【目安箱】日米韓が小型原子炉で協力 警戒しながらも利益を得る構図に
日米韓の3カ国はトルコのアンカラで開催されたNATOのサミットに合わせて外相会談を行い、原子力の小型モジュール炉(SMR)の他国への導入に関する協力覚書を7月7日に結んだ。マルコ・ルビオ米国務長官、日本の茂木敏充外相、韓国の趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官が参加した。米国の公表文によると、SMRの新規建設で、インド太平洋地域を当面の重点地域とし、その建設のための3カ国の政府および産業界の協力強化を目的としている。具体的には、SMRプロジェクトの開発リスクの低減、規模の経済の実現による建設費用の低下、民間投資の促進、許認可手続きの効率化やサプライチェーンの最適化などを目指す。

署名式において、茂木外相は、「米韓両国とは、重要鉱物のサプライチェーン強靭(きょうじん)化や北朝鮮のサイバー脅威に対する枠組みなど、これまで具体的な取り組みを進めてきた。SMRに関する協力枠組みについても歓迎する」と述べた。
◆米国主導か、日本は受け身の対応
3国政府は、日米韓3カ国は商用原子力で相互補完的な強みを有していると認識を共有し、この地域で増加する電力需要を満たすための競争力ある選択肢を提供するとしている。またこれ以外にも、原子力安全、核セキュリティーを進めるとしている。つまり売り込みに加え、核の管理も協力するという。
この3国の覚え書き締結を積極的に推進したのは米国のようだ。米国は、「SMR技術の責任ある利用のための基盤インフラ」プログラムを行っている。これはバイデン政権の時からのもので、トランプ政権でも継続されている。この協定に関係し、これを使ってSMRプロジェクトの開発支援や、原子力人材の育成を目的とした訓練を行うとも発表した。韓国のメディアも、同国政府の期待コメントを載せた記事を掲載している。
ところが日本の外務省、経産省は会見に外相が出た以外は、積極的に広報をしていない。準備がまだできていないのかもしれないが、こうした原子力の推進の国際協力については、国内の世論の批判を恐れてか、常に福島原発事故以降、日本政府は腰が引けているように思える。
◆急成長する韓国の原子力産業
もちろん、この協定は歓迎すべきことだろう。しかし、日本人の傾向として、外国との協力ではメリットだけ注目しがちだ。原子力でも、過去に大きな問題が起きている。
東芝が2017年に経営危機に追い込まれたのは、買収して子会社にした米国の原子力企業ウェスチングハウスの赤字を抱え込んだことにある。
そして米国は大国ゆえに、自国に都合よく、作った国際制度を変えてしまうことがある。原子力についてこれまで米国は兵器転用を止めるという核不拡散政策を行なってきた。しかし7月23日にトランプ大統領はサウジアラビアとの間で原子力協定を締結した。そこで核兵器の開発につながるウラン濃縮をサウジに認めた。サウジは現時点では米国の友好国とはいえ、王国でサウド家の独裁の下にある。また核保有を目指すイランと対立し、財力もある。この協定をきっかけに、核保有に進みかねないとの懸念が世界に広がっている。
また韓国の原子力産業は発展している。UAEのバラカ原子力発電所の建設を、日本勢を差し置いて、09年に当時約200億ドルで受注した。韓国の国産炉APR1400型4基を使う発電所が24年に稼働した。
韓国の企業連合はチェコで25年に2基(APR-1000型)の契約を締結(約180億ドル規模)。36~37年完成を目標にして工事が始まった。国内での原子炉建設計画もあり、既存原発の稼働率も9割近い高さだ。この協定が上り調子の韓国の原子力産業に、プラスとなるだろう。
◆外国に利用されず、したたかに
さらに韓国は原子力潜水艦の建造を目指している。この小型炉の技術が、それや同国の核武装につながる可能性がある。韓国は、核燃料サイクルを検討しているが、米国がこれまで認めてこなかった。ところがサウジに認め、そしてトランプ政権がビジネスのためなら核不拡散の原則を崩しかねない行動をしている。
韓国がいきなり核武装をすることはないだろうが、それは将来的に懸念される話だ。原子力潜水艦と核兵器が合わさると、日本の安全保障にも影響する。その始まりに、この協定がならないことを祈る。
まだ日本は原子力では、研究も運用も建設力も世界のトップクラスにある。福島原発事故の反省の下で安全性の研究、ノウハウも蓄積されている。今回の協力でマイナス面ばかりを心配するのは愚かな行為だろう。協力のメリットを伸ばし、日本の力を発揮し、利益を享受する方法を考えることが先だ。
しかし今までの経験、米韓と日本の熱の入れ方の違いを見ると、少し今から心配している。米韓両国、そしてそれぞれの産業界は原子力でもライバルであると同時に友でもある。彼らのしたたかさに気をつけながら、原子力の復活の世界的な動きに向き合いたい。


