【コラム/11月28日】成長戦略を考える~何故功を奏しないのか

2025年11月28日

5、成長の鍵は、独立投資

経済成長は、過去の経験から民間企業の設備投資が鍵と考えられる。ただ設備投資の中身が重要である。現状の生産を維持するような投資は、利潤投資反応で振幅し、経済変動の要因となるが、中長期的な成長をもたらすものでない。勿論、その増減に財政・金融政策が影響することを否定するものでない。

成長に必要な投資は、独立投資である。利潤の大きさと関係なく、この投資がもたらす利潤を前提に投資を行うもので、企業の創造的活動(企業化精神)で生み出される性質のものである。一般に政府の施策と関係希薄である。

イノベーションを鍵とする独立投資を生み出す企業経営とは何であろうか。一義的には新規事業や多角化に向けた研究開発・企業化や社員の創意工夫を引き出す経営であろう。その際、将来の事業展開に必要な集団の創造性(課題・問題意識明確化、プレッシャー、ブレーンストーミングやコミュニケーション、ひらめきと吸い上げ)を育む体制の工夫も重要である。 企業が長期的視点を軽視し目先の利益・配当・株高圧力に追われ、短期経営志向となり、「無用の用」的な研究開発に資源を投入できないとしたら、極めて厳しいであろう。


6、今、国に求められるもの

経済成長は、企業の成長戦略(独立投資)次第である。今回の成長戦略会議で登場した「成長投資に対する国の財政支出拡大や減税」は、独立投資とほぼ無縁で成長投資促進に効果的か疑問である。

政府がすべきことは、5年程度の中期の経済見通し、経済運営の姿を提示し、民間企業の活動に指針を示す程度で十分である。かつ必要ならば各産業や企業のニーズに担当官庁が対応すればよい。政府として必要な戦略分野があれば、自ら研究開発し、企業化を民間企業に委ねればよい。

つまり国が出来ることは、企業活動の環境づくりに加え、イノベーションの種となる調査・研究開発の充実であろう。例えば国立大学・国立研究所の地道な基礎・応用・開発研究である。その意味で今日の独立行政法人化後の大学・研究所の運営は気に懸かる。研究開発体制で競争資金多用の研究分野の視野狭窄・ポスドク等の雇用不安定の現象は望ましくない。

この時代に付加すべきものがあるとすれば、成長戦略一般でなく、産業政策的な視点である。個々の産業(業種)を本格的に調査分析し、問題・課題を明確にし、将来の方向を示すことである。産業基盤であれば、電力等エネルギー産業のあり方の見直し、素材型産業や加工組立産業の再構築である。個別産業・企業の活動の健全性こそ、成長の鼎であろう。


【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

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