【静岡ガス 松本社長】積極投資で事業を拡大 収益増と変革を両立し包括的施策で公益担う

2025年6月1日

30年目標は第二段階へ 三分野に重点投資

井関 25~27年中期経営計画がスタートしました。ポイントと目標達成に向けての意気込みを聞かせてください。

松本 グループの30年ビジョンに掲げた「連結経常利益130億円」の早期実現に向けてフェーズごとにテーマを設けている中で、25年からの3年間は「事業領域の拡大」を進めていきます。昨年までの第1フェーズで積み上げてきたお客さまとの信頼を基に、都市ガスやLPガスのような基盤事業はもちろん、成長事業への投資を加速させます。27年までの3年間で、総投資額の約7割に当たる660億円を投じる予定です。

Farm Gas(印)内のタンク。初の国外でのバイオガス事業だ

井関 どのような分野に領域を広げていこうとしていますか。

松本 ①電力・再生可能エネルギー、②海外事業、③くらし・サービス─この3事業領域を拡大していく方針です。まず電力・再エネについては、当社のチャネルの強みを生かせる家庭用および小規模の業務用といったお客さま向けの電力販売に加え、再エネ電源の開発に力を入れていきます。これまで太陽光発電所のほか、田原、鳥海南(山形県飽海郡)、遠州フォレストエナジー(静岡県袋井市)の3事業に出資し、バイオマス電源の開発にも注力してきました。今後は、太陽光分野をさらに強化していく方針です。現段階では、戸建て住宅向けのオンサイトPPA(電力購入契約)モデルが主体ですが、将来的には、これまで築いてきた一般家庭への販売網を生かしたペロブスカイト太陽電池のチャネル化を見据えています。

井関 蓄電池導入のニーズは高まっていますか?

松本 一般家庭のお客さまに関しては、蓄電池へのニーズが高まるのはしばらく先だろうという印象です。一方、再エネ導入が拡大していく中で、系統全体での調整力の必要性は急速に増してきています。経済産業省からの支援を受け、静岡支社(静岡市駿河区)に系統用蓄電池の建設工事を進めている最中で、第二、第三の着工も検討しています。

井関 電力小売り事業については、数年前の市場価格の高騰もあり難しくなってきているといった声が上がってきています。

松本 自由化以降に新規参入した事業者の多くは、発電能力を有しません。そうした事業者の方々からすれば、現在の状況で事業を継続することは難しい点があるかと思われますが、調整力を供出できる事業者が小売事業を営むという、あるべき姿に落ち着いてきたという印象です。

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