【コラム/4月26日】福島事故の真相探索 第3話

2024年4月26日

輻射熱で溶けた炉心支持板

ペデスタル壁の損傷原因はジルカロイ・水反応であるから、反応に関与したジルカロイと水の量について、まず調査をせねばならない。

1号機の炉心には、燃料の被覆管とチャンネルボックスを含めて、約32トンのジルカロイを内蔵していた。だが、このジルカロイがみな反応に使われたかと言えば、間違いである。その推定には、ちょっとした説明がいる。

原子炉の底が壊れた12日午前2時半ごろには、炉心中心部の高温部分の温度は2000℃を越えて、被覆管内のUO2ペレットは幾分柔らかくなっていたであろうと思われる。燃料棒の長さは4mもあるから、柔らかくなり始めた中心部のペレット(長さ1㎝くらい)は、上にある多数のペレット重量に押されて、幾分変形して座屈し、隣あった燃料棒同士が接触するに近い状態になっていたであろう。

燃料の膨らみは、炉心の温度上昇とともに徐々に大きくなり、燃料棒は互いに接触・合体して重力で降下し、炉心の外周部に置かれた温度の低い燃料棒とは別個に、下部にある炉心支持板を輻射熱で徐々に溶かしながら、圧力容器の底に向けて移動を開始したと思われる。

炉心を支えている制御棒駆動機構の覆いなどは、熱容量が余り大きくないので、降下する高温燃料と接触することによって溶融していったと考えられる。

その結果、空っぽの圧力容器の底部は、降下する燃料棒が発する輻射熱によって温度が上昇し、1000℃を越えたと推定される。降下して来た燃料に、溶けた制御棒駆動機構などの重量も加わって、温度上昇した圧力容器の底は荷重に耐えかねて、クリープ破損をするに到ったと考えられる。これが、12日午前2時半に生じた圧力容器の破壊である。


融点2880℃のUO2燃料

多くの読者は、崩壊熱によって溶融した炉心が圧力容器の底に流れ落ちて、容器の底を溶かしたと聞かされているであろうが、残念ながらそれは間違いである。

溶融した炉心が流動したのは原子炉開発の初期の頃で、融点の低い燃料棒を用いた、研究用原子炉に起きた事故での現象である。その記憶が残渣となって原子力関係者の頭の中に残っていて、融点が2880℃もあるUO2燃料炉心も、溶融すれば溶けて流れると思い込んでしまったのだ。融点の高い物体が放散する輻射(放)熱の大きさついて、関心を払わなかったことによる間違いで、碁で言えば大ポカの見落としである。

2880℃の高温物体が放射する輻射熱は、とてつもなく大きい。仮にUO2燃料棒が溶けて液体になったとしても、重力の作用で流下し始めた途端に発熱源の中心付近から離れるので、自分の出す輻射熱で冷えて、その場で固まる。蝋燭の蝋が流れながら固まるのと同じ現象だが、輻射熱が大きいUO2では、冷却は瞬間的と言ってよく、直ちに固化する。水の流れのように、流れ落ちるという現象は、UO2燃料の場合起こり得ないのだ。この点については、次話で詳しく述べる。

さて炉心中心部の高温部分は、圧力容器底の破壊によって、ペデスタルの床上に落下した。圧力容器の底からペデスタル床までの距離は約8mあるから、落下の衝撃で、燃料棒はバラバラになって床上に飛び散ったと思われる。

ただ、温度が2000℃を越えて溶着し合った燃料部分は、U(ウラン)、Zr(ジルコニウム)、O(酸素)の三元素共晶体(合金)になったとも思惟される。共晶体の性状について僕は知識が無いので専門家の判断を待つ以外にないが、いずれであれ炉心高温部分がペデスタル床に落下したことに変わりない。

1 2 3