)の建設にも着手していた。

東海第二の敷地内には隙間なく物が置かれ、工事が進んでいた。松山勇副所長は「既存の建物の隙間に新規構造物をつくるために、敷地の余裕が少なく、難しい工事だが、工夫と努力で課題を乗り越えてきた。地元の皆さまに安心いただける安全なプラントをつくり、運営したい」と抱負を話した。

ここまでの大工事で当然、事故の可能性は大幅に減ると、筆者は思う。一方で、これだけ大規模な工事費用をかけて「投資に引き合うのか」との疑問が湧く。稼働をしなければ元が取れなくなる。その投資は電力を使う消費者の負担になる。

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