【特集2 産業用ヒートポンプ】低GWP化で多様な熱用途に対応 三菱重工冷熱とコベルココンプレッサの市場拡大戦略
ターボ冷凍機などのヒートポンプ用途が多様化してきた。
メーカー各社は、低GWP冷媒への対応や省エネ化を図っている。
三菱重工冷熱
省エネと環境負荷低減を両立 データセンター需要を狙う
三菱重工製ターボ冷凍機の国内販売・サービスを担う三菱重工冷熱は、低GWP(地球温暖化係数)冷媒を採用した製品群を主力に据えている。省エネと環境負荷低減の両立をアピールし、さらなる需要拡大に注力している。
同社が国内シェアを拡大し始めたのは2000年頃だ。国内最高効率の圧倒的な性能を有したHFC-134a機を市場に投入し、電力会社の蓄熱事業や半導体・液晶工場、地域冷暖房などへの採用を広げていった。この性能を支えたのが同社グループの発電設備に使われる回転体や熱交換器の技術だ。「生産を担う三菱重工サーマルシステムズでは、圧縮機はガスタービン、熱交換器は原子力など各コンポーネントにコア技術を応用している。低GWP冷媒対応機は圧縮機が大型になりやすい。これを小型に納めて設置面積を従来と同等にしている」。佐藤達哉大型冷凍機事業本部長はこう話す。

負荷に応じた運転を実現 従来用途も堅調に拡販
同社のラインアップのうち小・中容量(150~700USRT)の「ETI―Z」シリーズはGWPが1の冷媒HFO-1233zd(E)を採用し、国内初の低GWPターボ冷凍機として18年度の省エネ大賞を受賞した。定格COPは6・49、部分負荷時の最高COPは25・5に達する。中・大容量(3005400USRT)の「JHT―Y/YI」シリーズはカーエアコンにも使われるHFO-1234yfを冷媒に採用し、固定速機とインバーター機をそろえている。固定速機はベースロードで運用する一方、インバーター機は中間期や夜間に出力を調整して効率的な運転が可能だ。両機を組み合わせて運用する需要家が多いという。
同社が今後の成長領域と見据えるのはデータセンターだ。「AI需要により全国で建設が進んでいる。国内での納入実績を積み重ねていきたい」と佐藤氏。オフィスビルや商業施設、地域冷暖房、半導体工場のクリーンルームなど、従来の用途においても拡販を進めていく考えだ。
コベルコ・コンプレッサ
冷温同時供給で需要を開拓 高温・防爆で成長の可能性
コベルコ・コンプレッサは、主力であるヒートポンプの用途拡大に注力している。従来は空調用途の水冷・空冷供給が主流だったが、近年は産業用途で冷やすと同時に温水を取り出す「冷温同時」へのニーズが高まってきている。「これまでは空調用途と産業用途のシェアは半々だった。産業向けの比率が徐々に増えてきて、さらに高まっていきそうだ」とヒートポンプ・エネルギー営業部の金田堅治CS推進室長は説明する。
同社のヒートポンプは1台当たり300~600kWと中・大型製品が主力だ。同社グループ独自の高効率・高剛性のスクリュー圧縮機が高温領域に強く、高い耐久性を有し、他社製品や他の熱源装置を上回る長寿命を実現している。
また、冷媒規制への対応では、GWPが1未満のノンフロン冷媒を採用した機種をそろえ、最高95℃の温水供給まで対応領域を拡大した。
直近では、100175℃の蒸気発生用装置や化学業界などの需要に対応するため、防爆対応の汎用ユニットを開発中だ。「ヒートポンプの汎用ユニットでは防爆対応はほとんど採用例がない。未開発の領域でありポテンシャルが高い」(金田氏)と見ている。

CN対応で有力な選択肢に サブコンなどに提案を拡大
産業用途では、半導体のクリーンルームの空調や自動車工場、医薬品工場のプロセスなどに組み込まれる事例が増えている。こうしたニーズの高まりはカーボンニュートラル(CN)が大きく影響している。「50年CN達成を目指す企業が増えて、これまで使っていたボイラーやチラーを単純にリプレースすることが許されない企業が多く、ヒートポンプを選択肢に入れて検討している。当社の製品は他の製品に比べて容量が大きいこと、効率が良いこと、冷温同時に供給できること、などをアピールして受注につなげている」と金田氏は説明する。
こうした営業活動はエンドユーザーに加え、サブコンや設計会社にも行っている。サブコンや設計会社も脱炭素と工場やプラント全体の効率化を両立させるための手段としてヒートポンプが有効とみるようになってきた。また、同社に資本参加した三浦工業は顧客の工場に省エネ提案を行うサービスを展開している。この提案に同社のヒートポンプを組み込むなど、販売チャネルが広がりつつある。
同市場の先行きについては、電気代の上昇や国際的な脱炭素化の動きが減速するなどといった逆風もあるが、緩やかな右肩上がりを見込む。DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)のように冷温同時の熱を必要とする新技術からの引き合いもあり、用途開拓の余地は大きい。工場の脱炭素化を軸とした高温領域市場の開拓が同社の成長を左右していきそうだ。


