IEA「世界エネルギー見通し」公表 「電化技術」で日本の強み生かす時

2022年1月13日

【世界エネルギー見通し】

 国際エネルギー機関(IEA)が2021年10月に発表した「世界エネルギー見通し(WEO2021)」。発表の際に、IEAのビロル事務局長は「COP26において政策決定者のガイドブックとなるようなエネルギー分野の進むべき道のりに必要な意思決定のポイントをまとめた」と話し、同時にIEAは今後のエネルギー事情への理解を深めようと、インターネット上に無料でアクセスできるようにした。

今回のWEO2021では「厳しいながらも50年までにCO2排出量のネットゼロへの達成可能な道筋シナリオ」「各国が既に公約した達成シナリオ」「現時点で各国が実施している政策を反映したシナリオ」―の三つのシナリオを提示している中で、CO2削減対策技術として随所に「電化」や「ヒートポンプ」というワードをちりばめていることが特筆される。

「電源の電化と最終消費段階の電化」「電化はあらゆるシナリオで重要な役割を果たす」「化石燃料を使った暖房様式が課題であり、既存暖房設備の更新時期にヒートポンプ導入のインセンティブを各家庭へ与えることは大切な施策」「産業分野における低温度帯域の電化推進」――などだ。

電化をちりばめた世界エネルギー見通し

日本が主導するHP技術 細やかな技術力で脱炭素へ

では、日本の産業はどのように挑むべきなのか。

一つはヒートポンプ(HP)技術の世界展開であろう。「家庭用エアコンに代表されるヒートポンプ技術は日本が世界をリードしている」とは誰もが口をそろえること。同様の技術によるエアtoウォーター、つまり日本でいうところのエコキュートに類する技術製品は、日系企業によって、欧州でも導入が進んでいる。

一方、ルームエアコンのような汎用品が主体の家庭分野と違って、特殊なエンジニアリング技術を要する産業分野はどうか。こちらも、日本の技術力を生かせる領域だ。昨今、中国や東南アジアでは、日本の大手エネルギー会社が、現地の多様なニーズに応えながら、エネルギーサービスを通じて省エネ・低炭素化を進めるケースが増えている。

以前、中国企業関係者が言ったセリフがある。「ヒートポンプ排熱の利用など考えたこともない。そういう発想は全くなかった」。例えば、日本の常識である排熱利用技術は省エネ・脱炭素化を進める最短の方策である。そんな「日本の技術力」が広く認知されれば、日本企業が脱炭素化に向けて活躍する場面はもっと増えるはずだ。