【特集3】災害対策で活用する独自モデル 公共インフラの保守・点検も
【君津市役所】
市による独自のドローン活用を展開しているのが千葉県君津市だ。6月上旬に開催された、全国自治体ドローン首長サミット(主催:経済産業省、NEDO)では、石井宏子・君津市長自らがドローンを活用した橋梁点検「君津モデル」をテーマに講演するなど、ドローンを使った地域の課題解決に向けた取り組みを、ユニークな仕組みで進めている。
君津市とドローン―。きっかけは2017年にさかのぼる。君津市は千葉県内で市域が市原市に次いで2番目となる約318㎢の面積を有する。そして、その3分の2の面積が山間部を含めた森林エリアだ。とりわけこの山間地域では、以前からビル建設や土木工事、コンクリート製品の材料として、良質な砂利が採取されていた。そしてこの山を切り崩した平場に、クラウドサービス事業を手掛けるアイネット社が、「ドローン飛行場『DDFF:DreamDroneFlyingField』」を17年に整備したのだ。東京ドーム3個分の広さを持つ関東最大級のこのフィールドは、ドローン飛行訓練場、ドローン実証実験(PoC)環境を実現する施設である。
「千葉県君津市では、地方創生に向けた先進技術の活用を模索、検討する中、ドローン飛行場が開設されたことを契機に、さまざまな分野でドローンを導入した街づくりを進めています」。市の企画政策部政策推進課の重田友之・係長は説明する。
君津市では、アイネット社のドローンフィールドの開設に伴い、災害対策にドローンを活用できないかと考え、「災害時等における無人航空機による協力に関する協定」を結んだ。災害時にアイネット社からドローンのパイロットを派遣してもらい、ドローンからの空撮によって、被害状況を正確に、そして広範囲に把握できるようにした。
また、地図情報を手掛けるNPO法人クライシスマッパーズ・ジャパン社とは「災害時における無人航空機による調査・協力に関する協定」を締結。災害時にドローンを飛ばし、高度100m以上の上空から市の被災地域を空撮し、撮影画像をフリーマップに投影した地図データを提供してもらうことで、情報収集体制の充実強化を図っている。
ドローン活用 橋梁点検『君津式』
さらに、君津市ではドローンを活用した、安全・安心なインフラを維持していく仕組みの構築に取り組んでいる。橋梁点検だ。橋梁は14年から5年に一度の定期点検が義務付けられており、多額の費用がかかっていた。効率的で効果的な点検が求められている中、その解がドローンというわけだ。そこで、君津市では、前述のアイネット社などと連携して、全国に先駆けたドローン活用による橋梁点検の実証実験を19年から開始し、20年から本格運用している。
従来、橋梁点検業務を外部委託していたが、現在では、ドローンパイロットの民間資格を持った市の職員がドローンを使って撮影し、管理している。ドローンで撮影した映像は何度も確認することが可能であり、今後、AIによるひび割れの検知を組み合わせることで見落としを防ぎ、点検精度の向上を目指している。
市内に開設されたドローン飛行場
【特集3】PVパネルを低コストで自動清掃 海底スキャンで洋上風力調査も
【WSP】
最先端技術を搭載したロボットやドローンの製品開発を担う産業用自動化機器メーカー、ワールドスキャンプロジェクト(WSP)。同社は、「SFの世界を現実のものにする」をミッションに掲げ、これまで先駆的な製品を開発してきた。そんなWSPが次の目標に据えるのは持続可能な社会を構築すること。そのために三つのサービスを展開する。
一つ目は昨年、メディア各社に紹介された「3次元バーチャル修学旅行」を含む、小中高生へのドローン教育だ。コロナ禍で修学旅行に行くことができなかった学生向けに、VRゴーグルを通して360度の視野で、エジプトのピラミッドなど、世界遺産を見ることができるサービスを提供した。
実はこの「3次元バーチャル修学旅行」、同社が実際にエジプトに足を運び、ドローンを飛ばしてピラミッド全体を撮影したものが素材になっている。その画像を3Dスキャン技術で映像化し、VRゴーグルを付ければ、まるで現地にいるかのようにピラミッドを見ることができる。ドローンによるピラミッドの3Dスキャン撮影に成功したのは、同社が世界で初めてだという。
3次元バーチャル修学旅行とともに、ドローンの操縦方法の授業、ドローンで環境問題などの社会課題を解決する方法を学ぶSDGs(持続可能な開発目標)講座も外部講師を呼んで手掛ける。
