【目安箱/3月2日】イラン攻撃がエネルギー需給に与える影響を考える

2026年3月2日

◆ホルムズ海峡の事実上封鎖で原油価格は急騰

イランは経済制裁のため、自由主義陣営の構成する国際石油市場には参加していない。中央アジア諸国や中国など、政治的な関係の強いところに輸出している。ただし、ペルシャ湾とホルムズ海峡は、石油・ガスの産出国の重要な輸送ルートになっている。海峡の通過量は世界石油流通の約2割を占める。周辺諸国からの圧力で、封鎖はしづらいとされ、前回のイスラエルや米国との12日間の短期間の戦闘でも、ホルムズ海峡の封鎖はなかったが、今回は様相が異なる。イラン革命防衛隊が米英の石油タンカー3隻を攻撃したことなどで、原油市場(WTI)は一時1バレル75ドルまで急騰し、2日午後1時現在71ドル前後で推移している。

国際石油市場は供給過剰気味で、この数カ月は1バレル60ドル台で推移。2月下旬になり、イラン武力攻撃の可能性から、上昇基調となっていた。武力行使の後で、WTI原油は一時1バレル75ドルまで急騰し、2日午後1現在71ドル前後で推移している。今後、紛争が長期化し、地域戦争化した場合には、さらなる価格高騰リスクが予想される。

日本は石油の中東依存度が極めて高い。原油輸入の9割以上はペルシャ湾から外洋に出るホルムズ海峡を通る。イランは紛争長期化の場合にホルムズ海峡の完全封鎖を試みる可能性があるが、日本では国家備蓄と民間備蓄を合わせると、240日分の備蓄量があるため、ただちに供給不安に陥ることはない。むしろ、国際石油市場の価格が高騰し、ガソリンをはじめとした燃料油価格に与える影響の大きさが懸念される。一部、アナリストの間では100ドルを突破する可能性も指摘されている。イラン攻撃の影響は、LNG価格にも波及しており。ヨーロッパのLNG価格指標であるTTFはわずか1日で15ドル近く急騰した。「有事のドル買い」で円安にも拍車がかかれば、燃料油のほか、電気・ガス代が急上昇する可能性も否定できない。2日現在の国際エネルギー市況・為替相場を見ると、すでにその兆候は現れつつある。

日本政府は、米国の支援の姿勢を示すと同時に国際エネルギー情勢への影響を注視するとの声明を出した。このような中東の紛争の悪影響を避けるために、日本は1970年代から中東依存度低減、原子力の活用、脱石油、省エネをエネルギー政策の基本にしてきた。第二次世界大戦で、米国ら連合国のエネルギー禁輸により行き詰まったこと、そして70年代の2回のオイルショックがあったためだ。

ところが「喉元過ぎれば熱さ忘れる」のことわざ通り、この国策を政府、行政、民間が最近熱心でなくなっていた。福島原発事故の後で停止した原子力発電所の再稼働に政治は動かなかった。また円安によるエネルギー資源価格の上昇を受け、政府は燃料油代や電気・ガス代に補助金を出し続けてきた。一般家庭の負担を軽減するとの名目だが、化石燃料の使用をうながすことに繋がりかねない政策だ。

そうした人気取り政策によって、エネルギー危機という悪い結果が、今回の武力攻撃によって日本にもたらされないかが心配だ。もう一度、緩んだ政策を締め直してほしい。

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