【特集2SAF最前線】社会実装に向けて官民が連携 コスト負担の最善策とは
新市場には強制力が必要に 供給義務などの措置も検討
山内 脱炭素化へのコストは、経済学の理屈から言うと、最終的な消費者が負担するのが道理です。それによって消費者が行動を変えて、自分たちの価値に基づいて判断するということですが、SAFの場合はコストが非常に高く、簡単ではありません。そこで、利用者とともに受益者や公共の負担も総動員する必要があると思います。中でも、受益者として重要なポジションにある空港をどう位置付けるかによって、空港には便益がもたらされます。それは、エネルギー安全保障の問題や、航空の脱炭素の制度設計を日本がけん引していく、また新たなエネルギー分野のリーダー的な存在になれると考えると、公的な負担も正当化されると思います。
一方で、技術革新を待つことももちろん重要ですが、そこに至るまでにまずマーケットを作ることがポイントです。それらを踏まえて、将来への展望や課題、論点をお伺いします。
大田 まず、需要の創出では、SAF市場自体が新しいので、一定の強制力を持った形が必要になると思います。そこで、タスクフォースでまとめた基本方針では、供給義務などの規制的措置の検討も柱となっています。一方で、供給側と利用側双方からの努力も必要です。供給側では、元売り事業者にもコスト削減の努力をお願いするとともに、製造支援へのより柔軟な対応も重要になると思います。また、サプライチェーンの上流にある原料の低廉化、安定化も大きなファクターになります。
利用側からのアプローチでは、航空会社へのインセンティブが重要です。例えば、サーチャージのように各事業者が運賃を決めると価格競争が生まれ、うまく価格転嫁できない懸念があります。なので、公的な制度として、利用者に必要なコストをどう分かち合っていただけるかを検討する必要があります。
ロンドンのヒースロー空港では空港が利用者からお金をいただいて、航空会社に助成をしています。今後、50年カーボンニュートラルを念頭に置けば、SAFが一定の廉価な価格で提供できない空港には国際便が就航できなくなることが考えられます。そういう意味では、国際航空の国際競争力を高めていく点でも、空港に間に入っていただいて、航空会社への助成や支援を担っていただくのも一つの手段だと思います。
また、シンガポールでは、国が資金を集めて航空会社に燃料を供給する「SAF LEVY」という仕組みもあります。国が主体になると、公平性や透明性が担保しやすい一方で、空港の競争力という観点では、事業者主体のケースも考えてくべきだと思っています。これからの制度設計に向け、国交省では今春にも有識者会議を設けたいと考えています。
空港で資金調達する仕組み 託送料金が参考になるか
山内 仮に、空港でSAFの促進、マーケットの成立のための資金を集めるとすれば、ある意味では、現在都市ガス業界が進めているeメタンや合成メタンのやり方に近いとも言えます。要するに、空港は下部構造という点で導管供給に近い。eメタンなどもその導入にあたって導管利用の託送料金としてユーザーに負担してもらうという制度ができつつあります。空港においても都市ガス業界の仕組みは参考になるのかもしれません。
大塚 同じ空港を使う航空会社間、また成田、羽田といった空港間でもSAFの料金が同じである観点も必要です。さらに、事業者だけでなく、お客さまにも負担していただくことは非常に重要で、そのためには、料金体系が透明でなければなりません。お客さまが許容して負担できる額であることも重要です。

今、SAFは廃食油やバイオエタノールから作っているため、原料制約が極めて大きいのが現状ですが、合成燃料の段階になると、原料制約がなくなり、国産SAFがより一層競争力を得られるようになるのではと期待しています。また、マーケットとしては、日本だけでなく、東アジアを対象にすることも、国産SAFの競争力を強化する重要な視点になると思います。
山内 日本でサプライチェーンが作られると、アジアのマーケットに出てくる可能性はあると思います。日本が新しいエネルギーを創出すると同時に、国際競争力を持つことで、エネルギー業界が国際的な位置付けを進歩させる力になるのではないでしょうか。

やまうち・ひろたか(右)慶応大大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学。一橋大学大学院商学研究科教授、研究課長、運輸総合研究所所長など歴任。
おおた・けい(中)2003年総務省入省。四度の地方自治体への出向を経験。自治財政局勤務や地域振興室長を経て、24年7月から現職。
おおつか・ひろし(左)東京大学法学部卒、ハーバード大学ケネディスクール卒。1983年運輸省(現国土交通省)入省。2019年5月から現職。


