【記者通信/6月8日】ガス協会が新ビジョン eメタンとバイオガスで5~9割

2025年6月8日

日本ガス協会はこのほど、業界の新たな長期方針となる「ガスビジョン2050」を発表した。都市ガスのカーボンニュートラル(CN)化に向け、2050年に都市ガス全体の50~90%をeメタン(合成メタン)とバイオガスで賄う目標を掲げた。都市ガス業界はこれまで90%をeメタンのみで供給する方針だった。導入比率と脱炭素化の選択肢に柔軟性を持たせた内容に見直した。

ガスビジョン2050の概要を説明する内田会長(3日、東京都千代田区)

新ビジョンの前身に当たる「カーボンニュートラルチャレンジ2050」(20年11月策定)では、30年に都市ガスの1%以上をe-メタンで供給し、50年には90%をeメタン、5%を水素の直接利用、残る5%をバイオガスやCCU(CO2回収・利用)やCCS(CO2回収・貯留)などの脱炭素化の手法で供給し、都市ガスのCN化を目指す計画だった。

これに対し、新ビジョンではバイオガスと天然ガスの役割を拡大した。30年に都市ガスの1〜5%をe-メタンとバイオガスで供給。50年には両者の導入比率を50〜90%まで引き上げる。供給手段としては、海外からの輸入や地産地消型の製造などを想定する。

残る10〜50%については、CCUS(CO₂回収・利用・貯留)、NETs(ネガティブエミッション技術)、カーボン・オフセットなどの脱炭素手法を組み合わせた天然ガスを供給する。具体的には、DACCS(大気中のCO2直接回収・貯留)やコンクリート原料などに利用するCCUなどの新技術の活用を視野に入れる。残り数%は水素の直接供給で都市ガス全体のCN化を目指す。

記者会見で同協会の内田高史会長は、「中小の事業者はeメタンに主体的に取り組むというのが非常に難しい。このため全国の都市ガス事業者が自分事として取り組めるビジョンにした」と見直しの意義を述べた。

見直しの背景には、2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画での方針転換がある。第6次エネ基は、50年までに90%をeメタンで供給すると明記していたのに対し、第7次エネ基では、eメタンやバイオガスなど多様な手段を組み合わせ、50年のCN化を実現するとしている。導入比率には触れず、柔軟性を持たせた形だ。加えて、S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合)の観点から、天然ガスをCN実現後も重要なエネルギー源として位置付けている。内田会長は、「前回のビジョンは環境性に特化した内容だったが、今回は第7次エネ基の趣旨を踏まえ、CNだけでなくS+3Eの同時達成を図る内容にした」と強調した。