【西部ガスホールディングス 加藤社長】人的資本と結合力が軸 現場実装で成長循環へ「伝わる経営」を深める
この数年間で収益性の低い事業の整理や撤退を進め、総合エネルギーや不動産といった四つの事業領域に、成長への投資を集中させる体制を築いた。
人への投資によって組織能力を高め、成長の循環を作り上げようとしている。
【インタビュー: 加藤 卓二/西部ガスホールディングス社長】

エネルギー企画部部長、18年執行役員、20年常務執行役員、21年取締役常務執行役員などを経て24年4月から現職。
井関 7月28日に熊本県熊本地方で震度7の大規模地震が発生しました。西部ガスの供給エリアでは、地震の規模に対して被害規模が小さく翌日には復旧しました。10年前の教訓が相当生きたのではないでしょうか。
加藤 今回の地震では、震度7という非常に大きな揺れを観測しましたが、お客さまへの供給影響を最小限に抑え、翌日には復旧することができました。過去の大規模災害で得た教訓を踏まえた、設備の耐震化や供給停止方式・基準の見直し、復旧訓練の継続などの成果が大きく表れたと考えています。また、発災直後から現場社員や協力会社が迅速かつ的確に対応してくれたことも重要な要因でした。一方で、自然災害は想定を超える形で発生する可能性があります。今回の対応を改めて検証し、新たな課題を洗い出すことで、さらにレジリエンス(強じん性)の高いエネルギー供給体制の構築に努めていきます。お客さまに安心してガスをご利用いただけるよう、不断の備えを続けていきます。
ROICを成長の手段に 四つの領域へ集中投資
井関 昨年度スタートしたグループ中期経営計画(2025~27年度)では、新たな財務目標にROIC(投下資本利益率)を掲げています。
加藤 当社ではROIC経営を単なる財務規律や過去の投資を評価する指標ではなく、将来の成長につなげるための経営手法として位置付けています。これまでの多角化経営により確かに事業のすそ野は広がりましたが、ポートフォリオの中に低収益な事業が混在することになってしまいました。この数年間で収益性の低い事業については整理、撤退を進め、事業ポートフォリオは着実に筋肉質になってきています。とはいえ、バランスシートには依然として低収益な資産が存在しており、資本効率を一層高める観点から、保有資産を精査し、より収益性の高い分野に厳選して投資を振り向けるべく選別を行っているところです。
井関 それと並行して、経営の根幹として重視されているのが人的資本経営ですね。
加藤 人的資本経営とは循環型成長戦略でなければならないと考えています。福利厚生の充実や賃上げだけすれば良いのではなく、人への投資によって、組織能力やエンゲージメントを高め、他社が容易に模倣することができない競争優位性を生み出さなければなりません。その結果として、資本効率が向上し創出したキャッシュを再び社員の処遇改善や将来の成長投資に振り向けることでさらなる成長の循環を作りだすことができます。
井関 成長に向け重点事業領域として見据えているのは。
加藤 現在、グループの成長領域を四つの柱に整理し経営資源を集中させています。中核である総合エネルギー事業、安定収益を支える不動産事業、成長に挑戦するひびきLNG基地を活用したグローバルエネルギー事業、そして地域のお客さまの暮らしに寄り添う食関連事業とウェルビーイングです。少なくとも私の在任中はこの四つを成長の柱にしていく考えです。その戦略の基盤として①資本コスト経営②サステナビリティ経営③グループネットワーク経営④人的資本経営を位置付けており、これらを一体的に推進することで、持続的な成長と企業価値の向上を目指していきます。
井関 成長のエンジンとなるのがグローバルエネルギー事業ですね。
加藤 大手エネルギー会社のような海外の上流権益獲得を目指すのではなく、ひびきLNG基地を活用した独自の成長を目指しています。LNGの積み替え輸送や、LNGバンカリング、「ガッシングアップ/クールダウン(GUCD)」、LNG船向けサービスなど、基地インフラを活用した収益機会の拡大を目指しており、GUCDは昨年も非常に高い収益を生みました。さらに3号タンクが稼働する29年以降は、需要期と非需要期の需給ギャップを活用したLNG運用が可能になります。ベトナムなど成長市場でのインフラ案件への厳選した出資・参画を進めながら、ひびきLNG基地のポテンシャルを最大限引き出していきます。昨年4月にJERAとひびきLNG基地の戦略的活用で提携し、これを機に入社4年目の優秀な若手社員を出向させました。最先端のグローバルエネルギー事業を現場で学び、将来の事業を担う人材への成長を期待しています。



