【記者通信/11月20日】<独自>豪州が原発導入費用の試算年内に公表へ 野党連合が表明
オーストラリア野党連合のテッド・オブライエン下院議員は19日、次期総選挙で公約に掲げている原子力発電所の導入について、年内に詳細な費用の見積りを公表することを明らかにした。野党連合はこれまで導入や運転した際にかかる具体的なコストを示していなかった。費用の詳細を明らかにすることで、与党労働党のエネルギー政策との違いを鮮明にし、国民に原発の利点を浸透させる狙いだ。
オブライエン氏は野党連合きっての政策通で、原発導入にも意欲的な議員の一人だ。次期総選挙で野党が政権を奪還した場合はエネルギー相候補の一人とされている。同日、豪州国会内で行われた日本企業などの視察団との懇談で明らかにした。
懇談の中でオブライエン氏は原発について「2050年にカーボンニュートラルを達成するために、原発は豪州エネルギーのベースロード電源になり得る」との認識を示した。その上で「導入する原発は小型モジュール炉と新型軽水炉になるだろう」と話した。
さらに原発の管理運営の主体について、オブライエン氏は「政府に対する国民の信頼性が高く、安全保障の観点などから国営になるだろう」と述べた。
与党は原発反対 法律改正のハードルも
与党労働党のアルバニージー現政権は原発導入について、巨額なコストがかかることなどを理由に反対の姿勢だ。
これに対しオブライエン氏は「現政権が掲げる再生可能エネルギーを軸にしてカーボンニュートラルを達成する場合に比べ、原発を含めたエネルギーミックスによる方がコストは安くなる」との見解を示した。
野党連合は豪州内で休廃止が予定されている石炭火力発電所の跡地に原発を導入する方針を公表している。30年代半ばまでに7カ所で稼働する青写真を描く。
ただ豪州では現状、原発の商用利用について二つの連邦法で禁じている。導入にはこれらの法律の改正が必要だ。さらに州単位で禁じているところもあり、導入までには高いハードルが存在する。