同社管理部の新井大和氏は、「わが社は『最先端技術を用いて地球をスキャンする』を大目標に掲げています。われわれの技術でデジタル空間上にアーカイブしたピラミッドなどの世界遺産を全国の小・中・高生にお見せすることで、歴史教育にも貢献することができると確信しています」と自信をのぞかせる。
同社がスキャンするのは、地上にあるものだけではない。なんと、海底の地形や沈没船までスキャンしてしまう。WSPが開発した水中3Dスキャンロボット「天叢雲剣(MURAKUMO)」は、世界で初めてミリ精度の3Dモデルの作成を可能にし、水中の詳細な様子を数十㎞にわたる広範囲で可視化する。
天叢雲剣が活躍するのは、主に再生可能エネルギーの分野、特に洋上風力発電設備の施行前だ。天叢雲剣で海底の地形を測り、理想的な洋上風力設置地点を予想し、海底ケーブルを引っ張る経路を提案する。また、環境への配慮から生態系を保存する地帯も3Dモデルを基に決めることもできる。海底ケーブル敷設後は、定期点検も天叢雲剣で行うことができる。
この優れた水中3Dスキャンロボットは、島根県美保関沖で撮影した深海構造物が、1927年に沈没した旧日本海軍の駆逐艦「蕨」だったことも明らかにした。水中スキャン技術は、隠されていた歴史も明らかにした。
太陽光パネルを自動清掃 運営コスト削減にも貢献
最後に、今後も設置の拡大が予想される太陽光パネルの、自動掃除ロボット「ソーラーサンバ」を展開する。
これまで太陽光パネルの清掃はほとんど人力で行われていた。しかし、特に面積の大きい太陽光パネルを清掃する際は、人力ではムラが発生し、時間経過とともに清掃員が疲れ始め、作業効率も低下する。ロボットであるソーラーサンバは疲れ知らずで、1MWのメガソーラーをわずか2、3日で清掃する。
太陽光パネルには鳥のふんや花粉、落ち葉などの汚れがこびり付きやすく、汚れが付いたままだと発電効率が悪化する。こまめに清掃が必要だが、人力ではコストもかさみ、消費水量も多くなってしまう。
ソーラーサンバは、非常に「エコ」な清掃用具だ。やわらかなナイロン製ブラシが付いており、毎秒20回転しながら時速3~5㎞で横移動する。非常にシームレスに動くため、消費水量は人力の約8分の1で済む。
ソーラーサンバを使用することで太陽光パネルが本来持っている機能を維持し、汚れをこまめに落とすことで、発電効率を向上させる。ソーラーサンバは資産としての太陽光パネルを保全するために、「マスト」なアイテムなのだ。
設立以来、最先端技術を用い、あっと驚く製品やサービスを展開してきたワールドスキャンプロジェクト。今後、脱炭素社会の到来に向け、持ち前の技術力で「SFの世界を現実のもの」にする。
【特集3】送電線特有の条件にも対応 自動点検システムを共同開発
【ブルーイノベーション、東京電力HDなど】
東京電力ホールディングス(HD)、東電パワーグリッド(PG)、テプコシステムズと、ドローン・ロボットサービスプロパイダーのブルーイノベーション(BI)は、ドローンで送電線を自動点検するシステムを共同開発した。
本システムの核となる技術が、BIの開発した「Blue Earth Platform(BEP)だ。BEPは、ドローン、自律型ロボットなどさまざまなデバイスやアプリケーションを連携させて運用するプラットフォームで、地図情報や接続機体の位置情報、センシングした各種情報のほか、外部APIとの連携も行える。異なる用途のソリューションを同一のプラットフォーム上で一元管理できる特長がある。
倉庫管理や工場生産、オフィスの清掃、ドローンによる物流や警備、橋梁点検サービスに求められる技術はある程度類型化できるため、BEPでは各サービスに必要となる技術をパッケージ化。各種パッケージをカスタマイズすることでさまざまな用途に対応できる。
実際、ある石油精製プラントではBEPを基にしたドローン点検が採用されている。BIの熊田貴之社長は「当社が持つ技術パッケージを対象物に合わせて選択することで、システムの開発スピードは速くなり、コストも下げられる」とBEPの強みを語った。共同開発では線形の対象物をセンシングする技術を、送電線の点検向けにカスタイマイズして適用した。
技術選定にも試行錯誤 国内外の電力会社に展開
