【コラム/5月28日】洋上風力発電を考える~画餅の国策なのか
6、洋上風力の現在地から~この国では、未だ割当て方式と目標の世界が妥当
洋上風力は、欧州等の現状から見て、技術的に実用段階にある。つまり洋上に建設・運転可能である。経済的には、自然条件に依存するが、一定の条件の下で化石エネと近似か同等となる。一方日本では、実証段階か初期実用化段階である。25年試算が示している。現在発電コスト30.9円/kWh(政策経費除く21.1円)で、40年漸く13.5~14.3円/kWh(政策経費除く9.5~10.1円)と見込む。技術開発、習熟、・量産等の効果である。
実際、経済環境の変化(物価高騰)に加え、日本の周辺海域の開発は、現行のエネルギー体系(需給、価格等)では、依然大いにリスクあり、である。電力システム改革にうつつを抜かし10~20年遅れた見方もある。幸い参入企業がいる。商社、電力、ガス、石油系、再エネ企業等10~20社の名前がある。それらの企業の事業力を如何に継続的に牽引・活用できるか。それが大切である。
現状の公募方式は、公正・公平確保、競争による価格挑戦の面で官庁的且つ大衆的な説得力を持つ。開発サイドから見れば、立地関係調整、建設手当、送電手段、売電価格、販売先等悩ましい問題が多い。計画立案段階で、多くの不確実性を担保する手当は見当たらず且つ追いつかない。事業遂行と応募選定項目評価の恣意性が気に懸かる(当面、くじ引き方式・割当てが妥当)。
また当面物価上昇で、収支相償のラインは、上方にシフトしている。15円程度の発電単価は、見込めない。事業を考える場合、政策経費等を織り込むべきか、やや疑問もある。それでも20~25円程度の発電単価であれば、建設可能な地点もあろう。国の調査も大切だが、それを探すのが、民間企業の事業活動であろう。
洋上風力は、国策としてのエネ確保である、緊急性もある、現在の開発資源(企業力)を有効活用することが重要である、参加可能企業も限定的である等々を勘案すれば、目標発電価格を条件に、有望地域を割当方式で担当してもらうことが得策且つ合理的に見える。同時並行的に洋上風力開発を進める工夫が大事である。その手法は、応募による選択でなく挙手企業への割り当てが当面妥当ではなかろうか。つまり公募方式でなく、開発企業の意向に沿った目標単価考慮の割り当て方式が適当である。競合する場合は、はずれた企業が次地点で優先権をもつ、くじ引き方式が尤も明解な評価選定方式に思える。
【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。