【JERA 奥田社長】ミッション実現へ 歩み止めることなく さらなる成長目指す
電気事業モデルの転換期 DCごとのニーズに対応
井関 電力需要増の要請に応える上で、何を重視しますか。
奥田 今後需要が伸びると言われている産業は、データセンター、半導体、電炉といったごく一部ですが、一つひとつの規模が巨大という構図です。それを踏まえ、お客さまのニーズに応じて電力供給していく姿勢が求められ、電気事業モデルの転換期に入ったと感じています。他方、そのための資機材コストが急騰し、先述の産業以外の需要は減っていく中、コストをだれがどう負担するのかも重要な論点です。当局とも話し合いながら、日本にとって重要な産業に対応するためのモデルを作り上げる必要があります。
井関 今後の戦略の柱の一つとなるデータセンター事業のポイントはどこにありますか。
奥田 データセンターの用途は大別すると、企業のクラウド用、ハイパースケーラーのデータ学習用、その学習データを用いた推論用の3カテゴリーがあり、電気の使い方や求められる質は全く異なります。企業クラウドは各社のニーズに応じて、極端な例では月に1回だけ使うこともあります。学習用は絶えずデータを蓄えるのである程度の稼働率となり、電力はベース的な運用が多くなります。そして推論用はピークが立ち続ける、といった具合です。
他方、迅速な供給に向けて、例えば発電所の横や用地の中にデータセンターを立地するチャレンジを行っていますが、品質面も考慮すべきポイントです。電圧や周波数変動が小さい高品質な電気を要する場合は、マクロで需給管理する系統電力でないと応えられません。米国で検討されているようなオンサイトの発電所一つで追従しようとすると、どうしても品質にばらつきが出ます。こうした点について、データセンター事業者とコミュニケーションを取りながら、それぞれ最適な供給スタイルを提案していきます。
井関 そうした構造変化が起きる中で必要な供給力や調整力を確保する上で、市場の役割の重要性が増しています。需給調整市場の新たな運用開始や長期脱炭素電源オークションの進展などについて意見はありますか。
奥田 安定供給の確保には三つの要素が必要です。十分な設備、十分な燃料、需給バランスを絶えず確保することであり、この3点目に関わる需給調整市場については改良の余地が大きいと感じています。需給バランスを取るため、例えば発電所では出力調整をしても壊れにくい設備にする、あるいはすぐ直せるようにし、燃料の数量変動にも対応します。こうした運用のためのコストが確実に回収されなければなりません。
また、先進国の中でも日本がいち早く長期脱炭素電源オークションを導入したことは慧眼だと思いますが、他市場収益の9割還付ルールは課題があります。安定供給の3要素のうち、必要な燃料を確保するコストはスポット市場で賄うのに、その利益が削られると、コストを十分回収できない可能性があります。3要素がビジネスとして成り立つかという視点を持ち、制度的欠陥には必要な修正をかけていくべきでしょう。

設立時の目標は達成 事業再編で次の局面へ
井関 責任体制の明確化のため六つの事業に再編成する方針を公表しました。原子力を除く総合エネルギー事業体としてさらなる成長を目指す方向性が鮮明化したと感じています。IPO(新規株式公開)なども検討されているかと思いますが――。
奥田 当社のミッションは、世界のエネルギー問題に最先端のソリューションを提供することです。エネルギー問題の解決は一言で言うと3E(安定供給、経済性、環境性)の同時達成ですが、国ごとに異なるベストな解決策を提案・実行するためには、当社が多様な選択肢を持たなければなりません。LNGや石炭だけでなく、水素・アンモニア、再エネ、バッテリー、CCSなど全て提供できる体制が必須です。ただ、事業によってカルチャーやノウハウは違います。全て本社で意思決定するのではなく、各領域のプロが責任を持って執行する体制を目指しています。
JERAグループがそうした事業の集合体となり、領域や規模を拡大していく中で、リスクキャピタル(自己資本)がやがて足りなくなり、増資が必要になると認識しています。IPOはその選択肢の一つであり、ベストな方法を検討していきます。
井関 結論は遠からず出ますか。
奥田 少なくとも増資が10年先との考えは持ち合わせておらず、数年の間に必要だとの共通認識は持っています。19年に東京電力・中部電力の燃料・火力発電事業の統合が完了したころに自然に稼げる利益は800億~1000億円ほどでしたが、今はさまざまな事業のシナジー効果で、当初目指した2000億円を稼げる事業体となりました。JERAのミッションを果たすべく歩みを止めないよう、株主と対話を重ねていく所存です。
対談を終えて
国内最大の火力発電・燃料調達会社から、再エネ発電やトレーディング、電力・ガス販売も含めた総合エネルギー事業会社へ―。2015年4月の設立から11年を経て、同社の方向性は鮮明になった。足元ではイラン情勢が影を落とすが、経営ポートフォリオの多様化・多角化で影響は軽微だ。目指すは、世界最先端のソリューション提供。株式上場も選択肢に据え、経営体制の強化に取り組んでいく。
(聞き手:井関晶/本社社長)


