【SNS世論/4月28日】TBS「報道特集」の炎上 ネットではたどり着けぬ石油危機の真偽
「日本は6月に詰むんですよ」。4月4日放送のTBSの「報道特集」で専門家が断言した。ホルムズ海峡の封鎖でナフサ供給がなくなるという。SNSで映像が切り取られて広がり、批判が広がった。高市早苗首相は自ら翌日5日、SNSのXで番組名を出さなかったものの「国内需要4ヶ月分を確保」と具体的な数字を挙げて反論。同番組も「趣旨を適切にお伝えすることができなかった」と7日にXで認めた。

日本のSNS、特にXでは右派・左派の双方が書き込むが、高市首相支援の保守派の勢力がやや強い印象だ。そして報道特集は、政府に敵対的な姿勢を続け、偏向報道と保守派から批判が集まる番組だ。そうした中で、このあおり気味の報道をした。批判の広がりは仕方ないかもしれない。けれども、政府の石油をめぐる一連の政策の危うさ、危機意識のなさが、こうした批判でかき消されないかが心配だ。
ホルムズ封鎖で世界的に石油の流通が混乱し、世界各国では時短勤務や車の使用の抑制が広がる。ガソリン価格が上昇したため、民間の人々が自然とそう動いた。一方で、日本では4月に各地で例年通り「お花見渋滞」が起きた。今年1月の暫定税率廃止、3月のガソリン・軽油補助金の実施で、自動車燃料の上昇が抑えられたことが一因だろう。
日本政府のガソリン・軽油価格の抑制策は、自動車利用の頻度を増やして石油不足に拍車をかけかねず、また負担で財政を痛める。日本政府と高市政権は人々に不安を抱かせないように配慮をしているのだろう。しかし、そうした政策を行なっても、危機そのものはなくならない。
オールドメディア動かず、SNSは探れず
石油の供給問題をめぐる新聞・メディアの報道も歯切れが悪い。「ガソリン補助金2カ月で枯渇か」(毎日、4月6日)など、月5000億円と見込まれる補助金の継続支出を危ぶむ報道がある。しかし国民が燃料の値上げを受け入れるべきかという、価値判断の視点がない。それは他社の記事でも同じだ。自動車燃料費の抑制政策は、目先は国民それぞれには利益になるので、異論を唱えづらいのだろう。
本当に石油製品は不足しているのか。石油関連製品の流通は裾野が広いため記者が実情を追いづらいのだろうが、現場の状況を伝える報道が少ない。「ナフサ不足で調達リスク、製造業3割『影響』 帝国データ調べ」(日経、同18日)は調査会社の報告をまとめ、流通は止まっていないものの、将来の不足や価格の上昇懸念が出始めたことを伝えた。しかし実態が今一つ不透明だ。
イラン攻撃をするトランプ政権、それを支持する高市政権を批判する記事は多いが、足元の危機を伝える報道にオールドメディアは熱心ではないように見える。そういう問題こそ、プロのメディアが頑張って、プロらしい取材をすれば良いのだが、今のメディアは、そうした手間のかかることをしない。メディア不況の中で、記者の数は減っている。
SNSはさまざまな人の参加による集合知で、オールドメディアが捉えられない情報を伝える。また編集者のバイアスがかからない、斬新な情報を提供する。それゆえに影響力を増してきた。しかし石油流通のような専門的な問題、取材の裾野の広い問題はなかなか適切な情報にたどり着けない。ガソリン価格が落ち着いているので文句も出ない。将来への補助金が財政を痛めていることの不安もそれほど出ていない。
こうした専門的な問題、影響の長期的な問題の情報を得る、議論をするには、SNSには不向きなのだ。情報は、当事者からの一次情報の集約、そして組み立て分析する人が必要だ。そうした手順を、SNS情報は行えない。
メディアの特性ごとに情報を使いこなす
結局、石油の流通という複雑な問題は、政府に情報も政策も委ねることになってしまう。ところが、最近の経産省・資源エネルギー庁は頼りなく、政治になかなか物を言えない。政治は日本も含めどの国もバラマキ志向だ。エネルギー政策も、問題があるのに、そのまま放置されることが多い。
この問題で事実を追うと、石油ショックの再来という恐ろしい未来が見えるかもしれない。そうであっても誰かが事実に迫ってほしい。頼りない政府と政治に委ね続けると、さまざまな危険が生じてしまう。だから民間の奮起が必要だ。しかし重要なツールとなりつつあったSNSは石油の流通問題には、頼りにならなさそうだ。
私たち一般国民は、メディアの特性ごとのメリットとデメリットを認識し、注意しながらそれを活用するしかないようだ。


