【特集2】沿線軸に持続可能な街づくりに注力 顧客目線で魅力あるサービス追求


【東急パワーサプライ】

東急パワーサプライ(TPS)は「東急でんき&ガス」の申し込み者数が67・7万件(2024年9月末時点)に上り、東京エリアの低圧市場シェアで7位につける。電気は非化石証書を用いて実質再生可能エネルギー100%、CO2排出量実質ゼロのものを供給する。東急グループが掲げる沿線を中心とした脱炭素、サステナブル(持続可能)な街づくりというコンセプトに則った事業を進めている。

犬養淳副社長は「東急グループ全体でのカーボンニュートラル(CN)に向けた目標として、30年までに自社(連結)電力需要の50%を再エネに転換するという目標がある。この取り組みの中に、当社があるという位置付けだ。渋谷のビル群や鉄道の脱炭素をどう進めるのか、沿線にお住まいのお客さまには鉄道を積極利用してもらいCO2排出量を抑制するなど、グループ一体でエネルギーに注力している」と事業スタンスを語る。

横浜市と蓄電池で協業 東北地方の応援に生かす

そんなTPSは、ユニークな電力プランを用意する。昨年6月に発表した「ハマでんちプラン」もその一つだ。同社と横浜市、東北電力フロンティアの3者が、横浜市内における再エネの普及を目的に、連携協定を締結。これに基づきTPSは、横浜市内に太陽光パネルを設置する家庭を対象に蓄電池リースサービスを実施。横浜市が、連携協定を締結する東北地方の自治体などに立地する再エネ発電所由来の環境価値を活用した電気をセットで供給する。

プランの利用者には、毎月「ハマとも東北応援ポイント」が付与。東北電力フロンティアが提供するプラットフォーム「東北サポーターズ」で、東北地方の地域のお祭りなどのイベントから応援したいものを選び、贈ることができる。さらにポイントがイベント運営資金などとなり、東北地方の地域活性化を応援できるという仕組みだ。

今後も電力事業の付加価値サービスを展開する方針だ。以前、需要家に商業施設のクーポン券を配布し、真夏に外出してもらい節電を促すDR(デマンドレスポンス)キャンペーンを行った。犬養氏は「お客さまが生活する中で何かワクワクするようなサービスを提供したい。こうした点を追求する事業者でありたい」と意欲を示している。

再エネ普及に向けた3者の連携イメージ

【特集2】冷蔵庫の使用パターンを賢く制御 DR運転で利用者の行動変容へ


【中部電力ミライズ】

中部電力の販売子会社である中部電力ミライズとパナソニックは、家電製品を自動的に制御して電力需給のバランスをとる「デマンドレスポンス(DR)」の実証実験を進め、DRの有用性を確かめた。家庭用エネルギーを賢くマネジメントするニーズが高まる中、実証実験で得られた知見を役立てDR市場の開拓に弾みをつけたい考えだ。

両社が実証実験で注目した家電は、1年間を通じて利用する冷蔵庫。共同でDR機能搭載の冷蔵庫を含めた実験環境を整え、2023年12月から24年9月にかけて実証実験を実施。DR対応冷蔵庫の有効性を多面的に検証した。

具体的には、中部電力ミライズが電力の需給バランスに応じてDRを計画し、パナソニックが構築したスマートフォン向け専用アプリで、利用者にDRの計画を通知する。利用者はアプリでDR運転の予約が可能だ。予約した時間になると、冷蔵庫が自動的に作動し、電力の需要量を減らす「下げDR運転」、または電力需要を増やす「上げDR運転」に入る。DR運転の開始と終了をアラーム音で伝えることも特徴だ。

実証実験の結果、「冷蔵庫は効果的に電気の使う量を調整でき、実効性の高いDRリソースになり得る」(エネルギープラットフォーム構築部の猪飼文洋課長)ことを確認。利用者が冷蔵庫からの通知をきっかけに電力需給バランスを意識して他の家電を操作するなど、家全体の電力を賢く使う取り組みに大きく貢献することも分かった。

実証実験の参加者を対象としたアンケートで冷蔵庫による通知の効果を尋ねたところ、約7割が「他の家電への行動につながった」と回答。さらなる調査で、冷蔵庫が自動制御されることへの不安の声や保存食品への影響がないことが確認された。

会員制で需給調整に貢献 家庭向け新サービス検討へ

カーボンニュートラル(CN)の実現に向けて、季節や天候によって発電量が変動する再生可能エネルギーの活用が進むと、需要側で電力需給を調整するニーズも拡大する見通しだ。同社はこうした動きを見据え、再エネ発電量に合わせた行動を促す会員サービス「NACHARGE(ネイチャージ)」を提供し、約37万人規模の主力事業に育てている。例えば、会員には発電量に応じて電力の利用や節電を促すメールを通知。取り組み実績に応じてポイントを付与し、環境貢献度を実感できるようにする。

