【記者通信】エネ代補助で大盤振る舞い 補正予算案を国会提出へ

2026年5月27日

高市早苗首相は5月26日、中東情勢を踏まえた2026年度補正予算案を来週にも国会に提出すると明らかにした。総額は3兆円強。一般予備費に5000億円を計上し、夏場の電気・ガス料金支援に充てる。新たに創設した「中東情勢等対応予備費」(仮称)には2.5兆円を計上し、ガソリンなど燃料油価格の補助に活用する方針だ。特別高圧電力やLPガスの利用者への支援などを念頭に、重点支援地方交付金も追加措置する。通常国会で補正予算を編成するのは、ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー価格が高騰した22年以来だ。

電気料金は低圧で、8月使用分は1㎾時当たり4.5円、7月と9月は同3.5円を支援する。標準的な家庭では3カ月で5000円程度の負担引き下げ効果となり、予算総額は5000億円だ。電気・ガス料金補助は23年1月~24年5月まで続き、その後、24年夏・冬、25年夏・冬、そして今年夏と、復活を繰り返している。

料金補助を実施するにしても、今回の補助額には疑問が残る。昨夏は8月使用分が1㎾時当たり2.4円、7月と9月が同2.0円で、予算総額は2881億円だった。今夏はほぼ倍増となったが、高市首相は「電気ガス料金が昨年の水準以下になることにこだわった」とされる。しかし、昨年は参院選前の「物価高対策」だったのに対し、今年は石油の国家備蓄が放出される有事下にある。なぜ今、電気代を昨年以下にまで抑え込もうとするのか、理解に苦しむ。根底には国民の可処分所得が増え消費が伸びれば、税収も自然と伸びる──といった高市氏の単純な経済観がある気がしてならない。

「170円」を誇る高市首相 野党も迎合

燃料油補助金について高市首相は、26日の会見で「米国を含めたG7で最も安い水準である全国平均170円に抑制している」と誇った。「国民、特に地方住民の生活を支えるために必要」との声も聞かれるが、これまでの総額はいよいよ15兆円を超えた。財政状況の悪化は円安につながり、ドル建ての燃料輸入費用は増え、円安はさらに加速する。円安と金利上昇が顕著な今は、財政に気を配り、ガソリンの消費を抑制させ、円安に歯止めを掛けるべき時ではないのか。

自民党の鈴木俊一幹事長が23日、福岡県で行われた自民党の会合で「大変に財政的な負担がかかるもので、今後のこともしっかり考えなければならない」と述べるなど、ここにきて党内では補助の縮小や制度の見直しが必要との声が高まっている。だが、遅きに失した感は否めない。

今回の補正予算の多くは予備費の積み増しだ。予備費は内閣の責任で迅速に支出でき、国会の承諾は支出後となる。中道改革連合などの野党は「予備費ではなくきちっとした経済対策を」と反発するが、中道、立憲民主党、公明党の3党が25日、政府に提出した緊急提言には「燃料油補助継続のための財源補填」が盛り込まれていた。「もっと出せ」との批判は起きても、「本当に必要なのか」という意見は出てこない。

野村総研エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は25日、自身のコラムで〈生活が強く圧迫される中低所得層に絞った補助金とし、全体の支出規模を抑えるべきではないか。所得制限付きの補助金が技術的に難しいのであれば、電気・ガスの補助金とともにガソリン補助金の金額を抑え、同時に低所得者向けの給付金を新たに検討してもよいのではないか〉と綴った。15兆円を投じてもなお、永田町でこうした意見が主流にならない。

重要案件で質問1社だけ マスコミ嫌いの高市首相

ここにもう一つ、重要な問題がある。年度予算が実施されたばかりでの3兆円規模という大型の補正予算編成という極めて重要な事案にもかかわらず、高市首相の会見では、幹事社の1社にしか質問の機会が与えられなかったことだ。今回に限らず、質問数に上限を設けたり、記者がぶら下がりを希望しても、要望が通らなかったりと、官邸周辺では高市氏の「マスコミ嫌い」を彷彿とさせる対応が目立つ。歴代首相には見られなかったことだ。各種世論調査では、「政府は石油の節約を呼びかけるべきではないか」との声が高まっているが、高市首相は「石油供給は足りている」を繰り返すばかりで、財政、債券安、円安などの重要問題を含めて国民の不安に丁寧に応える姿勢が欠けている。

記者会見には一部、自分の意見を延々と主張したり、会見と全く関係のない質問をしたりする厄介な記者も参加するのは事実。ただ、こうした記者の質問を巧みにかわせれば、首相の評価もいっそう高まるのではないか。