【コラム】文献調査受け入れ表明の常陸大宮市 鈴木市長の英断に敬意
かつて一部地域が私の選挙区だった常陸大宮市の鈴木定幸市長が、経済産業省による高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地選定のための文献調査の申し入れを受け入れることを表明した。まずは政治家として勇気ある決断をした鈴木市長に心から敬意を表したい。

各メディアは一斉に「核ごみ」などと大見出しを打って、明日にでも最終処分場がやってくるようにセンセーショナルに報道し、気の早い反原発団体が市役所前で抗議活動を行うなど地元でも賛否両論のさまざまな反応が起きているが、まずは冷静に事実を確認しなければならない。今回、常陸大宮市が経済産業省から申し入れを受けたのは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を選定する前段階としての文献調査であり、これを受けたからといって常陸大宮市が最終処分場になると決まったわけではない。文献調査のあと実際に深部までボーリングをして地質などを調べる概要調査を行い、さらに施設を建設するための精密調査を行った上で、処分場は決定される。当然、それぞれの段階で地元の意向を確認した上で進められるので、立ち止まったり、引き返すことは可能だ。
現に使用済み燃料が大量に存在する以上、近いうちに必ず日本国内に最終処分場を作らなければならないことは、原子力に対してどのような立場に立とうが、受け入れなければならない事実である。超長期間保管しなければならないものであることから、可能な限り多くのさまざまな地点を調査して、リスクを詳細に分析し、地元や国民の理解を得ながら最適な地点を選定しなければならない。反原発派は「トイレなきマンション」と言って批判するが、その「トイレ」を作ることには妨害こそすれ協力しようとはしない。
大局に立ち政治的リスクを自ら取った鈴木市長
鈴木市長は、「お金の問題がある」と取材する報道陣に本音を吐露したという。文献調査を受け入れるだけでその自治体には20億円が交付される。私はこのような札束で頬を叩くようなやり方は、本来好きではない。かつて私が若い頃、電源開発特別会計立地勘定という原発などの立地促進のために交付金を交付する会計のとりまとめ役をやっていた時、北海道幌延町と岐阜県瑞浪市にある科学技術庁所管の施設の設置に出されていた地元への交付金をカットして、大騒ぎになったことがあった。この施設は深地層を研究するための施設で、地元との約束で放射性物質を搬入しないことになっていたから、「迷惑施設ではない」と主張したのだ。(くだらないことだが、私のこの仕事は通産省内で高く評価された。)
今回の文献調査も、文献で調査するだけだから何ら地元合意の必要性などの法的制限はないし、地元に知らせなくてもやり得るものであるから、本来は交付金を出すようなものではないと考える。昨今の社会情勢を考えれば、選挙を控えた自治体の首長が文献で調査することすら受け入れることは困難であるのであろうから、やむを得ないものなのだろう。むしろ経産省は、文献調査の段階から多くの自治体を巻き込んで、データや事実を示しながら対話を積み重ねて合意を取る方法を選んだのだろう。それでも、受け入れる自治体はほとんどない。記者会見の場で鈴木市長は、「国策に貢献できるなら、手を挙げる価値がある。約50年にわたり安価なエネルギーを享受してきた一方、副産物を知らんぷりするのは日本人としていかがかと」とおっしゃっている。大局に立った立派な認識だ。日本のエネルギー政策の核心を真正面から受け止めて、政治的リスクを自ら取った鈴木市長には、改めて心から敬意を表したい。ちなみに、鈴木市長は私の高校の先輩。校訓は「至誠一貫」「堅忍力行」である。
私がこれからやれることは、自分なりの言葉で正確な情報を発信し、地元住民や国民の皆さんの冷静な判断に資する材料を提供することくらいだ。原子力や核と言ったとたんに、幟を掲げてパブロフの犬のように反応する特定イデオロギーの反対運動とは違う、地道な市民運動に役立ちたい。


