【コラム/10月30日】今の暮らしと未来の不安を考える~新政権の経済政策は現実直視で

2025年10月30日

(財政健全化の方法は~いざとなれば累進的財産税で)

もし財政状況を将来の危機と考えた場合、この国債残高を低下させるためどうすべきか。GDP比債務残高を抑制するプライマリーバランス(政策経費-税収=0)の確保が、一般的な主張である。名目成長率=国債金利、PB赤字ゼロなら、GDP比債務残高一定。名目金利 > 名目成長率ならば、GDP比債務残高は発散する。この考えで四半世紀試行錯誤したが、何ら展望は見えない。国債発行容認派は、政府の借金は、国民の資産である。日本国債は、国内保有である。統合政府なら、日銀借金は相殺可能。自国通貨建てはデフォルトしないと喧伝する。

やはり年々の税負担増・歳出削減による財政均衡努力以外に道はなさそうである。他にインフレによる実質残高縮小もあるが、経済危機を連想させる。いざとなればどうするか。国民資産の税負担による債務残高削減である。家計の資産は、2239兆円である。それを考えれば、国債残高相当額の累進的財産税徴収で、国債償還可能である。故に現状の国債残高は大丈夫で、国家の財政破綻は回避できると考えるべきか。宴の後を考えたくないが、それぞれ今後どうなるか科学的に推理する必要がある。


7、貿易収支にも不安~原発の新増設が大切

貿易赤字が気になる。トランプ相互関税は、日本の輸出力の低下をあからさまにした。自動車輸出頼りである。それなら輸入を抑制する方法も必要となる。昔ならマクロ経済の縮小均衡が有効な手段だった。そして石油輸入代替で原子力の活用が大きな意味を持った。2001年東日本大震災福島原発事故を契機とした原発停止で、化石エネの輸入増大で貿易収支は、赤字基調となった。また電気機械の国際競争力低下も顕著な要因になった。

よく政府政策で、稼ぐ力が話題となる。過去プラント輸出、インフラ事業獲得などが話題となり、その後インバウンド傾斜、そしてDX、GXで、最近半導体に巨額資金供出と続く。本来再エネが、安価で且つ国内機器の競争力があればよいのだが、機器は輸入ばかりである。極めて単純だが、国際収支対策は、短中長期的に原子力の再稼働と新規建設が、最も現実的な政策のようである。他の可能な方法があれば知りたい。


8、今後の経済運営

今後の経済運営で、幾つかの論を見かけた。例えば、外需依存是正、内需主導の自律的成長のため国内投資促進と家計消費の活性化を図る、賃上げ経済への移行である。(村田啓子「内需主導の経済に転換必要」(日経25年8月7日)。また財政健全化努力は必要であり、大型補正予算の歯止めが必要で、成長率落ち込みがなければ、補正不要である(井堀利宏「危機的な財政状況 直視せよ」(同8日)。それぞれの内容は若干疑義もあり正論もありである。

問題は、経済専門家と政治家・国民世論の考え方のズレである。現実・理論と願望の乖離問題である。ある政治家によれば、政治家を志す以上、政策、選挙、政治能力が必要という。まず自分が実現したい政策を勉強して掲げる。選挙で、その政策で支持層に働きかける。そして政策の実現を政治する。

その政策が、選挙で勝つ材料だけとしたらどうか。経済のバランスを考慮しない財源なきバラマキに陥りやすい。最近の与野党の姿である。ポイントは、国民全体をよりよくする政策かどうかである。基本は、経済成長の現実を直視し、内外均衡を重視した経済運営を行うことに尽きる。新政権のリーダーには科学的精神が宿っていることを期待したい。また政治は、国民レベルである状況を抜け出す工夫(中選挙区制等の検討)も必要ではなかろうか。


【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

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