【時流潮流/1月8日】トランプ政権がAUKUS加速へ 原潜供与と対中監視体制を強化
トランプ米政権が米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS」を加速する方針を打ち出した。バイデン前政権が手がけた政策の見直しを含め検討していたが、トランプ氏は改めてゴーサインを出した。従来以上にアクセルを踏み込む方針だ。

提供:米防総省
AUKUSは米英豪の3カ国が2021年に結んだ枠組みで、二本立てで構成される。一本目の柱は、米英両国が手始めに豪州に原子力潜水艦を提供し、将来、豪州自身も原潜を建造する点にある。この原潜は「攻撃原潜」と呼ばれ、通常時は敵の原潜や艦船を監視する。有事の際は敵地や敵艦を攻撃する役割を担う。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの核兵器は搭載しない。
二本目は、量子技術や極超音速技術兵器などの共同研究に取り組むことにある。まずは、米国で就役中のバージニア級原潜を豪州に供与することから始める。次に、豪州は英国と協働してAUKUS級原潜を開発し、自国での建造を目指す。
AUKUSの狙いは中国の抑止にある。中国はすでに米国を抜き世界一の艦隊を擁している。南シナ海に人工島を築くなど、他国の艦船や潜水艦を寄せ付けない接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を進め、南シナ海をSLBMを積む戦略原潜の「砦」にしたい考えだ。米国は中国の野望を阻もうと、攻撃原潜を南シナ海などに派遣して監視活動を実施している。豪州も加え、監視強化を図ろうとしていた。
そうした中、米国で問題が発生した。新型コロナ禍をきっかけとしたサプライチェーンの混乱で、原潜の建造が目標の年2隻ペースを維持できない状況に陥った。そうした中で、最大では5隻もの原潜を豪州に提供するAUKUSをそのまま実施しても大丈夫なのか。米国の安全保障政策にマイナスが生じる可能性はないかという懸念が高まった。
米国第一主義を掲げるトランプ政権発足を受けて、コルビー米国防次官(政策担当)が主導して見直し議論が始まった。10月下旬、AUKUSの存続が決まり、計画を加速する方針がまとまった。
米国がAUKUS加速を決めたのは、三つの理由があると見られる。一つは、潜水艦要員の確保の問題だ。豪州海軍はすでに50人以上の士官が米国での研修を終え、今後は米原潜での乗船研修も本格化する。これが今後10年間は続く予定で、人手不足に悩む米海軍にとっては貴重な人材確保策となる。
二つ目は、豪州をAUKUSに加えれば、米英両国は貴重な原潜補修基地を豪州西岸に確保できる。グアムや横須賀などに加え、新たな補修施設が加われば、潜水艦の運用に柔軟性が増す。
三つ目は、対中監視網の強化が「待ったなし」の状況にあることだ。米国は現在、攻撃原潜49隻を保有し、約6割を太平洋側、約4割を大西洋側に配備している。将来は66隻体制にする計画だが、実現は約30年先の54年となる見込みだ。
一方、中国はすでにディーゼル潜水艦も含めて55隻の攻撃潜水艦を保有している。10年後の35年には80隻にまで増える見込みで、戦力のアンバランスが拡大しかねない状況にある。中国を強くライバル視するトランプ政権は、AUKUS加速を決定した直後、韓国にも原潜保有を認める決定を下した。中国の「前に出る」を覚悟を示したとも言えそうだ。

提供:米防総省