同社は、こうした実績や今回の実証試験結果を土台に「新たな家庭向けDRサービスを検討していきたい」と強調。家電メーカーはじめ関係企業と幅広く連携しながら、DR機能の搭載先を冷蔵庫以外に広げる可能性を探ることにも意欲を示した。

家庭用DRの実証実験の仕組み

【特集2まとめ】家庭用エネルギーの新ビジネス 分散型制御で新たな価値創出


家庭で使用する多彩なエネルギー関連機器を賢くマネジメント―。

そうした仕組みを実現する技術やサービスが続々と登場している。

再エネの導入拡大で、電力需給を調整する機会が増えているからだ。

エネ各社は家電や蓄電池、EVなどを高度に制御する展開に注力。

政府も生活者の電力管理意識を高めようと支援策に力を入れている。

成長が見込まれる「エネマネ」市場を巡るビジネスの最前線に迫った。

【レポート】 電力マネジメントの時代が到来 官民一体で需要家意識の醸成へ

【大阪ガス】エネシステム確立に功績 実験集合住宅30年の挑戦

【TGオクトパスエナジー】英企業の知見を存分に活用 3年で30万件の顧客獲得

【東急パワーサプライ】沿線軸に持続可能な街づくりに注力 顧客目線で魅力あるサービス追求

【静岡ガス】太陽光発電の余剰電力を活用 地域通貨で経済の好循環を創出

【中部電力ミライズ】冷蔵庫の使用パターンを賢く制御 DR運転で利用者の行動変容へ

【日本ガス協会】2030年300万台突破が目標 エネファーム普及拡大を加速

【ニチガス】省エネ機器販売で一段と成長 スマートリモコンで最適運用

【リンナイ】「バブル」で快適な入浴実現 新発想の給湯器で存在感を発揮

【パーパス】少ない湯量で給湯能力を確保 独自の特許技術でニーズをつかむ

【特集2】2030年300万台突破が目標 エネファーム普及拡大を加速


【日本ガス協会】

高効率家庭用給湯器で省エネを推進してきた日本ガス協会。エネファームの新たな活用に向け、ガス事業者を支援する構えだ。

エネファームは2023年11月、累計販売台数50万台を突破した。こうした中、日本ガス協会は現在、「30年に300万台」を目指し、さらなる普及拡大を推進している。

着実に導入数を増やしてきたのは「エネファームパートナーズ」の活躍が大きい。エネファームパートナーズは住宅業界、エネファーム製造業界、エネルギー業界の162団体・事業者が連携した普及促進協議体。象徴的な活動の一つがパンフレット『エネファームオーナーズボイス』の作成だ。主にガス事業者がエンドユーザーやサブユーザー向けに導入を訴求する際に使用してきた。機器の魅力を、実際にエネファームを導入したエンドユーザーのリアルな声で伝えているのが特徴だ。

第7次エネルギー基本計画の原案には、「家庭部門のエネルギー消費の約3割を占める給湯器の省エネや非化石転換の加速、DRに必要な機能の具備の促進」などが記載された。高効率家庭用給湯器の重要性が明示されており、導入支援についても国が積極的に進めることが示された。

エネファームは機能面でも発展も遂げてきた。停電時の発電継続などのレジリエンス性向上、家電製品などのモノをインターネットでつなぐ技術「IoT」、天気連動などの機能が備わっているものも多い。また、狭いスペースにも楽に設置できるよう、開発が進められている。さらに、国の補助金制度活用により、ユーザーは魅力的な価格で購入できるようになった。これらが奏功し、ここ数年は年間4万台程度の導入ペースを維持している。

新たな価値追加に期待 VPPの実証実験を推進

設置台数の増加とともに期待されているのが、調整力としての役割だ。ガス供給事業者が自治体などと連携し、VPP(仮想発電所)実証実験を進めている。

日本ガス協会普及部・業務推進グループの菅沼智浩マネジャーは「国の導入目標である『30年に300万台』の達成に向け、全力を注いでいく。高効率給湯器の普及が進み、その役割が増えていく中で、VPP実証などの進展を把握しながら、今後もガス事業者の活動を支援するための市場整備、さまざまな制度設計などに取り組んでいきたい」と語る。エネファームのさらなる価値向上から目が離せない。

パンフレットの表紙

【特集2】エネシステム確立に功績 実験集合住宅30年の挑戦


【大阪ガス】

大阪ガスの実験集合住宅「NEXT 21」が立ち上げから30周年を迎えた。同社社員が実際に居住し、数々の成果を上げてきた軌跡を振り返る。

大阪ガス社員自らが被験者となり、環境、エネルギー、暮らしに関するさまざまな実験に取り組む実験集合住宅「NEXT21」が居住実験開始から30周年を迎えた。同プロジェクトの開始は1990年2月。内田祥哉東京大学名誉教授を委員長に据えた計画委員会を立ち上げ、議論・検討が行われた。エナジーソリューション事業部計画部環境・政策チームの志波徹氏は「委員会では、『建物はすぐ陳腐化する。自ら変化できるものを目指すべき』といった内容から、『外観は地域との調和が必要であり周辺住民の皆さんに了解を得ないといけない』、『植栽は周辺公園と同じ植物で渡り鳥が来るようなものを』とエネルギー以外にも議論は多岐に及んだ」と当時の様子を語る。

