【JERA 奥田社長】ミッション実現へ 歩み止めることなく さらなる成長目指す
サプライチェーンの多角化やトレーディング機能強化の重要性が、今般の中東情勢を巡り再確認された。同時に将来の電力事業の在り方を見据え、さらなる成長に向け歩みを加速させていく。
【インタビュー:奥田久栄/JERA社長CEO兼COO】

井関 中東情勢を巡っては、6月に米国とイランが停戦にむけた覚書を交わしましたが、まだ状況は不透明でエネルギー資源価格の値動きも流動的です。
奥田 多くの人の予想を超え、ホルムズ海峡封鎖が現実のものとなりましたが、改めて思うのは半世紀前の危機の教訓が生きたということです。第一次オイルショック発生当時の日本は電気の約73%を石油で発電し、その8割近くが中東産で、電力需給は不安定な環境でした。その後の努力により電源や燃料調達先の多様化を進め、今はLNG、石炭、原子力、水力を含む再生可能エネルギーを主電源としてミックスしています。電源のLNG比率は3割強で、当社のLNG調達のうちホルムズ通過分はわずか約5%。ここまで大胆に構造を作り変えた国は他になく、日本は今回、少なくとも電力の安定供給は脅かされませんでした。
ただ、残念ながらマーケット価格はコントロールできません。電力会社は夏冬の需給安定化のためにスポットLNGを調達し、またLNGの長期契約は基本的に原油価格に連動して3~6カ月遅れで電気料金に反映されます。こうした要因で7月以降、電気料金が上昇することとなり、お客さま負担をいかに抑えていくか、知恵を絞っています。
井関 その打ち手とは。
奥田 基本的に長期契約より割高で、情勢が不安定なほど跳ね上がるスポットの数量をいかに抑制するかがポイントです。まず、普段はオープンになっていないLNGの在庫情報を緊急時に国が確認した上で、事業者間で融通し合う環境の整備が重要となります。さらに容量市場のリクワイアメントで稼働を抑制している非効率石炭火力をフル稼働することで、春秋のLNG消費量を抑制できます。こうした打ち手を3月の官民連絡会議で当社から政府に要望し、政府もすぐに動きました。
やはり燃料を貯蔵できる石炭火力は安全保障上欠かせず、設備を残していたから先述の対応が可能となりました。有事を含めた石炭火力の使い方を今一度考えるきっかけになったと思います。しかも当社の碧南火力は運用上の工夫などで200以上の炭種を焚くことが可能です。
井関 そうした取り組みでコストはどの程度抑制できますか。
奥田 一定の試算を前提にすると、国民負担全体で見て、LNG火力のみの場合と、LNG火力と石炭火力を併用させた場合とでは年間3兆円ほどの差が生じます。だからこそアンモニア転換やCCS(CO2回収・貯留)など低炭素化しつつ、石炭という焚口は残すポリシーを持ち続けるべきです。


