安心・安全・信頼のブランドを継承 原点に立ち返ってガスの普及に臨む

2022年5月8日

【東京ガスネットワーク/野畑 邦夫社長】

のはた・くにお 1984年東京工業大学大学院理工学研究科修了、東京ガス入社。執行役員、東京ガスエンジニアリングソリューションズ社長執行役員、常務執行役員、副社長執行役員、代表執行役副社長などを経て2022年4月から現職。

―4月1日、導管ネットワーク事業会社として新たなスタートを切りました。

野畑 ガス事業とは本来、導管を通じてガスを供給する事業であり、それを承継したのは当社であり第三の創業期と位置付けています。社員に対しても、東京ガスが136年の歴史の中で、最も大切にしてきた安心・安全・信頼のブランドを引き継いだ重責と誇りを持って仕事に臨むようメッセージを伝えています。

 電力会社の法的分離と大きく異なるのは、ガス漏れや定期点検の際にお客さま宅を訪問するのはネットワーク会社であるため、そのことを社会に広く知っていただく必要があるということです。そのため、会社発足と同時にテレビCMも展開しています。

―法的分離の実施まで、特に苦労した点はありますか。

野畑 法的分離による分社化と同時に、導管の建設・維持管理業務を担う二つの子会社を吸収合併しました。これは、地域に根差したネットワーク会社として、現場により近い会社にしていきたいとの思いからです。ただ、システムの改修など法的分離に向けた手続きと同時並行で行ったため、こなさなければならない業務量が膨れ上がりました。

 このため、新会社をどのような会社にするのか、ビジョンを描くことを先送りせざるを得ませんでした。まずは半年ほどかけてこれまでの取り組みを総点検し、中期経営計画やビジョン策定につなげていく方針です。例えば効率化を最優先にすることで犠牲にしていることはないか、ネットワーク会社としてガスの普及にどう取り組むかなど、ガス会社の原点に立ち返って考えていきたいと思います。

若い働き手の確保へ 現場作業をスマート化

―ガスの需要開拓にどのように取り組みますか。

野畑 当社の供給エリアである首都圏でも、都市ガスが行き届いていないエリアは相当あります。低炭素化に向けた電化推進が言われていますが、そういったエリアの自治体や地域の住宅メーカーなどに働きかけ、ガスの良さを知ってもらい、レジリエンスの観点から電気とガスの互いの良いところを選んで使っていただけるよう提案していきます。

―安定供給と効率化の両立をどう図りますか。

野畑 デジタル技術をいかに活用できるかにかかっています。ウェアラブルカメラを装着することで現場に行かずに複数人で現場の状況を共有したり、写真を取り込むことで施工図を自動的に作成したりと、デジタル化による業務の効率化を着実に進めていきます。

 また、工事現場でのオペレーションに伴うCO2排出削減にも取り組んでいきます。作業のデジタル化や重機のEV化など大阪・東邦ガスネットワークや他のインフラ産業とも連携し、高齢化が進む中で若い人に魅力的な職場だと思ってもらえるようなスマートな現場をつくっていければと思っています。