【特集2】垣根超えた「チーム原町」の結束 業界横断の連携で復旧と復興果たす

2021年4月3日

福島県内に多くの大型火力発電が立ち並ぶ中、原町火力は東北電力の主力電源だ。「早く電気を届けたい」――。そんな現場の思いを胸に大災害からの早期復旧を果たした。

福島県内には原町、相馬共同、広野、常磐共同など東北電力や東京電力(現JERA)の石炭火力を中心とする大型電源が数多く立ち並び、東日本の安定供給を支えていた。そうした中で起きた巨大津波は、それら全ての電源を一瞬にして喪失させた。

国内の石炭火力でも有数の規模を誇る、南相馬市に立地する原町火力(計200万kW)も例外ではなかった。「タービン翼や軸受け、電気集じん機など損傷はひどかった。主力電源を失った喪失感は言葉にならなかった」。当時を知る関係者は振り返る。周辺エリアは、福島第一原発から30㎞圏内に位置し屋内退避区域に指定されたこともあり、本格的な復旧作業もままならなかった。ただ「2011年夏に、『復旧計画』の目標が定まったことがターニングポイントだった」そうだ。

13年夏までの運転再開―。一つの目標を全社的に共有できたことで、早期復旧に向けて一気に動き出した。そして、当時、原町の現場で陣頭指揮を執っていたのが、現在の東北電力の樋口康二郎社長だ。「早期復旧こそが復興のシンボル」。そんな思いで電力業界、メーカー、ゼネコンなどが一体となって復旧作業に当たった。

幸い、原町から30㎞ほど北にある相馬共同火力とも連携を取ることができた。プラントが兄弟機であるため特殊工具などを貸し借りすることができたからだ。また、復旧作業期間に受け取れなかった石炭燃料をほかの電力会社が引き取ったケースも。困ったときは助け合う。そんな電力会社同士の連携もあった。ピーク時には現場の人員は1日2500人に上ることも。復旧というよりは、丸ごと一つの大型火力電源をゼロからつくり上げるような作業だった。 大同団結で挑んだ作業によって計画よりも半年も早く運転再開にこぎつけた。わずか2年で、200万kWをもとに戻した。東北電力では、この結束を「チーム原町」と呼んでいる。未来にも語り継がれるべきエピソードである。