【コラム/1月24日】元旦紙面を考える~研究・技術開発報道の今日
飯倉 穣/エコノミスト
1、ミレミアムの第2の四半世紀に
ミレミアムから四半世紀を経た。次の25年間の経済の方向は明確である。実現性はともかく2050年カーボンニュートラル(CN)経済(脱炭素経済)への移行である。第7次エネルギー基本計画の原案(24年12月27日)の意見募集があった。経過目標(2040年)は、一時エネ供給量4.2~4.5億KL程度、内訳はシナリオで異なるが、再エネ21~31%、原子力12%程度、水素2~5%、化石エネ68~52%(うち天然ガス18~26%、石油21~27%、石炭10~14%)である。二次エネの電力は、1兆800億kwh~1兆2000億kwh(電力化率55~60%)、内訳は再エネ51~45%、原子力20%前後、火力29~45%である。
経済成長をめざしながらエネルギー量の確保と脱炭素を目指す。再エネと原子力の達成可能性が気に掛る。成否は、経済水準維持に必要な化石代替エネ量を、再エネで目一杯の開発、原子力取組姿勢強調で確保出来るかに尽きる。それぞれ再エネや原子力等も研究技術開発頼りの前提がある。またその先2050年までのシナリオは、主張はあるが、明解でない。
加えて今後の長期的な経済動向も気に掛る。今後の経済展開の要点は、経済成長に寄与する、エネ確保技術開発と同時に全般の研究技術開発も重要である。その取組み状況や成果、今後の期待を元旦の報道に期待したが、関心が低いことに驚いた。日本経済に絡んで元旦報道から考える。
2、主要6紙元旦報道
現在はデジタル化情報時代で新聞の話に関心を持つ人はどの程度だろうか。新聞の発行部数は、衰えたとは言え26百万部ある(2000年53百万部)。依然報道情報の正確性、記録性や報道事項の軽重の捉え方で貴重である。匿名性なきおしゃべりではない。
元旦の主要6紙(朝日、産経、東京、日経、毎日、読売)を拝見した。各社の一面見出しは、能登半島関連4紙、安全保障関連1紙、戦後80年関連1紙、韓国政治関連2紙、米国・世界危機関連1紙等だった(一面に複数記事掲載あり)。政治と歴史の話題なら、例えば昭和100年で次の展開を考える。「百年の未来への歴史 デモクラシーと戦争」(朝日25年1月3日)連載である。戦争と為政、法の支配等を採り上げる。また同様に「デモクラシーズこれまでこれから戦後80年」(毎日同1日)特集もあった。歴史から学ぶことも大切だが、現在国際政治で起きている現象と今年の展望を描いたものは稀少だった。
その紙面を受けたのか、各社の元旦社説は、いずれも国際的な不確実さ、日本政治・民主主義の再構築、国内政治運営、国際協調等だった。見出しは以下の通りである。「不確実さ増す時代に 政治を凝視して強い社会を築く」(朝日)。「変革に挑み次世代に希望をつなごう」(日経)。「平和と民主主義を立て直す時 協調の理念を掲げ日本が先頭に」(読売)。「戦後80年 混迷する世界と日本「人道第一」の秩序構築を」(毎日)。「年のはじめに 未来と過去を守る日本に」(産経)。「あわてない、あわてない 年のはじめに考える」(東京)。中身は、論理的展開より思い優先の印象だった。
今年の関心事は、継続する国家間紛争に加え、トランプ政権誕生、各国政情流動化等に見られる国際政治・米国政治の不確実性が焦点となった。内外の政治情勢を意識した政治一色だった。これほど各紙社説の取り上げ内容が類似性を持つことは珍しい。
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