議論を経て、建築には「スケルトン・インフィル方式」を採用した。同方式は建物の骨組みを頑丈につくり、内部を柔軟に改修可能にするもので、用途や住戸間の面積の変更が容易。かつ長寿命で持続可能な建物運用を実現させる。また、共用廊下や配管スペースは再設計でき技術革新に対応できる構造だ。この柔軟な仕組みによって、環境、エネルギー、暮らし、それぞれのテーマで、時代の先を行く実験が可能な舞台が完成した。

時代に即した設備選定 エネファームで電力融通

NEXT21ではこれまで五つのフェーズで実験が行われた。エネルギーの側面で時代を大別すると、第1~2フェーズ(93年~2007年)の初期はセントラル方式、第3フェーズ以降(07年〜現在)は戸別分散方式の設備を採用している。初期にセントラル方式を採用したのは、①住戸周辺に機器を設置しないため間取りの自由度が高く意匠性に優れている、②平準化できるので1戸当たりの設備容量を小さくできる―などの利点があるためだ。将来的に設備の効率の改善が進めば、近未来住宅のエネルギーシステムになり得ると想定した。第1フェーズではリン酸形燃料電池を設置。稼働中は系統からの電気を使用せず、全てガスで賄うオールガス住宅を目指した。

電力融通に用いた初期型「エネファームtypS」※現在本機種は販売されていません

【特集2】英企業の知見を存分に活用 3年で30万件の顧客獲得


【TGオクトパスエナジー】

東京ガスと英エネルギーテック企業のオクトパスエナジー社が合弁で立ち上げた日本国内の電力小売企業、TGオクトパスエナジー。2022年1月から家庭用小売りを本格化し、わずか3年で30万件を突破した。最大の特徴は「解約率の低さと顧客満足度の高さ」と同社の中村肇社長は断言する。

その秘策は同社独自の顧客管理システム「クラーケン」だ。一般的なシステムは、請求書・振り込み口座管理、電話・メール対応の履歴など、各業務に応じたシステムが存在する。

クラーケンでは、一つのプラットフォームであらゆる機能を満たす。ユーザーから「口座の変更」や「アンペア数の変更」など、どのような問い合わせも、原則1人の人員で対応できる。たらい回しにされることがないことから高い顧客満足度につながっている。英国では、このプラットフォームを同業他社に外販し、収益基盤にしている。

蓄電池を遠隔で充放電 DRの連動プラン創出へ

同社では多様なメニューを展開中だ。実質再生可能エネルギー100%の電気を供給する「グリーンオクトパス」、オール電化住宅向けの「オール電化オクトパス」、燃料調整費の増減によって変動することがない固定価格をセールスポイントにした「シンプルオクトパス」など多様なプランを用意する。

家庭用の再エネ導入を支援する「ソーラー初期ゼロプラン」も人気が高い。同社が太陽光パネルのオーナーとなり、顧客の屋根を借りてパネルを設置。代わりにユーザーの初期負担はゼロだ。加えて発電中の時間帯による電気料金は1kW時当たり24円と低料金に設定している。

同社では今後、「蓄電池を使ったDRメニューを作りたい」(中村社長)という。同社がユーザー側の蓄電池の充放電を遠隔で制御してDRに参画し、通常よりも電気料金を割り引く。DRと小売りを連動させたプランだ。クラーケンというプラットフォームの存在が、多様なビジネスやプランの創出を可能にしていく。

タコを模したロゴキャラクター

【特集2】省エネ機器販売で一段と成長 スマートリモコンで最適運用


ハイブリッド給湯器などの家庭用機器が強みのニチガス。プラットフォーム事業の拡大も狙う同社の戦略に迫った。

【インタビュー】土屋友紀・日本瓦斯代表取締役専務執行役員営業本部本部長

―カーボンニュートラル実現の要請が強まる中、家庭用の取り組みはどうですか。

土屋 当社の特徴は、省エネ性能に優れたハイブリッド給湯器を日本で一番積極的に販売している点です。太陽光発電パネルや、最近では家庭用の蓄電池の販売も進めています。価格だけでなく、必要な情報と選択肢をお客さまに提供し、電気のお客さま数も6年間で37万件(2024年1月現在)に達しました。

 当社はガスの供給事業者であり、電気の供給事業者でもあります。AIが需要を精緻に予測・制御することで、家庭のエネルギー利用を最適化するDR(デマンドレスポンス)運用において、家庭用省エネ機器を販売した実績は大きな強みになると考えています。

