【特集2】トータルソリューションに注力 高純度水素製造からCO2回収まで

2025年3月3日

三菱化工機】

都市ガスやLPガスから水素を製造する装置「HyGeia(ハイジェイア)」を製造・販売している三菱化工機。同社が主力とする技術の一つが、水蒸気改質(スチームリフォーミング)法によって高純度(99・999%)の水素をオンサイトで製造することだ。燃料電池自動車向けの水素ステーションをはじめ、化学・鉄鋼産業や工業ガスとして水素を利用するユーザー向けなどに、これまで60年近くにわたって200基程の導入実績を重ねてきている。

同社は現在、CO2回収技術の開発に力を注ぎ始めている。その経緯を水素・エネルギー営業部の山口修水素・エネルギー営業課長はこう説明する。「当社が手掛ける装置は化石資源から水素を製造する技術であるため、CO2を排出してしまう。お客さまの脱炭素ニーズに応えるためにも、CO2回収技術をラインアップしておくことは避けて通れない課題だと認識している」

CO2回収技術に注力 PSAと膜技術で脱炭素

そうした中で二つの技術開発に取り組んでいる。一つ目がPSA(圧力スイング吸着)だ。この技術では圧縮したガスを吸着塔に送り、吸着剤によってガスを吸着させ、圧力変化を繰り返しながら目的となるガスを高純度に精製・回収する。昨年6月に、川崎市の自社工場内に回収設備を設置。水素製造時に発生する排ガスから95%を超える濃度のCO2回収の実証に取り組んでいる。ハイジェイアだけではなく、各種燃焼設備との組み合わせを想定した回収技術の開発に注力している。

二つ目は「膜」だ。CO2分離用分子ゲート膜と組み合わせた水素製造装置の開発を進めている。同社と次世代型膜モジュール技術研究(MGM)組合(京都)が共同で提案した技術で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「二酸化炭素分離膜システム実用化研究開発」の助成事業として取り組む。これまでIGCC(石炭ガス化複合発電)などの高圧ガス源のプラント向けを想定して開発を進めてきたMGM組合の膜技術を、中圧の水素製造システムへと適用できるようにカスタマイズする。三菱化工機は水素製造装置にこの膜を組み込み、高純度の水素を製造すると同時にCO2を回収する。両者は分離回収コスト、低炭素水素の製造コストの経済評価を進めていく予定だ。

23年6月に策定された「カーボンリサイクルロードマップ」では、膜分離法が明記されており、CO2分離・回収技術のコスト低減に向けた技術領域の一つに掲げられている。同社はハイジェイアの「単品メーカー」としてだけではなく、CO2回収までを含めた脱炭素へのトータルソリューションを支える取り組みを加速させていく。

CO2回収装置を組み合わせて実証している