【記者通信】エネ庁が27年度概算要求でCEV補助増額せず 求められる予算の抜本改革

2026年9月8日

経済産業省は2027年度予算の資源エネルギー・グリーントランスフォーメーション(GX)部門の概算要求で、新たに「原油供給源多角化支援事業」に150億円、「大規模系統整備等事業」に368億円の予算を付けた一方、クリーンエネルギー自動車(CEV=EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)関連の購入補助金の予算枠を据え置き、充電設備の設置補助金を減額した。ホルムズ海峡封鎖による石油価格高騰対策として、ガソリン車に対しては兆円単位の巨額の補助金を準備している一方、脱ガソリンに貢献するCEVの普及促進に対する補助金はわずか1500億円程度。その消極姿勢はさまざまな意味で波紋を広げそうだ。

27年度予算の概算要求では「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」を前年度の補正予算と同額の1100億円に据え置くとともに、「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てん設備等導入促進事業」の予算については426億円へと前年度補正の500億円から14.8%減額した。

これについて、資源エネルギー庁総務課はエネルギーフォーラムの取材に対し、「市場の成熟とともに補助金額を削減していくのが基本設計だ。購入補助金は前年度と同額を保っていれば十分と考える」と回答した。また、充電・充てん設備等導入促進事業は前年度の予算執行率が低かったことも指摘した。経産省自動車課によると、前年度の執行率は8割前後。今年の概算要求水準は前年実績を約8%上回っていることになる。

例えば、ガソリン補助でなくCEV購入者に半額補助

率直に言って、経産省の回答は残念だった。現在の政府に求められているのは、イラン情勢やウクライナ情勢によるエネルギー危機の長期化に対応した政策の大転換、いわば需給構造の改革だ。この点は、複数の自民党有力議員や元経産省幹部が指摘している。つまり、今回の概算要求についても「従来の延長線上ではなく、世界的な石油危機やこれからのエネルギーDX・GX時代に対応した抜本的な予算配分の見直しが必要」(元衆議院議員)なのだ。

例えば、政府は9月1日、26年度補正予算で確保した予備費から6160億円を「燃料油激変緩和対策基金」へ投入することを閣議決定したが、この予算をCEV購入のための補助金に充当していたら、どうなるか。現在、普通車EVで最大130万円、軽EVで58万円、プラグインハイブリッド車で最大85万円、燃料電池車で最大150万円の補助金が支給されている。これを思い切って3倍に増額する、もしくは購入費の半額を補助するとすれば、購入者にとっては相当大きなメリットになろう。買い替えの動機付けにもなる。6000億円もの財源があれば、それが可能だ。場合によっては、さらに予算を増額し、一定の燃費基準をクリアしたストロング・ハイブリッド車を補助対象に加えることもできるかもしれない。さらに、国内自動車産業の活性化も狙うのであれば、レベル2.5水準の自動運転を備えた国産CEVに補助金を重点配分するという方法もある。海外からは批判されるだろうが、そこは高市早苗首相が先頭に立ち「ジャパン・ファースト」で押し切っていく。

産業政策などと一体化したエネ政策展開を

いずれにしても、国内産業政策やGX政策と一体化した国のエネルギー政策展開が、今こそ求められているといえよう。何しろ、「中東情勢等対応予備費」で2兆5000億円もの補正予算を確保しているのだ。国益を踏まえたしっかりとした政策理念があれば、溶けてなくなってしまうようなガソリン補助金ではなく、もっと有効な国費の使い道が考えられるはずだ。これも一つの案だが、CEVは大都市部よりも、戸建て住宅の多い地方ほど潜在ニーズが大きい。自動運転を搭載したCEVが充電インフラ整備とともに地方を中心に普及するような施策を講じていけば、ガソリン価格問題はもとより、ガソリンスタンドの過疎化問題や、高齢者の運転ミスによる交通事故問題にも寄与する可能性がある。

本稿ではCEV問題をテーマにしたが、エネルギー政策全体では何と言っても原子力の「最大限の活用」に向けて、予算と規制当局の大改革が不可欠だ。残念ながら今回の概算要求では、その姿が全く見えてこない。

言うまでもないことが、官邸・中央省庁には頭脳明晰で優秀な官僚が集積している。高市首相は自ら公邸にこもって勉強することもさることながら、国の司令塔として官僚をうまく使いこなすことにもっと注力してはどうか。来年度のエネルギー予算に向けては、激動する現在の情勢を踏まえた政策転換の議論が、国会や省庁の審議会レベルで活発化することが望まれる。