電力・都市ガスの大型インフラが全国各地で完成時期を迎えている。
電力では、東日本大震災以降のレジリエンスの向上や、
再エネ大量導入時代を見据えた系統インフラの能力増強が進展。
都市ガスでは、東京ガスの日立LNG基地やパイプライン網の完成など、
天然ガスの供給力を強化するインフラ整備が各地で進んでいる。
盤石な安定供給網へ―。最新の取り組みを追う。
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電力・都市ガスの大型インフラが全国各地で完成時期を迎えている。
電力では、東日本大震災以降のレジリエンスの向上や、
再エネ大量導入時代を見据えた系統インフラの能力増強が進展。
都市ガスでは、東京ガスの日立LNG基地やパイプライン網の完成など、
天然ガスの供給力を強化するインフラ整備が各地で進んでいる。
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東京電力グループのエナジーゲートウェイは、分電盤に電力センサーを設置することで宅内にある家電の稼働状況を可視化するサービス「ienowa」を提供している。
ユーザーは各家電の電気使用量がアプリ上で確認できるほか、市販されているスマートロック、スマートリモコンなど他社製のIoT機器と連携し、アプリ上で操作する機能も搭載する。
事業者向けには「hitonowa」というサービスを提供しており、主にハウスメーカーでの採用が多い。同サービスにはienowaユーザーへのメッセージ機能や、ユーザーの電力使用状況など各種データを収集。ハウスメーカーでは家を建てた後に購入者との接点が少ないという課題を抱えていたが、この機能により本システムで得たデータを基に提案を持ち掛けられるなど、顧客との接点を増やせるマーケティングツールとしても活用できる。
また、蓄電池や家庭用太陽光発電(PV)を保有するユーザー向けに「econowa」を3月31日に発表。アプリ上でPVや蓄電池、家電の電気使用量を可視化し、エコーネットライト規格にも対応している。荏原実業パワーが販売する蓄電池システムの見える化システムとしても採用されている。さらにhitonowaとの連携も可能。
エナジーゲートウェイの林博之社長は「今後はPVの自家消費分を環境価値として計測するサービスも提供する予定です」と展望を語る。 電力データを核に、脱炭素時代の新規ビジネスにも挑戦する構えだ。
スマホから家電の操作が可能となる、スマートリモコン「Nature Remo」を販売するNature社。同社は端末をコンセントに差すだけで、手軽に電気の使用状況を可視化する「Nature Remo E」を販売している。
Nature Remo Eはエコーネットライト規格に対応。同規格に対応した住宅用太陽光パネル(PV)や蓄電池、スマートメーターと連携することで、電力の使用量やPVの稼働状況、蓄電池の残量などをアプリ上で閲覧することができる。またスマートリモコンと合わせることで、宅外からでも電気を効率的に利用できるのが大きな特徴だ。
さらに同社は今年3月1日から電力小売り事業にも進出しており、Nature Remoと連携したサービスも5月から提供開始する。内容は自社の市場連動型料金プランを契約しているユーザーに向けて、電力料金単価の上下に応じて家電の設定を適切にコントロールすることで、電力料金を抑えるというもの。
今後は固定料金プランのユーザー向けにデマンドレスポンス(DR)を用いたサービスの提供も検討しているという。
塩出晴海社長は「PV、蓄電池、電気自動車(EV)が普及し始めるなど、電力業界で起きるパラダイムシフトは止まらない。自家発電とエネルギーマネジメントによる電力供給が一戸建てでベースになる。われわれのソリューションを提供していきたい」と意欲を示す。
テックベンチャーが電力業界に新たな風を起こしそうだ。
国内外の製造、金融、医薬品、通信、教育などさまざまな大手事業者向けにアナリティクス・ソフトウェアを導入しているSAS Institute。同社はソフトウェアの販売や社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたプランニング、デジタル人材の育成支援など、AIおよびアナリティクスに必要な一連の要素を一気通貫で提供している。
最大の強みとしては、豊富なシステムのラインアップと、優秀なアナリストによる分析支援が挙げられる。エネルギー分野においても、需要家分析を踏まえた販売戦略の立案、管内の需要予測、自社設備の稼働管理、分析人材の育成――など、活躍の幅は多岐にわたる。
海外エネルギー企業での導入事例も多いが、日本では大手電力を中心に採用されている。
東京電力パワーグリッドでは、データ活用を推進すべく社内を横断した組織「データ戦略・高度化G」を設置した。設立に向けて社内の全部門と意思疎通を図りながらさまざまなデータ分析およびソリューションの提案を実施。データ活用による価値を創造する意義を推進したほか、データサイエンティストの育成にも取り組んだ。
関西電力技術研究所とは、激甚化する災害に対するレジリエンス(強靭化)対策で連携。これまで配電設備への飛来物による二次被害をどう予測するかが課題だったが、空中写真や宅地情報などを利用した新たな学習モデルを構築した。これにより、カバーしきれていなかった宅地などで飛来物による電柱倒壊被害の予測モデルの共同研究を行った。
同社ソリューション統括本部の小野恭平氏は、SASの強みについて「データ分析は継続的な取り組みです。自社人材で分析と課題解決のサイクルを高速に回す仕組み・体制づくりをトータルでご支援できるという点は、当社にしかできない強みです」と説明する。
再生可能エネルギーの大量導入、小売り全面自由化など、国内のエネルギー業界は大きな環境変化に直面している。小野氏も昨今のエネルギー業界について「構造改革の社会的要請に対応するには、デジタル技術によるビジネス変革の取り組みが重要です」と語る。
自由化による荒波を乗り越えるためにも、SASのシステムは経営の羅針盤になりそうだ。