【SNS世論】最終処分地の南鳥島案 議論で盛り上がり欠く

2026年5月15日

原子力発電での使用済み燃料を再処理した時に出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定を巡り、政府は4月に東京都小笠原村の南鳥島で文献調査を行う意向を示した。同村はその申し入れを受け入れた。これを巡るメディアとSNSの動きを考えたい。

南鳥島は父島(写真)から東南東に約1200㎞離れた場所にある

南鳥島は小笠原村の行政区域に属す日本最東端の島で、一般住民は居住していない。本土から遠いという難点はあるが、住民の反対などで処分地の選定が進まない現状を打開する可能性がある。

選定手続きの第一段階にあたる文献調査が今後行われる。この調査は北海道の寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村、佐賀県玄海町に続き、4例目となる。過去の3例は地元の意思表示がきっかけだった。しかし反対意見が地元や周辺自治体にあり、反原発を唱えるメディア、政治団体がこの動きを批判した。3自治体では賛成派が多数だが、一方向に議論は進んでいなかった。

寿都町の片岡春夫町長は「やっと一歩進んだ」と、南鳥島での文献調査を評価した。(北海道放送3月13日報道)有力なライバルの出現を警戒するのではなく、国民的な議論を歓迎するという姿勢のようだ。手を挙げた自治体は、政治論争に巻き込まれ負担になる。候補地を増やすことが、現時点では逆に選定が進むことを助けるだろう。

◆関心を向けないSNS世論

SNSは最近、メディアよりも社会への影響力が大きくなりつつある。しかし、この高レベル放射性廃棄物の問題について関心を持つ人が少ない。この問題について述べる投稿や映像が少ない中で、反対を唱える一部オールドメディアや反原発の活動家の声が目立つ印象だ。

SNS世論は原子力の活用派がやや多いように思える。しかし原子力の活用と、廃棄物処分の話は、一般の人は関係づけて受け止めていないらしい。そして原子力発電の後始末の問題について解決の必要性は認めるが、NIMBY(Not In My Backyard、「私の家の庭にはお断り」)の感情が働き、推進の意見を言うことにためらいが生じてしまうのだろう。この問題は複雑で、ある程度の説明と理解が必要だ。SNSは単純な問題を善悪に仕分けて拡散することには向くが、複雑な問題の論評には不向きなメディアだ。

一方で、原子力発電を批判する人は、この問題では元気に活動する。原子力発電には膨大なメリットがあるが、廃棄物処理の点では問題が残るため、「攻め所」と張り切っているかのようだ。そして放射性物質は危険性がある。恐怖に絡められた議論をされると、論理的に反論するのは手間がかかる。

◆一部オールドメディアは南鳥島での動きを批判

一部のオールドメディアは、この問題の解決を妨げようとしているように見える。朝日新聞は4月16日の社説「核のごみ処分 徹底調査と説明責任を」で、「前のめり」「押しつけ」と、南鳥島での動きを批判した。そして離れた場所にある小笠原諸島の村民の疑問の声を紹介した。朝日はいつもの通り他人に自分の意見を言わせるずるい形の記事にしている。

毎日新聞は強い批判を繰り返す。同紙は科学面で〈「絶海の孤島」南鳥島 核のごみ処分場〉という特集(4月13日)で技術的課題をとりあげ、実現性に疑問を示した。特集面では記事〈「手挙げ式」からの方針転換 核ごみ最終処分に動いた政府〉(同日)で、政府が批判で場所の選定に行き詰まり、新しい方法で動いたと指摘する。このように一部のメディアは、解決に協力しようという意思がない。

産経新聞は〈資源に乏しい日本で原子力発電を持続可能なエネルギー源とするために極めて重要な対応である。理性ある決断に敬意を表したい〉と4月15日社説〈南鳥島の文献調査 核地層処分へ意義大きい〉で書いた。これが常識的な反応ではないか。またNHKや読売新聞は、淡々と事実を伝えるだけの姿勢だ。せめてこのような反応をしてほしい。

しかし一連の報道について、SNSではあまり反響はない。

◆今の世代が解決するべき問題

日本政府は、国のプロジェクトでは、できる限り関係者の全員一致の状況を作ろうとする。どんな問題でもそれは難しい。この高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定問題では特に全員一致の問題は難しそうだ。

しかし一部のメディアがこの問題で、マイナスの情報のみを拡散して、人々を反対の方向に動かそうとするのは問題だ。文献調査を受け入れた玄海町の推進派の住民は次のように語る。「地元で静かに議論をできる状況を作ってほしい。感情的な議論、政治運動の対象になって町が混乱するのは迷惑だ。今の時代、メディアに影響される人は少ないだろうが、情報が混乱を引き起こす可能性がある」。

高レベル放射性廃棄物の問題は、SNSには馴染まないし、人気もない。ただし一般の人は、関心を持ってほしい。それが無理でも、問題を混乱させる動きや、一部メディアの偏向報道をおかしいということをSNSでしてもらうと、ありがたい。

この問題は今を生きる世代が、解決しなければならない問題だ。私たちは大量の電気を使う生活を享受し、その結果として原子力発電の使用済み燃料が存在している。その解決の責任は、原子力の活用を賛成する人にも、否定する人にもあるはずだ。SNSの反応が、その解決の行く末に影響を与える。