【沖縄電力 本永社長】事業環境変化を好機に 新たな価値生む企業へ変革していく
再エネ100%実現へ 波照間島で準備進む
井関 波照間島(竹富町)で再エネ100%を目指す取り組みが注目されています。
本永 波照間島では、09年に国内初の可倒式風車を導入し、その後、系統安定化に向けてモーター発電機と蓄電池を組み合わせた「MGセット」を整備しました。20年には、約10日間連続で再エネ100%供給を実現した実績があります。現在進めている実証事業では、夏場に風力の発電量が低下する課題を補うため、今年度から太陽光や蓄電池、離島エネルギーマネジメントシステム(EMS)、さらに需要家側EMSを構築し、再エネ100%供給時間の延長を目指しています。この取り組みは、内閣府の「沖縄型クリーンエネルギー導入促進実証事業」に採択されており、27年度上期に実証設備の構築を終え、下期に実証試験を開始する計画です。

新たに構築する設備では、既設のディーゼル発電機と組み合わせてシステム全体を制御し、島内の電力系統を安定化させながら再エネ比率を拡大していきます。将来的には、ディーゼル発電機の燃料をバイオ由来に転換することも視野に検討していきたいです。
井関 他の離島などにも展開できそうですね。
本永 波照間と同規模の島であれば可能だと思います。ただし、離島は当社単独で事業を進めるとコスト面で負担が大きいため、他社との協業や補助金などを活用しながら取り組むことが不可欠です。
井関 7月に開業したテーマパーク「ジャングリア沖縄(今帰仁村)」の経済効果が期待されそうですが、沖縄経済の現状をどう見ていますか。
本永 開業初年度の経済効果が6000億円を超えるとの試算があります。ジャングリアが立地する本島北部には、美ら海水族館(本部町)をはじめ観光施設が集積していますが、これまでは那覇からの日帰りが定番でした。来園者を周辺施設へと誘導することで宿泊需要を喚起し、滞在期間を延ばすことでさらなる経済効果を生むことに期待しています。

また、新型コロナ禍以降、沖縄全体の人口は減少に転じてしまいましたが、世帯数は増加傾向にあり、住宅開発やホテル建設は引き続き好調です。本島でも不動産投資が活況で、県内地価は12年連続で上昇しており、伸び率は全国でも1、2位を争う勢いです。
井関 6月には、県の経済界が主導する「GW(ゲートウェイ)2050プロジェクト」に向けた取り組みが、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)に明記されました。本永社長自身も企業会のメンバーとして名を連ねていますが、今後への期待はいかがでしょうか。
本永 GW2050は、那覇空港の機能強化を図り、那覇港湾施設(那覇軍港)、浦添市の牧港補給地区(キャンプ・キンザー)、宜野湾市の普天間飛行場といった米軍基地の返還予定地約800haを一体開発する大規模プロジェクトです。「GW2050プロジェクト推進協議会」を立ち上げ、施設が立地する3市と地元の企業7社が一緒になって、どのエリアにどのような機能や役割を持たせれば効果が最大化できるか検討しているところです。
同協議会が描くグランドデザインでは、50年度に名目県内総生産(GDP)を現在の約2・2倍にあたる11兆円に拡大することを目指しています。既存産業の高付加価値化、ブルーエコノミー、先端医療、航空・宇宙といった沖縄の強みを生かすことができる産業分野を重点に据え、その成長によって実現する方針です。
GW2050の実現は、それを支える人材育成とセットで考えていかなければなりません。
これに合わせて人口についても、現在の約147万人から167万人に増やす目標を掲げており、こうした重点産業の活性化を図るとともに、県外に流出した若手人材を呼び戻す必要もあります。高度な産業人材やグローバル人材を育てるべく、小学校低学年から英語教育に力を入れるなど、推進協議会の中で話し合い、できることから始めていこうと考えています。