 家庭用のエネルギー使用量を見える化し、お客さまが機器を遠隔で制御できる「スマートリモコン」を開発中です。家庭用の機器をネットワークにつなぐことで、利便性を高めながらエネルギーの最適利用を目指しています。例えば、ハイブリッド給湯器はガスと電気の両方でお湯を作れますので、電力需給がひっ迫した時はガスでお湯を作り、再エネの余剰電力が生じたときはヒートポンプでお湯を沸かすという運用も可能です。これらは家庭用分野におけるエネルギーの最適利用を実現するプラットフォームとして多くの事業者にも展開し、社会課題解決にも貢献したい。

―昨年、LPガスのお客さま数が100万件を突破しました。こうした取り組みを通じて物流改革を後押しされていますね。

土屋 2010年頃からデポステーション(24時間無人で稼働可能なLPガスの容器置き場)を設け、配送に関わるコストを削減し、ガス料金の低価格化を進めました。21年には世界最大規模のLPガスハブ充填基地「夢の絆」を稼働させました。LPガス物流のプラットフォームです。利用者が増えれば増えるほど、配送に関わるコストとCO2を業界全体で減らすことができ、消費者に還元できます。

―顧客拡大に向けた今後の目標は。

土屋 全社で掲げる目標は電気、ガスの総契約数200万件で、今期中の達成を見込んでいます。すでにLPガス、電気、都市ガスのエネルギーの垣根はなくなっています。当社は同業者および他のエネルギー事業とのアライアンスや水平分業を進め、業界全体で効率化の実績を積み上げています。また、最前線の営業現場を尊重し、お客さまにどのようなサービスが提供できるかという考え方で取り組み、当社のDNAである「同じ成功は繰り返さない」の精神で変わり続けていきます。

つちや・とものり 1993年ニチガス入社。同社常務執行役員や東彩ガス代表取締役社長などを経て、23年4月ニチガス専務執行役員。24年6月から現職。

【特集2】電力マネジメントの時代が到来 官民一体で需要家意識の醸成へ


次期エネルギー基本計画の原案で電力需給調整の重要性が明示された。エネ各社は、調整力を創出するサービスや技術の開発を加速させている。

家電や蓄電池からヒートポンプ給湯機まで、暮らしを支える多様なエネルギー資源を高度に管理して電力供給の安定化や脱炭素化につなげる―。こうしたエネルギーマネジメント(エネマネ)を官民で後押しする機運が高まっている。政府が策定する次期エネルギー基本計画の原案に電力使用量を制御するデマンドレスポンス(DR)の「更なる普及を図る」と明示されたほか、エネ各社がDRを巡る技術やサービスの開発で知恵を絞る動きが活発化している。

低圧資源を大きな価値に 市場拡大へ相次ぐ布石

「家庭で使う比較的小規模な低圧リソース(需要家設備)を集約して大きな価値にしていきたい」。資源エネルギー庁新エネルギーシステム課の担当者はこう強調する。

エネ庁の視線の先には、再生可能エネルギーの導入量が一段と拡大する動きがある。再エネによる発電量は季節や天候によって大きく変動。電力需要が多い時期に需給がひっ迫する一方、需要が少ない時期には供給過多になって電力が余ってしまう。

こうした課題に対応する仕組みが、需要家側が賢く使用量を変化させて電力需給バランスを調整するDRだ。需要量を減らす「下げDR」と需要創出を行う「上げDR」という二つの行動を促す流れが強まりつつある。

DRを支えるのが、電力会社と需要家の間に入ってリソースを束ねて電力需給を調整する事業者「アグリゲーター」だ。電力自由化に伴って生まれたもので、2022年4月から一定の条件を満たすアグリゲーターが「特定卸供給事業者」として国への届け出を行うことが義務化された。1月時点で、登録事業者数は約100社に達している。

住宅に設置した家庭用蓄電池のイメージ 【提供】東京ガス

固定価格買い取り(FIT)制度の期限が切れる「卒FIT」が増える中、需要家の選択肢が拡大する傾向にある。一つが、電力会社と再契約して売電する取り組み。さらに蓄電池を導入し、太陽光発電設備でつくった電力を全て自家消費する動きも広がりつつある。また、分散型電源をIoTで束ねて統合制御する「VPP(仮想発電所)」への参加を狙う需要家も増えると予想される。

卒FITの住宅用太陽光発電の認定件数と容量は、25年に約200万件、860万kWに到達する見込み。新築戸建て住宅への太陽光設置率は約3割に達したが、家庭に太陽光発電を広げる取り組みは途上にある。このためエネ庁は一層の導入拡大を目指すとともに、小売電気事業者やアグリゲーターの商機拡大につなげたい構えだ。