送電線の点検は、①鉄塔に登る宙乗り点検、②高倍率の望遠鏡による地上からの目視点検、③ヘリコプターから送電線を撮影―から、点検場所に適合する方法で行われるのが主流。しかし①の場合、点検中は送電を停止しなければならず高所作業は危険が伴う、②は安全かつコストも安いが、高倍率の望遠鏡で複数張られる送電線のうち一本を目視で追う点検は検査員の技量に大きく左右される、人の足で入れない場所では③が用いられるが、①②と比べてコストが必要―などのメリット・デメリットがある。東電HD経営技術戦略研究所技術開発部の岸垣暢浩氏は「作業の省力化と点検の精度維持を両立するために、BIとの協業を考えました」と説明する。
BIもコア技術を持っているとはいえ、実点検業務に落とし込むために試行錯誤が繰り返された。
送電線は鉄塔間で真っすぐ張られているわけではなく金属が温度によって微妙に収縮するため、たるみを持たせて張られている。気温の変化で送電線の位置は日によって変わる上に、点検には送電線と一定の距離を保ちながらたるみに並行して飛べる機体でなければならない。さらに対象物である送電線をしっかりと検知する技術が必要で、送電線近くで発生している電磁波に左右されない通信方法を確保することや、突風や風雨にさらされても送電線を視認し続ける必要もある。
これら各種要件に適合する機体およびセンサー類を選定し、送電線点検に特化したシステムを開発し、「サービス化するまでには多くの時間がかかった」と、システム設計を担当したBIシステム開発部の千葉剛氏は振り返る。 東電PGには共同開発したシステムに対応したドローンが14台配備されており、まずは山間部と田園地帯の送電線点検で利用される。今後は電気工事会社に利用してもらうほか、国内他電力や海外展開も視野に入れている。
また東電PGサービスエリア内にある鉄塔の緯度・経度情報を収集し、指定した範囲を自動的に点検して帰ってくる自律点検システムの構築も考えているという。業界をリードする一層の進化を遂げそうだ。
【特集3】50kgの荷物を積載 機材運搬ドローンを開発
【東設土木コンサルタント】
東京電力グループの東設土木コンサルタント(齋藤仁社長)は、重量物を運搬できる大型ドローンを開発している。
現在、山間部などで交通アクセスの悪い場所での送電網工事が増えている。その際、地盤調査を行うためボーリングマシンを山中に運搬する必要があり、同社は傾斜地向けの小型ボーリングマシンを提供しているのだが、小型とはいえ、重量は約300kgにも及ぶ。調査場所まではクローラと呼ばれる無限軌道付きの小型車両で運搬するが、35度以上のきつい傾斜はクローラでも走行できない。
こうした制約をドローンで解消できないかと、同社は2019年から機体メーカーとドローン共同研究を開始。まずは30kgの荷物を搭載可能な機体の開発を進め、離陸・着陸地点にいる操縦者同士の操縦受け渡し、狭所や斜面での離着陸技術などを開発して、山間部での飛行に必要な知見を得た。20年からは50kgの荷物に対応できるよう研究を進めている。
具体的には揚力と飛行安定性の向上を図るためにプロペラの配置を4カ所から8カ所に変更し、プロペラ位置の間隔を広げた。また荷物の積載位置を調整して飛行安定性を高めるなどの工夫を重ねている。
今後は墜落時の機体や積荷へのダメージを軽減・なくすなどの安全対策を行い、年内の現場投入を目指す。問い合わせはこちら:03-6371-4230(東設土木コンサルタント)
【特集3】ガス漏れなどを遠隔点検 小型レーザー式でドローンなどに積載可能
【東京ガスエンジニアリングソリューションズ】
東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)は、東京ガス、ガスターと共同開発した遠隔ガス検知技術を用い、ドローンなどロボットに搭載できるガス検知器「Laser Falcon(レーザーファルコン・LF)」を販売している。
東京ガスは1980年代から2000年代にかけて、レーザーを照射してメタンを検知する技術を研究し続けてきた。ガス検知器は空気を吸入口から取り込み成分を解析してガス漏れを検知する吸引式や、センサーで周囲のガス濃度を測定する拡散式が一般的だ。
対してレーザー式はメタンが特定の赤外線を吸収する特性を利用して、検査箇所をレーザーで照射、赤外線がどれだけ反射したのかを測定することで、照射箇所にメタンを含んだガス体がどれだけ漏えい・滞留しているかを検知する。
