【コラム/2月18日】米共和党が指摘する気候危機説のウソ 議会公聴会で科学者が証言
杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
トランプ大統領が誕生し、米国のエネルギー政策は完全に変わった。これまではバイデン政権のもとで「グリーン・ニューディール(日本で言う脱炭素のこと)」にまい進してきたが、これを撤廃して「エネルギー・ドミナンス(優勢)」に舵を切った。石油・天然ガス・石炭を掘りまくり(drill baby drill)、経済を発展させる、という考え方だ。
よく日本では「トランプ大統領が変人なので科学を無視して気候変動を否定するのだ」という調子で報道されるが、これは全く違う。
米国共和党は、総意として、「気候危機説」をでっちあげだとして否定しているのだ。
そしてこれは「科学を無視しているから」などではない。「科学をよく知っているから」こそである。
日本の通説は本当か ヘリテージ財団の報告書
米国の議会公聴会では、共和党が招聘した科学者も証言をする。そこで「ハリケーンの激甚化など起きていない」とか、「数値モデルによるシミュレーションは過去の再現すら出来ない」といったことをはっきりと、データを示して証言する。
だから共和党の議員はみな、気候危機説などウソだとよく分かっている。日本の政府御用学者が、データを隠し、気候危機をあおり、脱炭素の説教をして、オールドメディアも国会議員も皆それを信じ込んでいるのとは対照的だ。
米国の科学者の証言は、これまで何度もまとめられてきた。さらに現在進行形で、共和党系の有力なシンクタンクであるヘリテージ財団が一連の委託報告書を発表しているので、以下に概要を紹介しよう。
・ほとんどのコンピューター気候モデルは、過去50年間について、地球の気温上昇の速さが観測よりも速い。つまり「温暖化しすぎ」である。公共政策は、気候の影響を誇張する気候モデルではなく、気候の観測結果に基づくべきである。
https://www.heritage.org/environment/report/global-warming-observations-vs-climate-models
・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は世界規模で気温が上昇していることの検出と、その原因が何かについて「科学的に決着がついた」と主張しているが、この議論はまだ満足に解決されていない。産業化以降の気温の変化には、都市熱が少なからず混入している。また地球温暖化の原因が、ほとんど太陽活動の変化といった自然現象によるものなのか、ほとんどがCO2排出などによる人為的なものなのか、あるいはその両方が混在しているのか、まだ確定できていない。
・ハリケーンの頻発化・激甚化は、統計を見れば、起きていないことが分かる(図1)。米国でハリケーン被害「金額」が増加したのは、所得が増加し、資産が増えたことが主な要因である。地球温暖化よりも、エルニーニョなどの自然変動が、ハリケーンの頻度や強さを決定していることが分かっている。

https://www.heritage.org/energy/report/keeping-eye-the-storms-analysis-trends-hurricanes-over-time
・寒冷な気候の方が、温暖な気候よりも、人間の健康にリスクをもたらし、多くの死者を出す(図2)。地球温暖化が進んだとしても、マラリアのような媒介感染症の範囲が大幅に拡大することはない。むしろ、手頃な価格で信頼できるエネルギーを利用できるようになった結果、平均寿命は飛躍的に伸びた。

ちなみに図2について、日本のデータを見ると、寒さによる超過死亡が全死亡の9.8%に上るのに対して、暑さによる超過死亡は0.3%にとどまる。つまり寒さによる死亡は暑さによる死亡よりも30倍も多い。
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