26年度から需給調整市場に家庭用蓄電池などの低圧リソースが本格的に活用できるようになると、DRやVPPに象徴されるエネマネ市場を育成する動きが加速しそうだ。

【特集2】少ない湯量で給湯能力を確保 独自の特許技術でニーズをつかむ


【パーパス】

特許技術で省エネや節水ニーズ対応のエコジョーズが注目されている。パーパスは戦略製品と位置づけ、今後の拡販を狙っているところだ。

パーパスが製造販売する「AXiSシリーズ」のエコジョーズが節水や省エネニーズを追い風に注目されている。特に同社独自の高温水分配方式の特許技術を搭載した「FLash」は、少湯量でも一定の給湯能力を発揮する。同社は戦略製品として拡販を狙う。

従来のエコジョーズでは瞬時にお湯が出なかったり、一度に暖房や追いだきすると給湯能力が低下する課題があった。しかしFLashは最小給湯能力0.1号、最低作動流量毎分1.9ℓの能力を持つ。同社の制御技術で80℃程度の温水をあらかじめ機器内に循環させることで、所定の給湯能力を確保する。

「昨今、省エネだけでなく節水ニーズによって節水シャワーヘッドや節水カランの需要が高まり、非常に少ない湯量を使うケースが増えている。ただ、出湯流量が少なくなるとガス給湯器の安全機能が作動し、火が途中で消えてしまうことがあった。結果的に給湯機能を発揮できないケースがあった」と鈴木孝之営業企画部部長は解説する。

冬場の捨て水の課題を解決 塗装技術で機器の耐久性を向上

例えば冬のキッチン。水栓を開栓した時、すぐにお湯が出ないことがあるが、FLashなら製品本体出口付近ですぐにお湯が出るので、「捨て水」が出ない。お風呂場でシャワーヘッドのモードを切り替えても、急に冷たくなることがない。そんなFLashには「カンタンヘルスチェック」という機能もある。身長、体重、性別、年齢などを登録しておけば、浴槽につかるだけで簡単に体脂肪率や消費カロリーなどの健康管理につながる値を浴室リモコンで計算できる。浴槽内の圧力変化を検出し、同社独自のアルゴリズムで推定値をはじき出す。

ハード面の技術にも特徴がある。静岡県富士宮市の自社工場で生産する国内出荷の全てのエコジョーズに対して「耐重塩害試験基準」(日本冷凍空調工業会規格)をクリアした塗装が施されている。ウレタン樹脂の焼き付けや電着塗装など、自社生産ラインで塗装し機器の耐久性を高めている。節水ニーズ、健康志向などさまざまな課題を解決することから、「工務店などのサブユーザーから問い合わせが増えている」(鈴木部長)そうだ。

FLashは失火させずに給湯能力を発揮する

【特集2】ガスは日本の重要な熱源 CNと安定供給へ業界挙げ努力


燃料転換やe―メタンの技術開発など、脱炭素に向けた動きを活発化させる都市ガス業界。日本ガス協会の内田高史会長は、時間軸とコストを考慮する重要性を強調する。

【インタビュー】内田高史/日本ガス協会会長

―2020年に、都市ガス業界の脱炭素社会への貢献に向けた「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を策定しました。進捗はいかがですか。

内田 経済産業省の省エネ補助金や環境省のSHIFT(工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進)事業など、政策的な支援を受け、20~23年の4年間で業務用・工業用分野において約2000件の石炭などから天然ガスへの燃料転換が進みました。これにより増えた供給量は年間10億㎥。産業用都市ガス販売量は年間220億㎥ですから、その5%に相当する大きなボリュームです。また、CO2削減が難しいハード・トゥ・アベイト(Hard to Abate)産業の燃転・構造転換に対する補助金も今年度、新たに措置されました。これにより、天然ガスへの燃料転換がさらに進むことを期待しています。

―カーボン・オフセット都市ガスの取り扱い状況は。

内田 カーボンクレジットでオフセットするカーボン・オフセット都市ガスのニーズの高まりを受け、需要は伸びています。現在、35事業者が取り扱っており、供給先は384件に上ります。e―メタン(合成メタン)の社会実装までのトランジション期においては、ガスのカーボンニュートラル(CN)化の一つの手段と位置付けて導入を促進しています。

―将来の脱炭素化には、中小事業者の供給エリアでも燃転が欠かせません。

内田 大手の供給エリアで燃転需要が多いことは間違いありませんが、中小事業者のエリア近傍でも大きな需要が存在していますし、中には事業者が大規模投資しなければ進められないケースもあります。そうした場合には、大手と中小が合弁会社を設立しガスを供給するなど、共同で投資を行っています。

 他の化石燃料から天然ガスシフトすることは延命手段だという人がいますが、そうではありません。まず、天然ガス転換でCO2を削減しさらに将来、e―メタンに転換していくのですから、ネットゼロへの動きはむしろ加速していると言えますし、業界を挙げて燃転を進めていくことは国のCN戦略の流れに沿うものです。

