【四国電力 宮本社長】「人の力」を最大化 各事業の収益力を高めグループの成長目指す

2025年12月3日

事業戦略と連動した 人材活用策を推進

井関 人材戦略についても詳しく教えてください。

宮本 労働力人口の減少や就業意識の多様化など人材を巡る社会情勢の変化に柔軟に対応しながら、グループビジョンに掲げる「エネルギーとデジタルで未来を創造する」という目指す姿を実現していくためには、事業成長の原動力となる人材力を強化していく必要があります。新たに策定した「よんでんグループ人材戦略」は、経営戦略の実現に向けて、「会社と従業員が共に成長しながら持続的に価値を創造する」ことを基本方針として明文化するとともに、会社と従業員の双方向のコミットメントとして、従業員のアクション(CREDO)と会社からの約束(PROMISE)を新たに定め、企業文化への定着を目指している点がポイントです。

この基本方針に基づき、①従業員エンゲージメントの向上、②事業戦略に連動した人材マネジメントの推進、③DE&I(多様性・公平性・包摂性)の推進、④安全で健康な職場づくり―を人材マネジメントにおける四つの重点課題に掲げ、具体的な施策を推進していきます。特に②については、あらゆる世代の従業員がやりがいや誇りを持ち、最大限に能力を発揮して活躍できる環境の整備を目的に、年齢などにとらわれない適材の配置・登用の強化や、一人ひとりの成長やキャリア形成支援に軸足を置いた評価制度への移行、年功的賃金項目の廃止、管理者の役割に応じた処遇の拡大などを目指して現在、労働組合と労使交渉を行っています。

加えて、各事業の推進に必要な人材と現状の人材のギャップを埋めるため、新たに導入したタレントマネジメントシステムを活用して人材データを可視化し詳細に分析することで、「キャリア形成支援」「戦略的な人員配置」「多様な人材の確保」をこれまで以上に強化していきます。


50年CN実現を目指す 再エネと伊方最大活用

井関 今年は、約35年ぶりとなる新規の水力発電所「黒藤川発電所」や、坂出バイオマス発電所が運転を開始したことに加え、茨城県の太陽光発電への出資など、順調に再生可能エネルギーを拡大し、30年度目標50万kWを前倒しで達成しました。

宮本 当社グループでは、水力発電所、バイオマス発電所の新設に加えて、既設の水力発電所の出力増強に取り組むとともに、国内外で再エネ電源の新規開発を積極的に展開することで、9月末時点で約75万kWの再エネ電源を開発しています。2月に策定された第7次エネルギー基本計画においても、脱炭素化に向けた政策の方向性として、40年度までに再エネ比率を4~5割とし主力化する目標が示されました。当社としても、より一層の導入・拡大に向け、足元では開発余地のあるため池や工場などの屋根を活用した太陽光発電、風力発電のリプレースなど国内外でさまざまな電源開発に積極的に取り組むとともに、中長期的には大規模な電源となる洋上風力などの開発にも取り組むことで、次なる目標である35年度120万kW、50年度200万kWの達成と、50年カーボンニュートラル(CN)の実現を目指していきます。

一方で、世界的なインフレなどにより事業コストが上昇している中では、今後、投資回収の予見性を高め、積極的な新規投資を促進させる事業環境整備が必要と考えており、国の政策動向にも注視しつつ取組みを進めたいと思います。

井関 中長期的な取組事項として、「伊方発電所の将来像」とあります。

宮本 四国地域の安定供給に必要不可欠な電源であり、低・脱炭素社会の実現の要となる伊方発電所を、今後とも最大限活用するための方策を考えていくものです。①まずは3号機について、運転開始40年までに実施すべき保全活動を定めた長期施設管理計画に基づき高経年化対策などを着実に実施し、運転中保全(オンラインメンテナンス)などを導入して安全・安定運転を積み重ねていくために何が必要か、②また、40年にわたって対応が必要な1、2号機の廃炉について、1号機が27年度から廃止措置の第二段階に移行する計画であることなど、今後、より廃止措置が進んでいくことに対して、最新の技術を活用し、安全かつより効率的・合理的に廃止措置を進めるために何を検討していくべきか、③さらに、最新技術の研究・検討を進めることが人材育成につながり、ひいては3号機の安全性向上にも資するという好循環を生む観点から、これまで行ってきた新型炉の情報収集・研究について、より一層深掘りすることで、安全性向上と中長期的な原子力発電の最大活用にどのようにつなげていくか―といった視点で、幅広く将来像について検討していくことを念頭に置いています。

1 2 3