【特集2 産業用ヒートポンプ】低温度帯がターゲット 一部電化でも大きな省エネ
工場の熱源転換に向け、ヒートポンプを導入する動きが出てきた。
既存設備との組み合わせなど、現場の創意工夫で大きな省エネ効果が生まれている。
家庭用から業務・産業分野に至るさまざまな省エネルギー政策をつかさどる省エネルギー政策小委員会。この委員長には、これまで建築部門の専門家が就くことが多かったが、昨年5月、産業部門のエネルギーや熱利用に詳しい早稲田大学の齋藤潔教授が就任した。この人選について、「経産省はこの分野の省エネや脱炭素対策に相当の問題意識を持っている」とエネルギー業界関係者は見ている。
同分野の取り組みの鍵が熱利用対策だ。中小から大規模工場まで、生産工程で使われる温水や蒸気は、ガスや油などの化石燃料をボイラーで直接燃やして作るケースがほとんどだ。この工程での化石資源利用を減らすことが重要な対策である。
そこで注目されているのが、ルームエアコンやエコキュートでおなじみのヒートポンプ技術だ。投入エネルギーに対して高い省エネ性を発揮するだけに、家庭用にとどまらず、幅広い分野への導入が期待されている。特に100℃未満の低温度帯で使われる温水は既存のヒートポンプ設備でも十分に対応可能だ。

ボイラーと協調運用 燃料の消費量を削減へ
そうした中、東北経済産業局では低温度帯のヒートポンプ利用を進めようと、事業者向けに設備導入の指南書を作成し、ホームページ上に公開した。
主なターゲットは、エリア内での事業所割合が高い「食品分野」だ。洗浄、清掃、殺菌、排水処理などで温水を使っており、この熱源をヒートポンプで電化する戦略を後押しする。
東北経産局の関係者は「東北のある工場ではヒートポンプ設備の導入によって9割の省エネ効果を発揮した」と話す。もちろん、全ての工程を電化できるわけではない。生産工程によってはボイラーとの協調が前提となるが、それでもヒートポンプを組み込むことで大幅なCO2削減が可能になる。この「ボイラーとの協調」という複合的な視点がポイントだ。ボイラー向けの給水をヒートポンプによって予熱しておくことで、化石燃料の使用量を減らせる。
「実はこうした取り組みでも効果を発揮できることが、工場現場ではあまり知られていない」(前出の関係者)。ボイラー単体に比べて少し複雑になり、現場の担当者は嫌うかもしれない。だが、ヒートポンプ導入の「好事例」を重ねて産業対策を進めていくことの効果と意義をしっかり伝えていく時が来ている。