吸引式や拡散式はメタン以外にもイソブタンや酸素など多様な可燃性物質を検知できるメリットがあるが、レーザー式の場合、ガラス越しなど離れた場所からでもガス漏れを測定できる特長がある。本方式を用いたハンディタイプのレーザー式メタン計測器「レーザーメタンmini」は、ガス会社での保守・点検時に使用されているほか、発火や爆発の危険がある現場に急行する消防局など国内外で数多く採用されている。
ドローン向けに小型化 各種システムとも連携可能
LFを開発するにあたり、レーザーメタンminiは幅70mm×高さ179mm×厚み42mm、本体重量はバッテリー込みで600gと小型ではあるものの、ドローンやロボットに搭載できるように、さらなる小型化や改善を図った。
まず、ドローンなどに積載する上で必要のない各種情報を表示する液晶ディスプレイやメニューボタンを無くし、バッテリーも外部給電に切り替えた。これによりサイズは幅10mm×高さ8mm×厚み8mm、本体重量は230gになり、大幅な小型化・軽量化を実現している。
また、上空からでも点検できるように地表面で反射したレーザーを受光するレンズを大型化し、最大100m先の漏えいも検知できるよう改良した。取得した点検データは、ドローンシステムベンダーが開発する外部APIとの連携も可能で、例えば漏えい位置情報と測定データの関連付けなどが容易に行える。他社が提供するドローン点検システムに組み込みやすいのも大きな特長だ。
LFの開発に従事したTGES企画本部経営企画部技術企画グループの安部健マネージャーは「LFは政府が進めるスマート保安の考え方ともマッチしている。事業者とともにLFの使い方を考えていきたい」と話している。
既に海外ではドローンにLFを積載した採用事例も出始めている。バルト海に面するラトビアのエンジニアリング会社は同機を使ったメタン検知ソリューションを提供。北米でも埋立地で発生するメタンの計測用にドローンに積載したLFが利用されているという。
国内でも橋梁下に敷設されたガス管や山中に設置されたパイプラインなど、人の手で点検しにくい場所は多い。LFとドローンサービスが組み合わさった新発想の点検サービス誕生に期待が掛かる。
【特集3】2022年度「レベル4」実現へ インフラ企業の課題解決に貢献
【インタビュー/伊藤貴紀:経済産業省製造産業局 産業機械課 次世代空モビリティ政策室室長補佐】
―経済産業省はドローン振興に向けどんな支援を行っていますか。
伊藤 経産省は国土交通省、総務省とも連携しながら、市街地など有人地帯での目視外飛行を認める「レベル4」を2022年度までに実現することを目標に進めています。当省は機体や関連技術などの研究開発支援や、ドローンの産業振興と利活用を促進する取り組みを行っています。
―具体的にどんな内容ですか。
伊藤 レベル4社会が実現すれば、市街地上空をさまざまな事業者が運用するドローンが飛び交うことになります。ドローン同士の衝突を防ぎ、空の安全を守るために事業者の機体情報やフライト情報を統合して管理する運航管理システムの研究支援などを行っています。
現在、インフラ点検や物流、災害対応で、企業や自治体が独自に取り組んでいるケースが増えています。しかし、ドローンの社会実装をいち早く進めていくためには両者が連携し、地域住民にドローンがどういうものなのかを理解してもらわなければなりません。そのためには、自治体が各所をつなぐハブになることが重要です。
利活用の推進に向けて、経産省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は6月4日に「全国自治体ドローン首長サミット」を開催して、ドローンを活用する自治体の首長の講演やディスカッションを行いました。先進事例を紹介するなどして、官民の取り組みを後押ししていきたいと考えています。
22年度から新制度開始 長期的な取り組みが重要
―22年度には有人地帯で目視外飛行が可能となる「レベル4」の開始が予定されています。
伊藤 これまでは人の目が届く目視内での飛行(レベル1、2)、山間部や、海上など無人地域での目視外飛行(レベル3)での利用にとどまっていました。しかし6月4日に改正航空法が成立し、市街地など有人地域での目視外飛行が可能になる「レベル4」利用が認められることで、各種制度が発足する予定です。
