【特集2】利便性とセキュリティを両立 30年代に全戸への導入を目指す
水道スマートメーター完全導入へのロードマップを描く東京都。先行実装の成果とデータ利活用の方向性、課題について聞いた。
インタビュー/向本 圭太郎・東京都水道局総務部企画調整課長
―水道スマートメーター導入の背景と、これまでの成果を教えてください。
向本 都の生産年齢人口は2025年をピークに減少に転じるとの予測です。その一方で最低賃金額は上昇で推移しており、将来も安定的に水道事業を運営するためには人手とかける業務の選択と集中が重要です。
22年のスマートメーター導入開始から24年までの3年間で、都内全800万戸に対し約13万個を実装しました。具体的な成果として、自動検針のみならず、使用水量をグラフで確認できる「見える化」、お客さまが設定した条件を満たした場合にメールで通知する「見守り」、基準となる水量を検知した場合に通知する「漏水通知」を実現しました。これら3つの機能は、同時期にリリースした「東京都水道局アプリ」にも搭載しました。
行政の課題解決を目指す データ活用ルールを整備へ
―今後の計画はどうなっていますか。
向本 25~28年の4年間で合計約100万個の設置を目指します。その後も着実に切り替えを行い、30年代に全戸導入を達成する計画です。
―データ利活用をどう推進しますか。
向本 お客さまやさまざまな関係機関との協働を通じ、データの価値を最大化し、新しいソリューションを共創していきます。特に防災や福祉など、行政の課題解決に資するイノベーションの創出に取り組んでいきたいと考えており、具体的な協議も開始しています。
また、お客さまアンケートの結果を踏まえて、標準的な世帯との使用水量の差異が分かる機能をアプリに実装していきたいと考えています。
―データの活用に向けた留意点は。
向本 データ利活用による利便性の向上と個人情報保護のバランスを取っていくことが重要だと考えています。例えば、水道使用水量のデータを行政の福祉サービスと連携させる事例や、電力分野で実現しているように、災害時に本人の安否確認などに活用するため基礎自治体などにデータを連携させる事例などが考えられます。ですが、本人同意の取り方や、データ利活用に関するガイドラインが十分に整備されていない状態です。
今後は、国の検討会への参画や横浜市、大阪市など他の自治体との協議を通じ、こうした実務上の整理を早期に実現し、社会的に意義のあるデータ活用事例を実現したいと考えています。



