【コラム/10月30日】今の暮らしと未来の不安を考える~新政権の経済政策は現実直視で
4、生産性上昇見合いの賃上げが基本
両論の見方に加えて物価抑制のため、生産性向上に見合わない賃金増を回避することも重要である。近時の春季賃上げ状況(23年3.60%、24年5.33%)は、実質成長率(≒生産性上昇、23年1.2%、24年0.1%)を上回っている。つまり賃上げ率は、生産性上昇を超えている。
この状況で、政府が物価・賃金の好循環を謳い、物価を上回る賃上げを推進し、賃上げを起点とした成⻑型経済の実現を掲げている(25年度年次経済財政報告)。如何か。
改めて経済成長と賃上げと企業物価・消費者物価の正常な関係を確認すべきであろう。21年4.6%、22年9.7%の企業物価上昇は、輸入物価上昇21年21.6%、22年39.0%に伴うものだったが、現在は、円安の影響に加え、コストプッシュ的になっている。賃上げ・便乗値上げが企業物価を押し上げ、消費者物価を上昇させていないか。
5、物価対策の基本は
この状況で、物価対策として適切な方法は、専門家指摘の通り、金融政策による総需要の抑制、財政政策による緊縮財政、賃上げの生産性基準の徹底等である。円安対応でも、金利の引上げが有効である。物価上昇に伴う生活苦は、暫く我慢と言うことになる。困窮者に対する対応は、社会保障政策として対応(支給等)となろう。新政権には、物価問題の扱いを間違わないことを期待したい。
6、未来の不安は、財政破綻
財政状況は、悪化の一途をたどっている。本年度の財政赤字は、25%(公債金29兆円)である。国の借金(普通国債残高)は、24年度末1104兆円(GDP比180%)である。国債保有は、日本銀行538兆円と5割を占め、市中への放出はリスクを伴う。この状況で先行き大丈夫と考えるか、財政危機と考えるべきか。多額の国債残高は、経済運営上の不安定要因であることは事実である。同時に経済活動を歪めている可能性もある。
日本経済の停滞は、何故継続しているのか。国債頼りの財政支出による水準維持も問題である。財政均衡を、財政破綻の視点から論じることが多いが、経済の流れで財政赤字(超過投資の源泉)を見ることも大切である。生産・所得・支出(=需要)の流れで見れば、国債頼りの政府支出が総需要を押し上げている。財政赤字分20~30兆円である。この構造が、過去30年継続している。所謂投資超過の姿である。GDPギャップの捉え方にもよるが、日本経済は、需要不足でなく供給過多の状態を継続していると見ることも出来る。この状況は、常に経済に下方圧力となる。
経済に、景気変動は付き物である。経済不調となると、よく潜在成長率や需給ギャップの言葉が踊りだす。そして潜在成長率より現成長率が低いとして、経済対策・補正予算という財政出動を求める。アベノミクスの大胆な金融緩和・機動的財政出動が好例である。需要追加の安易な発想である。これが財政状況を大きく毀損し、企業活力を喪失させてきた。


