【東京ガス 笹山社長CEO】経済性見極め成長投資 事業の効率化を進め安定した利益成長図る
主要戦略は概ね達成 成長性・収益性に課題
井関 現行の中期経営計画(23~25年度)の成果をどう評価していますか。
笹山 現行中計で掲げた三つの主要戦略は、おおむね達成できたと考えています。例えばエネルギー領域では、1300万件の顧客基盤を確立し、LNGトレーディングや北米シェール事業における収益拡大を実現しました。ソリューション事業においては、新ブランド「IGNITURE(イグニチャー)」を立ち上げ、家庭・法人向けの商材を拡充しました。一般消費者向け(BtoC)分野では、住宅設備を中心としたソリューションが徐々に伸長しており、今後さらに成長の余地があると見ています。また、企業向け(BtoB)のソリューションについては、主に東京ガスエンジニアリングソリューションズが関東圏にとどまらず、全国および海外で事業を展開。提供するソリューションも、ガス関連だけでなく、ガスコージェネレーションに加え太陽光発電や蓄電池など電気関連のものも広くそろえ、メニューとエリアの両面で拡大してきました。

さらに、変化に強い柔軟な組織体制の構築を目指し、人的資本経営にも注力しています。その一環として、女性活躍推進の取り組みが東京都から表彰されるなど、人材面での強化が対外的に評価されるようになってきたと感じています。しかしながら、「成長性」「収益性」にはさらなる改善の余地があり、次期中計(26~28年度)で追求していきます。
井関 次期中計では、二つの改善点を踏まえ、事業ポートフォリオ管理や資本効率の向上を前面に打ち出しています。
笹山 現行中計で掲げたROE(自己資本利益率)8%という目標は、あくまで通過点と捉えています。30年頃に向けては、ROE10%以上の達成を目指しており、その途中に位置する次期中計期間では、9%以上の収益性・効率性を確保する必要があります。この目標を達成するためには、さらなる利益成長が不可欠であり、次期中計では「収益性」と「成長性」を意識した目標設定を行いました。
また、新たにROIC(投下資本利益率)を指標として導入したのは、各事業が適切にマネジメントされ、資本を有効に活用できているかを示すためです。現行中計ではROA(総資産利益率)を用いていますが、資本市場を含めたステークホルダーに、より理解してもらいやすい指標となります。
井関 3カ年で総額1・1~1・3兆円の新規投資を打ち出しています。成長戦略についてお聞かせください。
笹山 事業別では4300億円をエネルギー分野に配分します。第7次エネルギー基本計画における需要見通しを踏まえても、電気・ガスは堅調な需要を期待できます。今後もデジタル技術を活用しながら効率化を図り、成長分野として引き続き注力していきます。
海外事業には3500億円を投資します。北米のシェールガス事業は収益の柱として着実に成長しており、バリューチェーンを拡大させることで、より安定的な収益確保を目指します。また、海外事業においては、これまでアジア市場で注力してきた複数の案件について、投資を決定する見込みです。北米とアジアを軸に、リターンの高い投資を行い、バリューチェーン全体で収益を確保できる体制を構築していきます。
ソリューション分野には2000億円を投資します。イグニチャーの商材拡充によって売上・利益の拡大を図るほか、設備系ソリューションでは、ウェブ上の販売が順調に伸びており、将来的な人手不足を見据えて、デジタルを活用したソリューション提供を拡大していきます。また、行政向け(BtoG)では、首都圏の90弱の自治体と地域連携協定を締結し、基盤が整ってきました。地域貢献と収益確保を両立させるウィンウィンのサイクルを構築する段階に入ったと考えています。

さらに、都市ビジネスや不動産分野については、キャピタルリサイクルを活用した成長投資を実施していきます。グループ全体の利益に貢献することを目指し、バリューアップが完了したものやエネルギーとのシナジーが小さい不動産については、売却して他の成長投資や株主還元に充てることも選択肢にしています。


