【特集2】電力スマメの通信網を利用 コストを抑制し全件に導入へ
【八戸ガス】
スマメの導入から運用には多くのコストが発生する。八戸ガスは地元の東北電力と連携することで活路を見出す。
青森県八戸市を中心に1万8000件ほどの需要家を持つ八戸ガスは、検針員の人材不足への対応や高齢化対策を目指して、今年1月からスマートメーター(スマメ)を導入している。きっかけは、地域内の電力、水道などのインフラ事業者が参加する事業環境の課題認識を共有するための定期会合だった。その中で同社は、東北電力ネットワーク(NW)が進めていたスマメ導入の話題に注目した。「全件導入によって業務の効率化や検針員不足に対応できることが分かり、当社もスマメの設置を進めようと考えた」。八戸ガスの舘綾子常務取締役は振り返る。
スマメ運用には検針データを取得するための通信費や膨大なデータ数を管理するサーバーが必要となり、多くのコストが生じる。そこでポイントになったのが、東北電力NWが構築したインフラの一部を活用することだった。八戸ガスは東北電力NWに利用料を支払うものの、導入に伴う一連の費用は抑えられる。「メーターメーカーのインフラ活用も検討したが、(東北電力NW)は同じインフラ事業者としてエネルギーの安定供給に努めており当社と共通点が多い。協力してスマメ運用することに安心感がある」と舘常務。こうして、東北電力NWとの実証試験を経て、実運用を始めた。
八戸ガスは、11月時点で約1000台の膜式タイプのスマメを導入し、1カ月に1回、検針データを取得している。未取得などの不具合が生じた際は、東北電力NWとともに現場で確認し、対応することもあるそうだ。
熱中症対策に有効 安全対策にも期待
運用費には表れない効果もある。積雪時や猛暑日には、検針員の転倒や熱中症対策が必要だが、スマメならそうした懸念がなくなるという。さらに遠隔による閉開栓機能を使えば、料金不払いのユーザー宅のガス供給を遠隔停止できる。
舘常務がとりわけ重視するのが状態監視と発報機能だ。ガスの状態を24時間監視しており、ガス漏れなどが想定される異常時には、すぐさま発報して社内のパトライトが鳴る仕組みにしている。舘常務は「お客さまからの連絡を待たずに、事前に異常が分かる点で安全対策にも期待している」という。



