【中部電力 林社長】将来の情勢見据えた経営ビジョンを実現し 政策目標にも貢献へ

2025年1月1日

浜岡審査が一歩前進 基準津波「おおむね妥当」

志賀 重要な脱炭素電源の一角である原子力を巡っては、10月11日に原子力規制委員会が、浜岡原子力発電所3、4号機の基準津波について「おおむね妥当」との見解を示しました。大きな一歩ですね。

 私も原子力規制委員会との意見交換会に参加し、山中伸介委員長と直接コミュニケーションいたしました。基準地震動が昨年、そして今回基準津波がおおむね了解され、若干の項目は残るものの、プラント審査に進みたいとの当社の提案も了解いただきました。プラント審査が開始されることは審査過程が一歩ステップアップしたものと考えています。ご存じの通り浜岡は大規模地震の震源域に立地し、ハザードを特定する作業は難しいものでした。更田豊志前委員長からは、この浜岡特有の問題は慎重かつ適正に審査するべきだとの考えを示され、多くの時間をかけてきました。地域の皆さまには、長い期間、当社の取り組みにご理解・ご支援をいただき、改めて感謝いたします。

志賀 審査のスピードアップ、あるいは規制当局とのコミュニケーションの面などで、望まれることはありますか。

 両者ともに審査の効率化を意識しています。例えば3号機と4号機は炉の形は同じで共通設備が多々あります。そこで3・4号機で関連する項目は並行審査した方が効率的だと提案したところ、規制委に了解いただきました。こうした姿勢で引き続き、丁寧に真摯に対応していく所存です。

24年6月に運転開始した八代バイオマス発電所

志賀 稼働に向けた大体のスケジュール感は?

林 再稼働に向けた1番初めのステップが原子炉設置変更許可申請で、現在はその中のハザード審査のうち、プラント審査を行うために必要な項目をクリアした段階です。今後、設工認、保安規定の審査があり、さらに工事の対応、地元の理解を得るなどいくつものステップがあります。ただ、他社の例を見るとプラント審査が始まって2年程度で原子炉設置変更許可の審査が終わっていますので、それを目安とし頑張りたいと思います。

志賀 防波壁の高さは28mにかさ上げする方針です。そこまでしてドライサイトを目指すことが本当に必要なのかと、個人的には思います。

 防波壁については、原子力規制委員会との対話の中で基準津波が25・2mとなり、現行の要求であるドライサイトを確保するために28mと設定しました。新規制基準をクリアし、安全・安心のために必要な工事だと思っています。加えて想定を超える津波にも備え、原子炉建屋に水密扉を設け、高台に非常用電源や可搬型電気車を置くなど、さまざまな対策で多重防護を講じていきます。

志賀 その他、脱炭素関連では海外を含めどのようなトピックスがありますか。

 22年にグローバル事業本部を設立して以降、海外向けに積極的な投資を行い、現在は12の投資案件、九つのコンサル・交流案件を進めています。特に、「クローズドループ」と呼ばれる地熱利用技術を有するEavor社や、米国の小型モジュール炉開発企業のNuScaleへの出資、また、名古屋港周辺の脱炭素化を目指すCCUS(CO2回収・利用・貯留)プロジェクトなどが、脱炭素化の実現に大きく貢献すると考えています。

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