【静岡ガス 松本社長】積極投資で事業を拡大 収益増と変革を両立し包括的施策で公益担う

2025年6月1日

海外進出を加速 米・印で新たな展開

井関 海外事業に関してはどのように取り組んでいますか。

松本 人口が多く、経済成長のペースが著しいインドや東南アジアを中心に、アセット投資やバリューチェーンの拡大を図ります。インドでは、昨年7月からバイオガスの生成・販売を手掛けるFarm Gasに出資・参画していますし、9月には現地子会社「シズガスインディア」の設立を決定しました。さらに12月には、ベトナムの太陽光発電事業に出資しました。

特に東南アジアは協業関係にある日系企業が多く進出しており、これまでのノウハウを共有しやすい体制が整っているので、さらなるシナジーの創出といった点で期待が持てます。さらに今年2月には、米テキサス州南部イーグルフォード層のシェールガス開発事業の権益の一部を取得しました。これによってLNG換算で年間約40万tのガスを生産し、急速に高まる同国のガス需要に対応する計画です。当社にとって初の上流参画であり、これを皮切りに、さらなる米国での事業展開を進める方針です。

井関 くらし・サービスに関してはいかかでしょうか。

松本 昨年10月に、空き家の買い取り・再生・販売事業に強みを持つ「Sweets Investment」をグループ会社化しました。増加傾向にある中古・空き家住宅を積極的に買取り、リノベーションした後、賃貸・再販用途にストックしておく狙いです。リノベは専門のデザイナーに委託することで付加価値を付けており、お客さまからも好評です。再販の際には、ガス、電気、エネファームやHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を一体化したパッケージを提案し、エネルギーと住宅を最適化することで、お客さまのくらしに貢献していく所存です。また、1月には可搬型蓄電池を搭載したEV(電気自動車)に関する実証実験も始めました。これが公用車・社用車として機能するようになれば、モビリティの電動化に加えて、地域防災力の向上にもつながります。

再生した家。統一感のある配色に、専任デザイナーの腕が光る


人材確保戦略を多角化 女性管理職登用にも力

井関 これらの事業を拡大させていくには、人材の確保・育成が重要ですね。

松本 事業領域の拡大には、既存社員のマインドチェンジや能力開発はもちろん、他領域からの人材確保をいかに効率的に行えるかといったことがポイントになります。他業種人材のノウハウやスキルなどを一挙に取り込めるM&Aはそうした点からも有効で、キャリア採用などと併せて重点的に取り組んでいく必要があります。

今年から、社内公募・社内インターン制度などを導入し、社員の自律的成長とキャリア形成の多様化を促しています。ほかにも、スモールディスカッションやアンケートを積極的に行い、社員の意見が反映しやすい仕組みを整えています。1月には「エネルギーを中心としたグループ総合力で、豊かで持続可能な未来を追い求めます」という新たなグループ企業理念を策定しました。これは役員ではなく全グループ社員が声を出し合って作ったものです。これらの取り組みにより、社員一人ひとりの目的意識や帰属意識が高まってきており、特に若手に関しては5年目定着率が90%を超えるなど、一定の成果が出はじめています。

井関 女性役員・管理職の積極登用も進めていますね。

松本 男性偏重の組織編制となっていることは長年の懸念事項でしたが、16年に「女性活躍に関する自主行動計画」を策定し、21年3月までに管理職層に占める女性の割合を6%以上とする目標を打ち出したことをきっかけに本格的に女性管理職登用に着手しました。管理職育成プログラムやダイバーシティ推進委員会を設置するなどし、女性社員の職域拡大の機会を創出したことで、21年には、目標を達成することができました。引き続きこれらの取り組みを強化し、来年度末までには12%まで高める方針です。これまでに登用した人材にはグループ会社の非常勤取締役や非常勤監査役を兼任させており、ゆくゆくは経営層の一角を担ってほしいと期待しています。ほかにも、育児休業後のキャリア支援をはじめ、女性特有の健康問題の解決を支援するデジタルサービス「marbleMe」を導入しており、役員・管理職のみならず全女性社員が働きやすい環境づくりに注力しています。

1 2 3 4