【コラム/10月10日】英国保守党も脱・脱炭素へ 日本はいつまで続けるのか
杉山大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
英国保守党が、明確に脱・脱炭素を党の方針として打ち出した。10月2日付けで発表された「気候変動法の廃止」という文書だ。(まだ公式の保守党HPには掲載されていない。筆者はこのサブスタックから入手した)。
イギリスの「気候変動法」は、2050年CO2ゼロ(同国ではネットゼロという)に向けて、直線的に5年ごとの国全体の排出枠を決めて割り当てるなど、ネットゼロの根幹を成してきた法律だ。それを廃止するということは、ネットゼロを放棄することである。
サマリーを邦訳しよう:(全文の機械翻訳はこちら)
気候変動法の廃止
要約:2025年10月2日、保守党は気候変動法の廃止計画を発表した。
・気候変動法は機能していない。この法律は閣僚に、国民を貧困化させ、家庭や企業のエネルギー料金を上昇させ、英国の産業を衰退させる政策を採用させている。
・だからこそ、われわれの努力にもかかわらず、世界の排出量は増加している。機能しないものは機能しないと認めるべきだ。だからこそわれわれは気候変動法を廃止し、安価なエネルギーを最優先とするエネルギー戦略に置き換える。
・これは気候変動対策の放棄を意味しない。安価なエネルギーに焦点を当てた戦略で同法を置き換え、家計に合えば排出削減可能な電気製品を採用できるようにし、自然を保護し、世界的な排出削減につながる製品を革新する。これが地球規模の気候変動に与えるわれわれの最大の影響だからだ。
・労働党は実現計画もなく目標を掲げ、国民を貧困に陥れる。改革党は見せかけだけの政策しか提案しない。明確な計画を策定する困難な作業に取り組んでいるのは保守党だけだ。
英国は現在、労働党政権だが、支持率はわずか19%しかない。支持率1位はブレクジット運動の後継にあたる新興政党「改革UK」で何と31%もある。この改革UKはScrap Net Zero、つまり脱炭素を潰せ、と明言してきた。なお支持率の数字はpoliticoによるもので、9月18日現在のもの。
今回は、これに加えて、議席数では今なお最大野党であり、伝統的な二大政党の一つだった保守党が、はっきりとネットゼロ廃止に舵を切ったことになる。なお保守党の支持率は凋落して今は17%とどん底に落ちている。
もうこの段階で、ネットゼロは、もはや国民の多数の支持を受けているとは言い難くなったことが判明した。
英国は、もはやネットゼロを放棄するか否かではなく、いつするのか、という問題だ。
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