【フォーラムアイ】情熱を胸に原子力人材育成に挑む 日本原子力発電・和佐尚浩氏
【日本原子力発電】
日本原子力発電で人材育成を担う敦賀総合研修センターの和佐尚浩センター所長。
自らの経験と研修事業で得た知見を踏まえ、原子力人材育成の現状と課題について語った。
高校での就職活動中に目にした「原子力のパイオニア」のキャッチフレーズに引かれ、日本原子力発電への入社を志望した。
競争倍率は高く、半ば諦めていたが「運よく採用された」と当時を振り返るのは和佐尚浩・敦賀総合研修センター所長だ。入社後の配属は敦賀発電所の技術課。廃棄物貯蔵管理などに従事した後、発電課に異動。運転員の教育計画などを担当後、自身も運転員になった。
人材育成や教育については、「若い時から、廃棄物処理業務の運転に携わる委託先と一緒に、ヒューマンエラー防止、所作、安全確認など運転員として必要な教育に携わった」という。

わさ・なおひろ
1964年鹿児島県生まれ。宮崎県都城工業高校電気科卒業、83年同年入社。敦賀発電所技術課、同発電室発電運営グループ、本店総務室人材育成グループ、敦賀発電所発電室長などを経て、24年7月から現職。
教育者の熱意を受けて 現場感覚を再現した育成
2012年、本店の人材育成部門に異動。東日本大震災後、原子力発電プラントが長期停止している中、若手が稼働炉で経験を積むことができないという課題が大きかった。そこで原子力安全推進協会(JANSI)を通じて、運転員を稼働炉へ派遣するとともに、出向により経験を積むという仕組みづくりにも取り組んだ。
さらに、原電が培ってきた研修ノウハウを広く活用するべく、社外への研修展開にも着手する。「最初はどう取り掛かればよいのか分からず、国や事業者、規制機関、学校などの関係機関を回った。そこでさまざまな業界の仕組みを知り、多くの出会いに恵まれた」と語る。
この時期に感銘を受けた出来事があった。福島原発事故後に、福島の学校を訪れた際の経験だ。「夜遅くまで『原子力発電事業者として、事故についてどう考えているのか』と先生に厳しく問われた。最終電車で戻り、資料を作り、翌朝一番で再訪した。真摯に話し合った結果、『今回は原電と一緒にやりましょう』と言ってもらえた。本当にありがたかった。先生方の生徒への強い思い、姿勢に深く胸を打たれた」。この経験は今でも大切な財産と語り、「人を育てる仕事にやりがいを感じた。原子力人材育成は産官学が連携しないとできないと俯瞰的に見られるようになった」と振り返る。
敦賀総合研修センターでは、労働安全教育をはじめ、機械、電気、制御などの保修分野の教育、さらに放射線管理・廃止措置クリアランス制度などの専門教育、運転員を対象としたシミュレーター訓練など、幅広い教育プログラムを展開している。

研修センター内に設置している中央制御室を模擬したフルスコープシミュレーターでは、計器監視、弁操作、ポンプの起動・停止といった実機と同じ操作ができ、実践的な運転訓練が可能だ。本来ならプラントメーカーに制作を依頼するが、開発を通してノウハウを学び、より使い勝手の良い設備とするため、当時の経営層から自社開発する方針が示された。東海第二発電所や敦賀発電所の経験豊富な運転者でプロジェクトを組んだ。ユーザー視点で作り上げたシミュレーターで現在、若手運転者が訓練を行っている。「おかげで現場経験の不足による技量の停滞を防ぐ一助となり、本当に助かっている」と話す。
また、実践力を育成する研修にも力を入れている。その代表例が「現場異常発見能力向上訓練」である。運転員が現場の機器・設備の異常や現場の不適切な状態を発見し、その後の振る舞いまでの感性と技能を向上させるものだ。「ループ設備」を発電所の現場に見立て、過去に発生した不具合箇所を再現し、受講生一人ひとりが巡視し、異常を発見し、対応まで行う過程を確認・評価、指導している。

公開研修と地域連携強化 年間受講者1300名超
研修センターでは、他電力からも多くの研修生を受け入れている。特に原電はPWR(加圧水型原子炉)とBWR(沸騰水型軽水炉)の両方を保有しており、幅広い運転訓練を提供できる点が強みとなっている。また、原子力事業者以外でも受講できる研修も設けており、年間受講者数は社外者を含め約1300人規模となる。海外からの視察や研修にも積極的で、多くの人材が研修センターを訪れている。
地域との連携にも力を入れていて、地元の大学と連携した研修や高校へのエネルギー・原子力に関する講義・実習も行っている。今後はさらに取り組みを広げていく考えだ。
研修センターの今後の課題は、講師の高齢化が進む中での次世代講師の確保だ。「他電力と一緒に研修すれば受講生同士の交流が生まれ、研修の質も高められる。そうした連携の仕組みを築きたい」と将来を見据える。
「原子力人材育成にはカリキュラムや設備、講師などの要素も大事だが、最も重要なのは『情熱』だ。教える者が情熱を持ってやらないと、受けている方に伝わらない」。インフラを支えているという使命を胸に、未来志向で原子力人材育成を進めている。


