【コラム/4月25日】トランプ相互関税を考える~試される企業の適応力、国民・政府は慌てずに

2025年4月25日

飯倉 穣/エコノミスト

1、トランプショック

日本経済は、24年横ばいで推移した(GDP前年比実質0.1%増、名目3%増)。今年も春闘で物価上昇を上回る賃上げコールがあった。実際一部5%超えもあったようである。経済論的に勘違いながら上向き期待の声も響いた。そこにトランプショックである。

報道は伝えた。「トランプ氏発表 一律10%に上乗せ 米相互関税 日本24% 輸入品に国別税率 自動車関税25%も発動」(朝日25年4月4日)、「トランプ相互関税 日本24% 想定上回る 崩れる自由貿易 戦後秩序の転機に 車25%関税発動」(日経同日)。

米国政府は、4月5日すべての国・地域からの輸入品に一律10%関税の実施を始めた。9日に高関税率適用直後、高関税90日間一時延期(自動車関税25%は継続)となる。朝令暮改に困惑と安堵が交錯する。

政府は、「国難」一致団結で訴える。関税対策で、与野党党首会談もあった(4日)。首相が米国と電話協議した(7日)。当面対応の試行錯誤の継続となろう。米国の関税発動は、日本経済にどんな影響を与え、経済の各主体はどのように行動すべきだろうか。過去の経験も踏まえ、今後の経済の動向と対応を考える。


2、トランプ相互関税の理屈と内容

相互関税による輸入規制に関する大統領令(4月2日)が発出された。その趣旨は、貿易赤字の継続は、米国の国家安全保障と経済に関する脅威で、且つ製造基盤の空洞化を招来している。世界の製造業生産高比米国製造業生産高は17.4%(2001年28.4%)に落ち、この四半世紀で製造業の雇用は約500万人減少。ただGDP比製造業シェア11%ながら米国全体の生産性伸びの35%、輸出の60%を占める。この製造業の低下傾向の逆転こそが、米国競争力の未来を決める。

他国は、米国と比べ高関税を課し、また非関税障壁で米国の製造業者の市場アクセスを阻害している。加えて通貨慣行(通貨安)や付加価値税等の政策で国内消費を抑制し米国輸出を押し下げている。この非対称性が、米国の貿易赤字を増加させている。

つまり貿易不均衡は、国内製造業の拡大機会を減じ、雇用喪失、製造能力減少、防衛関連産業基盤の委縮を招いている。国防的に、工業能力の損失は、軍事的即応性を損なう面もある。故に米国の経済的地位強化の努力が必要である。そのため相互関税政策を採用する。輸入品に従価税10%に加えて特定国に対し追加関税を課すと述べた。かつて国益一致と標榜していた自由貿易の先導者が、自己都合で互恵的な自由貿易を捨て去る宣言だった。

日本は非関税障壁込みで対米国関税率は46%と計算された。その計算式は、凡そ財に関する貿易相手国の対米黒字額/貿易相手国の対米輸出額である。日本に対する相互関税は、その約半分24%になった。他国は、様々である。

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