設備の効率最大化 地域脱炭素を後押し

―燃転に加え、高度利用のためのコージェネや燃料電池の導入にも注力しています。

内田 意外と知られていないことですが、コージェネを発電設備として見ると、導入量は850万kWに達しています。そのうち、88万kWがこの4年間で導入されたものです。また、家庭用のエネファームは50万台以上普及していて、この4年間では17万台販売されました。コージェネ、エネファームとも、今後も導入量は増えていくものと見ています。

 大切なことは、設備が個別に導入されていることに加え、スマートエネルギーネットワークとしてエネルギーを面的に活用していくためのシステムの中にもコージェネや燃料電池が組み込まれているということです。複合化された用途の需要を組み合わせることで、設備の効率を最大化することができ、徹底した省エネにつなげられるため地域のCN化の取り組みを後押しする役割を担っています。

―地域によって脱炭素化への道筋は異なります。協会としてどうバックアップしますか。

内田 地方事業者は、地域のCN実現に向け、それぞれの地域特性に合わせた取り組みを進めています。脱炭素先行地域の共同提案者に名を連ねるなど、地域のCNに貢献しようと、どの事業者も真剣です。当協会では、さまざまな取り組み事例を取りまとめて情報発信することに加え、バイオガス・J―クレジットなどの勉強会を開催することで、各事業者が地域の事情に即した手段を地方行政に提案していく流れを作ろうとしているところです。

日本ガス協会が主催する地方事業者向け勉強会の様子

【特集2】グループの総合力で低炭素化推進 病院のレジリエンスにも貢献<


【西部ガス】

将来の脱炭素社会を見据え、ガスコージェネレーションシステムを導入し、低炭素化とレジリエンスの両立を実現した先駆的な病院がある。

福岡県大牟田市と隣接する熊本県荒尾市にある「荒尾市立有明医療センター」は、2023年10月、敷地内に新築移転した。竣工から50年以上が経過し、老朽化や耐震補強の必要性などの課題が顕在化したためだ。

新病院は荒尾市唯一の急性期病院で、同市のほか周辺市町村の中核病院として、24時間・365日救急医療に対応しているほか、災害時にも災害拠点病院として継続した診療が可能となっている。

ここでは東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が、系統電力の停電時も発電可能なヤンマーエネルギーシステム製の定格出力400kWガスエンジンコージェネをエネルギーサービスで導入し、メンテナンス・省エネルギー運用を実施している。

燃料の都市ガスを供給するのは、西部ガスグループ傘下の大牟田ガスだ。同センターは同社の供給区域外に立地しており、導管網と接続されていなかった。

そこで、同じく西部ガスグループの九州ガス圧送が同社大牟田工場から西部ガス熊本までの間に敷設していた総延長52 kmの中圧導管を利用した。その中圧導管から分岐する1700mの導管を大牟田ガスが新たに敷設して、同センターにガス供給している。導管はポリエチレン製で耐震性が高く、停電時にも電気と熱供給が可能だ。

導管敷設で供給エリア拡大 学校給食センターも下支え

新たに敷設した導管沿いには、天然ガスへの燃料転換を提案できる大規模需要家が複数あり、天然ガス普及に力を入れている。大牟田ガスでは、この導管沿いに22年に竣工した荒尾市・長洲町学校給食センターにも既にガス供給を開始している。

大牟田市や隣接する荒尾市は、かつて炭鉱で栄えた地域で、現在でも石炭を燃料に使っている企業もある。

一方、50年ネットゼロの流れを受け、低・脱炭素エネルギーを求める企業も増えている。そういった新規大口需要家に天然ガスを供給するため、この導管以外に総延長千m級の導管を新たに2本敷設したという。

大牟田ガスの猿渡孝徳部長は「大牟田市は人口が全盛期の半分近くまで減少している。そのため、家庭用のお客さま数とガス販売量も減少傾向にある。そこでガス販売量を伸ばすため、供給区域を広げながら、法人のお客さまの獲得に注力している」と語る。

同社の中嶋覚取締役は「今後も西部ガスグループの一員としてその総合力を活用しながら、TGESとも連携・協業し、天然ガスの普及を推進することで、地域の低・脱炭素化に大いに貢献していきたい」と意気込む。

定格出力400kWのガスエンジンコージェネ

【特集2】バイオ由来CO2でe―メタン製造 使用電力はLNG冷熱活用し発電


【東邦ガス】

50年のCN実現を目指し、都市ガス業界が力を入れるメタネーション。石炭や石油からの燃料転換やエネルギーの高度利用といった足元の取り組みの先にある「ガス自体の脱炭素化」に向けた革新技術の一つだ。

日本ガス協会は、メタネーションで製造したe―メタンを30年にガス販売量の1%、50年に同90%という高い目標を掲げている。

東邦ガスは3月31日、愛知県知多市と連携し、バイオガス由来のCO2を活用したe―メタン製造実証を開始した。製造方法は、すでに技術が確立しているサバティエ方式。水を電気分解して水素をつくり、CO2と反応(サバティエ反応)させてe―メタンを生成する。

