【特集2水素エネルギー】既存インフラを活用する東邦ガスのターコイズ技術

2026年3月3日

カーボンニュートラル(CN)に向けて大手都市ガス各社が中心となって取り組むメタネーション。既存のインフラ利用がポイントだが、同様の手法はメタネーションだけではない。


東邦ガスが提案した、ターコイズ水素技術の商用化に向けた実証が環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択された。今後、三井物産やカナダのエコナパワーと連携して取り組んでいく。


「都市ガスの主成分であるメタンを、1000℃以上の熱によって熱分解して生成されたターコイズ水素と炭素を同時に取り出す技術。昇温のためのCO2は排出されるが、メタン熱分解の反応では排出されない。既存の都市ガス導管を利用して、CO2排出量を大きく低減した水素を製造できることから、リーズナブルなCNへのアプローチとして期待されている」。イノベーション推進本部技術研究所カーボンニュートラル総括の仲野敦士氏はこう説明する。


また、水素とともに反応で出てくる副産物の炭素はCO2ではなく、「カーボンブラック(CB)」と呼ばれる炭素の固体物。自動車タイヤの補強材、導電性材料、ゴム製品、バッテリー部材などに利用されている一般商品で、年間需要は60万t程度だという。

純度の高いカーボンブラック


一般的なターコイズ水素には触媒を用いるが、炭素に触媒が付着し、炭素の純度が低いという課題があった。今回の東邦ガス方式では、触媒を活用しないことがポイントだ。エコナパワーの触媒不要の装置を活用し、装置内で適切な温度や反応時間を制御しながらメタンを熱分解させることで商品価値の高い高純度なCBを製造する。


一方、水素は工業用用途での利用を想定しており、ターゲットは工業炉バーナー向けだという。「バーナーの燃料となる水素は高い純度を必ずしも必要としない。そうした燃料供給にこの方式は適している」(仲野氏)


仮にCB製造会社にガス導管がつながっていれば、オンサイトでCBや水素を製造・利用できる一石二鳥の手法である。裏を返せば、事業者にとって、水素やCBを供給・販売することで採算性の取りやすい事業モデルを構築できる。

電化不可の産業が集積 潜在ニーズに知見を生かす

東邦ガスの供給エリアの東海地区はトヨタ自動車を中心としたものづくり産業が集積する。金属強化の浸炭工程や塗装の乾燥工程などさまざまな製造プロセスで高い温度の熱を必要とする工場が数多く存在する。これらは、どうしても電化では対応できない。東邦ガスが技術的な知見を備え、既に多くの販売実績を重ねている水素バーナーについても潜在的なニーズが存在する。


こうした分野のCN化に対して、今回のターコイズ水素がどのように貢献していくのか注目される。実証は東邦ガスの技術研究所(愛知県東海市)で行われ、反応設備は2027年1月頃から稼働する予定だ。