【特集2】地域を守る「最後のとりで」 SSが燃料供給継続で奮闘

2024年5月3日

被災した地元の暮らしに懸命に寄り添い続けたSS。

災害対策の強化に向けて、多くの教訓が得られた。

【インタビュー】加藤庸之/全国石油商業組合連合会副会長・専務理事

かとう・つねゆき 1986年東京大学経済学部卒。通商産業省(現経済産業省)に入省し、資源エネルギー庁資源・燃料部政策課長などを歴任。2018年太陽石油執行役員。23年6月から現職。

―能登半島地震はサービスステーション(SS)に甚大な影響を与えました。

加藤 石川県珠洲市のSSでは、敷地の地盤が隆起したり、計量機が傾いたりしました。給油待ちの自動車が列をなす長蛇の渋滞も発生し、「対応に大変苦労した」と聞いています。

―燃料供給の継続に向けた取り組みは。

加藤 石川県石油組合のSS事業者などは、自ら被災しながらも、燃料を避難所や拠点病院、移動電源車両などに円滑に供給しようと尽力しました。災害時に緊急車両へ優先的に給油する「中核SS」が活躍し、全国各地から応援に駆け付けた消防車両や警察車両などに燃料を供給しました。

―自家発電機を備えた「住民拠点SS」も大きな役割を果たしました。

加藤 全国には1万4000カ所以上の住民拠点SSがあり、東日本大震災の教訓を踏まえて整備が進められました。そのSSが今回の地震でも存在感を発揮しました。例えば、七尾市内の住民拠点SSは在庫に限りがある中、殺到した給油客に対して「1台3000円まで」の限定給油を行いました。

―全石連が力を入れた支援は。

加藤 全石連職員も1月4日から5日間、東京都内の本部から被災地へ応援に駆け付け、組合の災害対応活動をサポートしました。2月3日から4日にかけては、森洋会長が石川県石油組合を訪問し、情報交換しました。そこで挙がった要望を踏まえ、燃料代金の早期支払いや元売りに対する仕入れ代金の支払い遅延といった問題に対応するよう、関係各所に要請しました。

―SSは災害時の「最後のとりで」として頼られています。地震で再認識したことは。

加藤 地元に根付いて顧客の顔が見えている事業者が大事であることです。被災地で車中泊を続けながらSSを営業した経営者の使命感の高さには、感銘を受けました。


配送の多様化も視野 情報共有の環境づくりを

―今後の災害に備えて取り組む課題は。

加藤 地震発生後、道路が寸断されて孤立状態になった集落がありました。そうした事態
を踏まえ、被災状況に応じて適切に燃料を配送する方法を探りたいです。燃料の配送ルー
トを陸や海以外に多様化する観点からドローンなどにも可能性を感じています。デジタル
技術で燃料供給に関する情報などをリアルタイムで共有する環境づくりも重要です。今後
も有効な災害対策を追求するつもりです。