【コラム/11月28日】成長戦略を考える~何故功を奏しないのか

2025年11月28日

飯倉 穣/エコノミスト

1、成長戦略は、政治のお仕事

21世紀の歴代政権は、必ず成長政策に取組んできた。高市早苗内閣も、日本成長戦略本部を設置し(25年11月4日)、17戦略分野・8横断的課題を示した。「リスクや社会課題に対し、先手を打った官民連携の戦略的投資を促進し、世界共通の課題解決に資する製品、サービス及びインフラを提供することにより、更なる我が国経済の成長を実現するため、その具体化に向けて」、第1回日本成長戦略会議を開催した(10日)。巷間、期待もあり、疑義もありである。

報道もあった。「17分野 官民で重点投資 AI・半導体・エネ安保・・・成長戦略始動 首相、「危機管理」を重視 バラマキ懸念は拭えず」(日経11月5日)。「成長戦略会議 初会合で重点施策 設備投資促進へ税制創設案」(朝日11日)。「GDP減 問われる「成長力」」(同18日)。

1955年以降99年まで14回の経済計画(計画期間2~5年)が、経済運営(成長)の指針だった。その後経済計画は取りやめとなり、年々の経済運営は、民主政権を除き「経済財政運営と構造改革等に関する基本方針(所謂骨太の方針)」に変更となった。同時に各内閣で成長に関する戦略が策定されるようになった。新経済成長戦略(経産省06年6月)を踏襲した経済成長戦略大綱(同年7月)が嚆矢である。各戦略は、政官民学の知恵の結集か否か曖昧である。経済実態や業界・企業等の実情を十分反映せず、官僚の作文に政治的味付けの印象が強い。これまでの成長戦略は、現実の経済実態から見ると功を奏していない。何故だろうか。成長戦略を考える。


2、現政権の成長戦略の方向~威勢のいい言葉の空ろさ

今回作成される成長戦略(決定26年夏目途)は、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現を目指す。戦略分野に対し、大胆な投資促進、国際展開支援・人材育成・産学連携・国際標準化という多角的観点から総合支援する。戦略分野として17分野を挙げた。AI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリテイ、コンテンツ、フードテック、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靭化、創薬・先端医療、フュ―ジョンエネルギー、マテリアル、港湾ロジステックス、防衛産業、情報通信、海洋である。この例示が、従来の戦略項目の踏襲だと先行き暗い。ただ危機管理投資の範疇に属する造船業・防衛産業の取上げ方が目を引いた。

横断的課題は、新技術立国・競争力強化、人材育成、スタートアップ、金融を通じた潜在力の開放、労働市場改革、介護・育児等の負担軽減、賃上げ環境整備である。これらは、従来から登場する定番メニューである。これまでの取組が不十分だったのか、それとも新規の工夫があるのか不明である。

初回会合の委員資料で、気になる点もあった。成長期待で、イノベーション・エネルギー確保以外に、人への投資、金融期待、賃上げ、働き方(労働)改革等に言及するほか、違和感のある威勢のいい言葉も飛び出した。「成長投資のための国債発行を躊躇すべきでない」、「経済成長に大胆かつ徹底的な投資拡大不可欠」、「強い成長実現のため17分野に留まらず人への投資」、「インフラへの投資対策も重要」などである。成長への経路不明な発言に首を傾げた。イノベーションでは、近時の“王道”AIを鍵とする考えが強調された。

果たしてこれまでの成長戦略の経験や一般的な成長のメカニズムを前提にした場合、夫々適切な意見だろうか。

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