【北海道電力 齋藤社長】新たな価値を創造し 北海道と共に力強く成長する
次世代半導体工場やデータセンターなどの新規立地により、北海道の中長期的な電力需要の見通しが増加に転じた。
この千載一遇のチャンスを確実に捉えるため、GXやDXに着実に対応し、新たな価値を創造。
地域と共にほくでんグループの成長を軌道に乗せる。
【インタビュー:齋藤 晋/北海道電力社長】

井関 10月31日に、泊発電所3号機再稼働後の電気料金値下げ見通しを公表しました。
齋藤 当社は、泊発電所の再稼働後には電気料金を値下げすることをお約束しており、一定の前提を設定し、3号機再稼働後の値下げ見通しを取りまとめました。再稼働に伴う費用の低減効果を反映した上で、今後の物価や金利の上昇による影響を緩和するために、カイゼン活動やDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進などの経営効率化のさらなる深掘りによる費用の削減効果を最大限織り込んだ結果、規制料金では、ご家庭向け電気料金で11%程度、自由料金全体では、平均7%程度の値下げとなる見通しです。
この値下げ見通しについては、公表直後に鈴木直道北海道知事にも直接ご説明させていただきました。知事からは「値下げの内容や考え方について、道民の皆さまへ丁寧に説明していくことが重要」とのお話をいただきました。エネルギー資源に乏しい日本においては「S+3E」(安全、安定供給、経済、環境)の観点が重要です。こうした観点を踏まえた泊発電所の必要性について、道民の皆さまにご理解をいただけるよう、安全対策の取り組みに加え、今回お示しした電気料金の値下げ水準についても説明を尽くしていくとともに、早期再稼働に向け総力を挙げて取り組んでいきます。
運転開始時期を前倒し 安定供給に万全期す
井関 道内の人口減少の影響が懸念されますが、最新鋭の半導体工場やデータセンター(DC)の建設計画などによる需要増への期待が高まっています。
齋藤 札幌市も人口減少に転じ、北海道全体でも全国より速いスピードで過疎化が進んでいます。こうした状況下で、千歳市で建設が進むラピダスの半導体工場が今後量産体制に入りますし、工場の拡張も計画されていると聞いておりますので、地域経済の活性化や電力需要の増加につながると期待しています。また、寒冷地とあってさまざまな企業からDC建設計画のお話をいただいています。
井関 需要増に向け供給体制は万全ですか。
齋藤 電力供給については、まずは現在の電源設備をしっかり使っていくことで賄うことを考えています。これに加えて、石狩湾新港発電所2・3号機の運転開始時期を前倒しすることを決めました。長期的な需要増に向けて、泊発電所の重要性は一層高まってきます。安全性の確保を大前提に、脱炭素電源であり、燃料供給の安定性や長期的な価格安定性も有する泊発電所の早期再稼働を目指し、総力を挙げて対応を進めていきます。今後もお客さまに安定して電力を供給できるよう、当社の電源構成や発電設備の経年化状況を踏まえながら、電源開発、休廃止計画を検討していきます。
井関 3月に「ほくでんグループ経営ビジョン2035」を策定しました。
齋藤 20年に策定した前回の経営ビジョンは、電気事業の自由化や市場化が進むとともに、人口減少や省エネの進展などにより北海道の電力需要が減少していくことを前提としていましたが、ほくでんグループを取り巻く環境が一変したことから、今般、大きく見直しました。この数年の間で、気候変動対策への機運が一層高まるとともに、地政学リスクの発現などを背景に経済安全保障やエネルギー安定供給が重視されるようになりました。国はエネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指しGX(グリーントランスフォーメーション)を強力に推進しています。