実証が行われているのは、知多市南部浄化センターと隣接する知多LNG共同基地だ。浄化センターでは下水汚泥処理でメタンとCO2を主成分とするバイオガスが発生。東邦ガスは17年から、このバイオガスを精製して受け入れ、都市ガスの原料として利用している。

バイオガスの精製過程ではCO2を多く含むガス(オフガス)が発生するが、今回のe―メタン製造実証ではこのオフガスに含まれるCO2を原料として活用する。CO2を地域資源として活用する環境性の高い取り組みといえよう。

e―メタン製造に必要な水素の製造などにおいて電力を消費するが、今回の実証ではLNGの冷熱を利用した冷熱発電による電力を活用することで、実証試験全体での温室効果ガス(GHG)排出量を抑えられているという。

SHK制度への適用目指す 国内初の都市ガス原料に

GHG排出量の管理も徹底している。リアルタイムでのガス製造量などの遠隔監視に加え、排出量や炭素強度(CI)値を見える化するシステムをIHIと構築し、管理している。

また実証で製造したe―メタンの環境価値について、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)のSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)で、需要家によるe―メタン利用時のCO2排出をゼロと扱うことも目指している。

東邦ガス技術研究所カーボンニュートラルグループの萩野卓朗課長は「環境価値などを適切に評価する取り組みにより、e―メタンの普及に向けて制度面でも貢献できたらいい」と意気込む。

今回の実証で製造したe―メタンは、国内で初めて都市ガス原料として利用される。自動車部品などを手掛けるアイシンとは、e―メタンを原料とする都市ガス供給について合意した。

東邦ガスは将来的なe―メタンの本格導入に向けて、実証で得られた成果や都市ガスとしての利用を通じて、製造設備の大規模化や低コスト化といった技術課題の解決につなげる考えだ。また普及拡大に必要な仕組みづくりにも貢献していくという。

都市ガスの未来を創る取り組みから目が離せない。

知多e―メタン製造実証施設の開所式

【特集2】LPガスインフラを業界でシェア 先端技術を駆使し環境対策を先導


ガス事業を高度に効率化するプラットフォームの拡大を狙うニチガス。サプライチェーン全体のCO2排出量削減に貢献することが狙いだ。

ニチガス

LPガスの充填から配送に至る一連のプロセスを先端技術で効率化する――。そんな仕組みを提供するプラットフォーム事業の拡大を目指しているのが、ガス事業をはじめとした総合エネルギー企業大手の日本瓦斯(ニチガス)だ。カーボンニュートラルの実現という社会要請を踏まえた取り組みで、2030年を目標に業界全体のCO2排出量を20年比で半減することを視野に入れている。

LP業界の関東圏では、約5000社に上る事業者が入り乱れてオペレーションを行う結果、非効率となっている。そこで22年11月から、「LPG託送」と呼ぶ同業他社向けサービスの提供を始めた。LPG託送の拠点となるのが、世界最大規模のLPガスハブ充填基地「夢の絆・川崎」(川崎市川崎区)。約40万の利用者獲得を目標にLPG託送市場の開拓と業界全体のCO2排出量削減に挑む。

基地に実装したのが、デジタルツイン技術。ガスの検針から充填に至る一連の工程で集めた各種データを仮想空間上のAIで分析・処理し、物流業務の効率化と最適化を追求している。客先のガスメーターには、IoT機器「スペース蛍」を設置し、1時間単位できめ細かく自動的にメーターの情報を取得できる。

企業活動に伴うCO2排出量は、自社から直接排出した「スコープ1」、間接的に出る「スコープ2」、サプライチェーンを通じて排出される「スコープ3」に分類される。

エネルギー利用の最適化へ スマートリモコン導入を視野

同社はLPG託送をスコープ1、3のCO2排出量削減につなげるなど、各段階の脱炭素化に注力。さらに顧客ごとに適したCO2排出量削減策も提案する。特に、ガスと電気の両方でお湯を沸かすハイブリッド給湯器は好調で、数量が約2年間で7倍に達した。同給湯器に電気自動車(EV)用充電器や太陽光発電などを組み合わせたセット販売にも力を入れる方針で、蓄電池や各機器を遠隔制御して家庭でのエネルギー利用を最適化するスマートリモコンの導入も計画中だ。吉田恵一・専務執行役員は「50年の『ネットゼロ』実現に向けて、各スコープの取り組みに段階的に力を入れていきたい」と意欲を示した。

全自動でオペレーションする充填プラットフォーム

【特集2】三島食品の工場燃料をクリーン化 業務の省力化も強力にサポート


【広島ガス】

赤しそを使ったふりかけ「ゆかり」で全国的に知られる三島食品(広島市中区)の観音工場で、ボイラー燃料の灯油を都市ガスに転換する取り組みが行われた。支援したのは、広島ガスだ。脱炭素対策を強化する機運が高まる中で同社は、広島県内に立地する幅広い業種の企業に密着して燃料転換を促し、脱炭素社会づくりの一翼を担いたい考えだ。

