【コラム/10月4日】台湾有事は日本のエネルギー有事 化石燃料インフラの強化が急務

2024年10月4日

日本の設備が攻撃対象になったら政策はどうあるべきか

さて、台湾有事のリスクが高まっている。台湾有事となり、在日米軍がそれに介入すれば、日本国内の米軍基地が中国による攻撃対象になる。そうすると後方支援にあたる日本も戦争に巻き込まれる。そのときエネルギーインフラを狙われたらどうなるか。

ドローンの射程は2000kmを超えるので、日本全土のエネルギーインフラや周辺のタンカーが攻撃対象になる。無人艇も押し寄せてくる。ミサイルやドローンに対する防空やシーレーンの防衛は自衛隊の任務だが、全てを防ぐことは難しいかもしれない。

このような想定を置いたとき、エネルギー政策として講じておくべき対策はなにか?
いくつかあるが化石燃料インフラに絞って述べよう。

まずは備蓄を増やすことだ。いま石油は200日分以上備蓄があるが、攻撃を受けるかもしれない。積み増すべきではないか。

石炭は現状では1カ月分以下の在庫があるだけだが、戦略的に備蓄することが出来るだろう。まずは火力発電所の敷地内やコールセンターなど既存のインフラを活用して、どこにどれだけ戦略的な備蓄が可能か、調査すべきだ。

それから、火力発電関連設備への投資である。今、脱炭素のためとして、火力発電インフラは縮小の方向にあるが、これは安全保障を考えれば愚かなことである。例え敵の攻撃を受けていくらか損傷しても、なお電力供給を続けることが出来るように、平時から万全な設備投資をしておくべきだ。

戦争になって中国に破壊される以前に、日本政府が自らの政策によって火力発電インフラを壊してしまっているというのが現状だが、この方針は転換せねばならない。

エネルギー供給、なかんずく、その8割以上を占める化石燃料は、日本の脆弱なアキレス腱であり、また日本の大動脈であり生命線である。その確保こそ、エネルギー政策の最重要課題のはずだ。

いざ戦争になれば、エネルギー事業関係者の命は真っ先に危険にさらされる。そのような事態は絶対に避けたい。

戦争を避けるためには、抑止するしかない。「エネルギーインフラを攻撃すれば日本が簡単に屈服する」と中国に思わせてはいけない。「日本は何年でも持ちこたえるので、泥沼化する、簡単には勝てない、国際的な孤立が長引き自国経済に甚大な被害が生じ、共産党政権が転覆する」と思わせておかなければいけない。そうすれば日本に手を出すことはできない。


【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「亡国のエコ 今すぐやめよう太陽光パネル」など著書多数。最近はYouTube「杉山大志_キヤノングローバル戦略研究所」での情報発信にも力を入れる。

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