本改正によって、22年度から操縦者およびドローン機体には第一種、第二種のライセンス制度が設けられ、レベル4の運用を行うには、①機体の第一種認証、②操縦士が第一種免許を取得、③国交相の許可・承認―の3点を得る必要があります。
―レベル4になるメリットには何がありますか。
伊藤 有人地域で目視外飛行が可能になることで、物流や警備など、人手不足に悩む産業でのドローン利活用がさらに進み、大きな影響を与えるのは間違いありません。
また、これまでドローンを飛行させる場合はドローンの操縦士だけでなく、操縦士をサポートする運航補助者や地上監視員が必要でした。これがレベル4社会になり機体の性能が向上し、技術の向上とともに操縦士以外の人員が不要となっていけば、人件費を減らすことにもつながります。そのため、サービス全体のコストも安くすることができ、ドローンを現場に導入しやすくなるという大きなメリットもあります。
―今後の意気込みは。
伊藤 物流や警備と同様にインフラを保有している企業、インフラを点検する企業のいずれもが人手不足に苦しんでいます。これら課題は現場にドローンを導入することで、一足飛びに解決する問題ではありませんが、中長期的に取り組むことが課題解決の糸口になると考えています。
現在のドローン産業の市場規模は2000億円台といわれるまで成長しましたが、まだまだ拡大する余地はあります。われわれも課題解決と産業振興を両立する政策作りに取り組んでいきます。
【特集3】活用進むドローンの先進技術 市場規模は今後5年で3.5倍に
人手不足が深刻化するインフラの保守・点検業界でドローンの活用が進んでいる。 官民を挙げて各種施策が行われるなど、ドローンの進撃を期待する声は多い。
インフラの保守・点検、重要施設の警備、物流など、多くの産業でドローンが活躍し始めている。
インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2021』によると、2020年度の国内におけるドローンビジネスの市場規模は1841億円と推定される。ドローンが世の中に認知され始めた16年度の市場規模353億円と比較すると、この5年間で市場規模は5倍以上に急拡大した。25年度には市場規模が6468億円と20年度の3・5倍に達し、ドローンを用いた各種ソリューションを提供するサービス市場は4361億円に達すると見込まれている。
特に保守・点検分野の場合、人力で行う点検をドローンに代替することで高所作業が無くなる、足場を組む必要がないのでコスト削減および作業日数軽減につながる、狭所や閉所など人が立ち入れない場所も点検できる―などドローンに寄せられる期待の声は大きい。
既に建設・土木の世界では、高層ビル・マンションの外壁、橋脚、橋桁などの点検作業で高機能カメラを積載したドローンを導入し、撮影画像から異常箇所を診断するサービスを提供する事業者が増加している。少子高齢化により入職者不足が深刻化しているだけに、課題を解決するソリューションとしてドローンを用いた新サービスは普及していきそうだ。
【特集3まとめ】進撃のドローン インフラの保守・点検に新風
積載容量の増加や長距離飛行が可能になったことで、
ホビーから産業機械に進化を遂げつつある「ドローン」。
AIや画像解析技術の進展でドローンで撮影した画像を基に
微細なひび割れから漏油などを検知する技術も開発されている。
エネルギーインフラの保守・点検に新風を吹き込む。
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【レポート】活用進むドローンの先進技術 市場規模は今後5年で3.5倍に
【インタビュー/伊藤貴紀:経済産業省】2022年度「レベル4」実現へ インフラ企業の課題解決に貢献
【トピック/君津市】災害対策で活用する独自モデル 公共インフラの保守・点検も
【各社レポート】導入進む最先端ソリューション 高度・効率化で現場負担を軽減
【WSP】PVパネルを低コストで自動清掃 海底スキャンで洋上風力調査も
【ブルーイノベーション/東京電力ホールディングスなど】送電線特有の条件にも対応 自動点検システムを共同開発
【一般財団法人 日本気象協会】気象リスクを3次元で予測 将来の安全・安心な飛行に活用
【ACSL】自律飛行可能な国産機 エネルギーインフラを自動点検