今回の燃転の舞台となったのは、同市西区に立地する敷地面積2138㎡の観音工場。三島食品が展開する国内3工場の一つで、約30品目を生産している。手掛ける商品は調味みそなどのペースト商品や赤しその色と香りを生かした希釈タイプの清涼飲料水「赤しそドリンク ゆかり」などと多彩。年間生産量は、約18万ケースだ。

同工場では、生産量の増加やボイラーの老朽化と能力の不足といった問題を抱えていた。そうした中で同社は、「広島市省エネ機器導入支援事業補助金」を活用。広島ガスやボイラーメーカーと連携しながら、脱炭素化につながる燃料転換に踏み切った。すでに都市ガスは、本社敷地内にある広島工場と関東工場(埼玉県坂戸市)で使用しており、灯油を使用する生産拠点は観音工場のみだった。

灯油の場合、防火に配慮しながらタンクに保管する必要があったほか、ローリー車で週2回受け入れる手間もかかっており、運用しやすい都市ガスへの切り替えが望まれていた。

成長余地が大きいガス市場 中長期の視野で拡販に力

三島食品が注目した燃転のメリットの一つが、環境負荷の低減効果。転換前にボイラーから排出していたCO2の約2割を削減できることに加えて、排出ガスをクリーンにできる利点も得られるようになった。さらに省力化する効果も得られ、灯油量の管理と受け入れ時の立ち合いが不要になったという。

同社は、全ての事業活動で環境変化に対応した活動を展開し環境保護に貢献すると宣言している。川中有弘・観音工場工場長兼広島工場副工場長はこうした方針に沿って、「ボイラーと加熱設備から排熱を回収することで燃料消費量を低減し、さらなるCO2低減に挑みたい」と強調。将来的には、空調設備などボイラー以外で都市ガスを活用する方策も探りたい構えだ。

広島ガスグループは4月、取り巻く事業環境の変化を踏まえ、24年度から3カ年の中期経営計画を策定。「都市ガス・LPG事業の深化」を柱の一つと位置付け、石油や石炭などからの燃転を中心にガスの拡販に取り組む方針を明示した。さらに同社と顧客にもたらす30年時点のCO2排出削減効果について、年間30万tとすることも目指している。

広島ガスエネルギー事業部産業用エネルギー営業部技術グループの服部大資係長は、「燃料を脱炭素化したい地場企業が多く潜在している。そうした企業がメリットを実感できる燃料転換を提案し、その事例を広げたい」と、市場開拓に意欲を示している。

三島食品の観音工場

【特集2】北陸で広がるカーボンオフセットガス 工業用の普及に向けて全力を注ぐ


強みを持ち寄って付加価値の高い事業に弾みをつけるAOIと岩谷。主力分野におけるガスユーザーからの脱炭素化ニーズに応えていく。

AOIエネルギーソリューション/岩谷産業

北陸・福井エリアを拠点に、自動車販売、ガソリンスタンドや自動社学校の運営など、自動車関連の総合商社として事業を手掛けるAOIグループ。

同じグループには、エネルギー関連ビジネスを手掛けるAOIエネルギーソリューションがあり、ガソリンや灯油などの石油製品やLPガス販売に加えて、電気の代理店業務や太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーなどのエネルギー事業に総合的に取り組んでいる。

2020年12月には、福井県内の企業としては初めて、グループで使用する電力を100%再エネ化する「再エネ100宣言」を出すなど、エネルギー分野の環境対策を積極的に打ち出している。

そうした中、AOIエネルギーソリューションが、LPガスの脱炭素化に本格的に着手した。今秋、同社は岩谷産業とともにカーボンオフセットLPガスの普及に向けた共同宣言を行った。岩谷産業による全国のLPガス販売ネットワーク「マルヰ会」の一員でもある同社が、年間に約750tのオフセットガスを岩谷から調達し、約2250tのCO2を削減する。

「近年、とりわけ工業用のお客さまからの脱炭素のニーズが高まっている。その要望に応えていく方針で、繊維工場や食品加工工場など5~6社の製造工場へオフセットガスの供給を開始する予定」(エネルギーサポート部)。いずれも、既存のLPガスユーザーへのオフセット化が中心だという。

重油ユーザーも多数存在 燃転を提案しオフセット化目指す

重油ボイラーからLPガスへの燃料転換によって環境対策を進めよう検討しているユーザーも多々あり、燃転に伴うオフセットガス化のニーズも高いと考えているそうだ。

ただ、同社と岩谷が扱うクレジットで生み出される環境価値はあくまでもボランタリーなもので、各企業の自主的な取り組みに過ぎない。そのため、「今後は(岩谷が手掛ける)『Iwatani J-クレジット』の活用を視野に入れている。お客さまがしっかりと公的な環境価値を享受できるようなガスを販売していきたい」(同)考えだ。

カーボンオフセットガスの普及共同宣言を行った