【特集2 分散型エネルギー事情】AIを使った熱供給の運転自動化に挑む丸の内熱供給

2026年7月3日

日本有数のビジネス街、東京都千代田区の大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリア。地下には配管が張り巡らされ、オフィスビルなどに冷暖房、給湯用の温熱や冷熱が供給されている。その熱供給を担うのが、丸の内熱供給だ。内幸町・青山エリアを含む全23カ所の地域熱供給プラントを所有。そのうち5地点を監視拠点とし、オペレーターがエリアごとの設備運用・管理を行っている。そんな同社は2月、プラントの運転自動化に向け、AIを活用した試験運用に着手した。


採用したAIは、プリファードネットワークス社が開発したプラント自動化AIソリューション「PlantPilot」。過去の稼働データと運転ノウハウを学習し、センサーデータをもとに最適な操作の提案を行う役割を担う。現在は、大手町ビルサブプラントのターボ冷凍機に先行導入し、実稼働データをAIに読み込ませるガイダンス試験を実施中だ。運用開始以降、順調に稼働中。これから冷熱需要がピークを迎える夏季が、本格的な評価の場となっていく。2027年度中に本格稼働する予定だ。

熱需要が大幅増の見込み 人材不足問題に先手の対策

安定供給には、オペレーターの経験とノウハウが不可欠。設備のインバーター搭載・非搭載機の使い分けをはじめ、電力会社との契約内でピーク電力を超えない範囲での電力使用量などを管理しながら、需要変動に応じて冷凍機の温度設定や稼働台数を調整。需要家ごとの使用状況に合わせて熱供給している。


こうした複雑な判断を求められるオペレーター業務の自動化をなぜ進めるのか。小林伸和常務執行役員は、「日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少しており、将来、オペレーターの担い手が減ってくる。そこで、人材不足をAIで補完する形を目指すことにした」と説明する。とはいえ、完全な無人化ではなく、人がやるべき業務はオペレーターが担い、それ以外の業務については、AIの活用を進めていくという。また、大丸有エリアは現在、大規模再開発の真っただ中。将来的に熱需要の大幅な増加が見込まれ、プラントの増設が必要になる。開発技術部の八木秀隆副部長は「プラントが増えても、AI導入やDⅩ推進によって業務負担を減らし、現在の運用体制を維持し高度化していきたい」と話す。


同社はすでに冷凍機との熱交換を行うクーリングタワー(冷却塔)の運転に新菱冷熱と共同開発したAIシステムを採用し、運用の最適化による省エネを実現している。今回の運用試験で自動化による安定供給を目指しつつ、将来的には、既存のAIシステムとの融合を図り、運用の効率化にもつなげていく考えだ。さらに、「今後は複数プラントの連携によって日本最大級の熱導管ネットワークを構築してきたノウハウを生かし、業界全体の課題解決にも貢献してきたい」と小林常務は意欲を示す。 AIを使い安定供給を図る今回の取り組みは、地域熱供給業界の新たなモデルとなる。

試験運用を実施中のターボ冷凍機