【東京電力エナジーパートナー】
「再生可能エネルギーが拡大していく中で、いかに電力需要をシフトさせていくかは電力会社が考えなければならない重要なテーマ。手段が限られる中で、蓄熱槽は非常に有効なツールになると期待している」
こう語るのは、東京電力エナジーパートナー(東電EP)カスタマーテクノロジーイノベーション部DRオペレーショングループの小林淳マネージャーだ。 同社は9月、読売新聞とオフサイトPPA(電力購入契約)を締結。グループ会社の東京発電が群馬・茨城県に太陽光発電所(発電容量計1300kW)を建設し、2025年3月以降順次、読売新聞本社ビルと東京北工場(東京都北区)への電力供給を開始する。
その再エネをフル活用するために構築するのが、本社ビルの地下に備えられた2000tの蓄熱槽をデマンドレスポンス(DR)に活用するスキームだ。空調利用が少ない春や秋の日中など再エネが余剰となる時間帯に熱を貯めることで、年間230万kW時を見込む太陽光の自家消費率100%を目指す。これが達成できれば、両施設で消費する電力の13%を太陽光で賄い、938tものCO2削減につながるという。
同スキームは、アズビルが開発した蓄熱制御アプリケーションと、エナジープールジャパンが提供する発電と需要の予測技術やDR運用ノウハウを組み合わせ、なるべく簡易に蓄熱と放熱の最適な運用を可能にすることが大きな特徴となっている。
読売新聞は、14年に現本社ビルが竣工して以来、10年間で30%の省エネを達成した。今回のスキームの導入により、改正省エネ法が志向する「省エネ+非化石転換+需要最適化」を具現化。さらに、30年に13年比CO2排出量46%削減、50年ネット・ゼロを目指す上での足掛かりとしたい考えだ。
小林マネージャーは、省エネ法の定期報告でDRの対応回数の報告が義務付けられたことに強い手ごたえを感じているという。改正前までは、DRの報酬目的、あるいは需給ひっ迫警報の発令時など緊急時であればDRに協力しても良いというスタンスがほとんどだったが、最近ではより積極的なDRへの参加を希望する事業者が増えてきたからだ。より大きな需要をシフトし需給の最適化を図るべく、今後もDRリソースの掘り起こしに注力していく。