【静岡ガス 松本社長】積極投資で事業を拡大 収益増と変革を両立し包括的施策で公益担う

2025年6月1日

都市ガスに加え、再エネや住宅再生、海外展開など事業の多角化を進めている。

包括的なサービスで地域のニーズに応えながら、人材育成や株主還元にも取り組み、持続的な企業価値の向上を図る。

【インタビュー:松本尚武/静岡ガス社長】

まつもと・よしたけ 1993年大阪大学理学部卒、静岡ガス入社。2020年静岡ガス&パワー社長、22年南富士パイプライン社長、23年静岡ガス常務執行役員経営戦略本部長などを経て24年1月から現職。

井関 まずは、2024年12月期決算のポイントと評価についてお聞かせください。

松本 24年度は、前年度と比べ大幅な減益という結果になりました。ただこれは、23年度が燃料費調整の期ずれ差益による増益効果が大きかったことの裏返しで、これを補正すると経常利益が23年度は108億円、24年度は116億円と、実質増益となります。それぞれに一過性の増益要因があったことを考慮しても、着実に成長できていると捉えています。

井関 一過性の要因とは。

松本 為替変動や市場の不安定さなどです。例えば、当社が出資している愛知県田原市のバイオマス発電事業では、原料を長期で為替予約して調達しています。ドル建てのため、近年の円安傾向により評価益を計上しました。また昨年、需給調整市場で全商品区分の取引が開始となり、当社グループも参加しています。所有する電源を活用し落札することができましたが、市場は創設されたばかりであり、継続的に落札できることを見通し難いため、これらを抜きにした実力をいかに底上げしていくかが重要です。

井関 そうした要因がなくても、経常利益は増加しています。

松本 都市ガスの大口分野の販売拡大が増益につながりました。第7次エネルギー基本計画では、天然ガスは化石燃料の中で温室効果ガスの排出が最も少なく、カーボンニュートラル実現後も重要なエネルギー源と位置付けられました。産業界において、天然ガス転換へのニーズが高まっていることは追い風です。実際、当社にも、設備更新のタイミングで燃転を要望する声が多く寄せられています。

井関 今後、家庭用や卸売りの販売量はどう推移していくでしょうか。

松本 家庭用に関しては横ばい、もしくは漸減していくと予想しています。人口減少や核家族化に加えて、給湯器や住宅の断熱の性能が飛躍的に向上していることを考えると、家庭部門における販売量の微減傾向は致し方ない部分もあります。卸先への販売量も減少傾向です。都市ガス小売りの全面自由化で、大手電力会社などの新規参入が進んだことによる影響を受けており、今後もこの傾向は続くと予想しています。この点は中期経営計画にも織り込み済みです。

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